学校制度論の領域では、初等教育と高等教育では、原則的な分岐に関しては、今のところ決着がついている。初等教育は、単一の制度で、高等教育は専門的な領域で分化するというように。しかし、中等教育では、この問題は国民教育制度が成立して以降、ずっと問題として論争し続けられてきた。そして、おそらくPISAの影響が大きいと思われるが、先進国で新たな論争や制度改革が起きている。
簡単に大雑把な整理をしておくと、教育制度はまず大学がつくられ、大学に入るための予備門が形成される。これが中等教育と高等教育である。大体において、社会の管理層になるひとたちが学ぶ場であった。それに対して、一般庶民にも教育の必要が生じると、簡単な読み書きから始まり、社会の発展の程度に従って、多少専門的なことも学ぶ学校が成立する。これが初等教育である。つまり、成立の契機はまったく異なる。
19世紀の末頃に、先進国で義務教育制度が成立すると、予備門としての初等教育の年齢段階の学校と、純粋な初等学校(小学校)との統一を求める運動が起き、第二次大戦前後には、ほぼ小学校段階は統一的な制度になる。ところが、中等教育をどのように編成するかは、国によって異なる歩みを示した。従来の初等教育の延長と、中等教育を別々の制度として温存するタイプと中等教育も単一に編成するタイプに分かれる。同一の国のなかに、ふたつのタイプが同居する国もあった。