今回は、第5章の「増加する外国人児童生徒等への教育の在り方について」を扱う。このようなテーマをひとつの章として扱ったことについては、これまでにない積極的な姿勢を感じる。しかし、残念ながら、この問題を扱うには、日本政府の姿勢になじまない部分があり、委員たちは苦労したに違いない。早々に矛盾した記述に出会う。
「また,日本語指導が必要な外国人児童生徒等が将来への現実的な展望が持てるよう,キャリア教育や相談支援などを包括的に提供することや,子供たちのアイデンティティの確立を支え,自己肯定感を育むとともに,家族関係の形成に資するよう,これまで以上に母語,母文化の学びに対する支援に取り組むことも必要である。
加えて,日本人の子供を含め,多様な価値観や文化的背景に触れる機会を生かし,多様性は社会を豊かにするという価値観の醸成やグローバル人材の育成など,異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育に更に取り組むべきである。」
後段では、多文化主義を掲げ、多様性を社会のなかにとりいれることで、社会を豊かにするという発想が語られている。しかし、この答申全体の趣旨が、この表題にもかかげているように、「日本型学校教育」である。全体の制度理念を「日本型」ということを強調しつつ、多文化主義を実現することなど、どう考えても矛盾しているのではないか。中教審委員にも、多様な立場のひとがいるだろうから、ここで、多文化主義に共感するひとたちが、頑張ったのかも知れない。