ウクライナ情勢が気になる

 そろそろ五十嵐顕全集の私の作業分担も終わりに近づいたので、そろそろブログに復帰しようと思っている。大分間があいたので、ペースを取り戻すには時間がかかるだろうが、少しずつ書いていきたい。
 この間、ずっと考えていたのは、やはりウクライナ情勢である。ひとつは、この戦争の終わり方、そして、もうひとつはトランプという人物についてである。漠然としたものになるが、トランプは、ロシアの秘密のエージェントであり、アメリカを弱体化させる任務を負っているのではないか、と思いたくなることが正直ある。アメリカ政府高官の少なからぬ部分がロシア寄りの人物であるといわれており、プーチンに対して厳しい制裁を課すなどといっても、それを一度も実行したことがない。要するにポーズだけなのだ。そして、ウクライナに対しては、実際上の抑圧政策を実行している。援助をしているというが、それは多くがバイデン時代に決まっていたことを部分的に実行しているに過ぎない。

 大統領として行っている最大のことは関税だ。最近びっくりしたのは、アメリカ人の少なくないひとたちが、関税は輸出国が払うものだと思っていたらしいというニュースだった。実際にトランプは、そういう発言を過去にしていたという。関税を相手国がはらってくれるのならば、確かに国内の反発はほとんどないに違いない。しかし、実際には、常識のある人ならば誰でも知っているように、アメリカが輸入品にかける関税は、アメリカの輸入業者が払うのである。そしてそれはごく自然に物価に反映される。トランプがそのことを知らなかったとしたら、驚くべき無知であるし、もし知っていて国民に虚偽を信じさせようとしたというのならば、アメリカの指導者の資格が完全に欠如しているといわざるをえない。先進国にとって、関税はないのがベストであり、それは実際に行われている事態なのである。競争力のない国が自国の産業を守るために、輸入を制限して、自国産業が発展する時間稼ぎをするのが輸入関税である。時間稼ぎを利用して、産業界が努力すれば、関税の目的が達成されるわけだが、保護をいいことに革新の努力を怠ればずっと後進国のままである。トランプのやり方をみていると、自国産業界に努力を促すような政策は、あまり見られない。結局、アメリカの産業はどんどん衰退していく可能性が高いのである。まさにプーチンの思うつぼではないか。

 さてウクライナ戦争の終わり方である。この戦争が始まって比較的すぐに、ウクライナのとるべき戦術は徹底的に兵站を叩くことであると書いたことがある。ウクライナは昨年あたりからそれをやりだした。もちろん、やっと気付いたわけではない。それまでは、武器援助国が、ロシア領内を攻撃することを禁じるという、考えられないような愚かなことをウクライナに押しつけていたからできなかったのである。それでウクライナは、自国で武器を生産することに注力し、自国兵器でロシア領内を攻撃できるようにした。その成果が昨年あたりから顕著に現われ始めたのである。現在、ウクライナは徹底した兵站機能の破壊を行っている。エネルギー(石油、ガスの精製・備蓄・運搬)、軍事工場、防空システム等々を計画的に破壊している。
 要は、ウクライナは攻めてきたロシア軍と戦闘をまじえて打ち負かす必要は、必ずしもないのである。徹底的に兵站を潰して、補給ができなくなれば、当然占領を維持することはできないわけだから、撤退せざるをえないのである。戦闘そのものも最小限にすれば、人的損害も減らすことができる。ウクライナはやっと、自国の手段をつかって、適切な戦術をとることができるようになった。だから、ロシアは今後少しずつであるが、撤退せざるをえない状況に追い込まれるはずである。それ以外のこの戦争の終わり方はない。

 そして、最終的に望ましいことは、プーチン政権が倒れるだけではなく、ロシア連邦が解体し、解体したロシア共和国は、かつてのソ連の後継国家ではないということで、国連の常任理事国から追放されることであろう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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