国際社会論7 Q 郵政民営化が行われたのに、国はまだ株をもっています。民営化するのに、何故そのときに売らなかったのでしょうか。 A 当初の予定では、株は2017年に売却し、その後3分の2の株を売却することになっていました。期間はさまざまでしょうが、国営が民営になる際には、株を段階的に売却していくのが普通だと思いますが、郵政民営化については、期間の長さを指摘する人は多くいます。しかし、逆に、民営化に反対する人も多くいるわけで、その妥協なのか、あるいは、ソフトランディングをスムースに行うためのものなのか、人によって見方が異なると思います。今年になって、見直しがなされることになっていますが、その見直しも、民営化そのものが見直されると見る人もいるし、また、実はもともと二段階方式だったものの予定の行動で、「見直し」は見せかけに過ぎないという見方をする人もいます。いずれにせよ、本当のところは誰にもわからないわけで、ぜひ関心をもって調べてください。 Q 地球温暖化によって海水が増えているので、それを濾過し、飲み水にすることはできないのかと思いました。 A 淡水化という技術はかなり研究されており、日本はかなり先端をいっているはずです。とくに繊維メーカーが熱心に取り組んでいます。もっとも温暖化によってそのことが取り組まれているわけではなく、もっとも切実なのは、アラブなどの砂漠国で、もともと雨が極めて少ないので、水には困っているわけです。シンガポールなどのように、水をすべて輸入してきた国もあります。こうした国では、海水の淡水化技術は強く求められています。 Q ごみ収集は地方公共団体が行っているものですか?民営はないのか。 A 現在では基本的に地方公共団体だと思いますが、リサイクル可能で、売れるごみについては、民間もあります。小さなトラックで回ってくるのを見たことはありませんか。昔は、「ごみや」さんなどの営業もありましたが、リサイクルが困難になるのと同時に、そうした民間のごみ収集は減少してきました。 Q 震災の影響で高地に住宅を買う人が増えているが、これもフリードマンの新自由主義から来ているのか。 A 災害を利用して、大規模開発をする中で、個人資産等を収奪してしまうというのが、フリードマン的やり方(とナオミ・クラインが指摘している)で、個々人の行動は関係ないと思います。 Q 日本でも水を海外に売ることができるのか。 A 東京都はそれをやろうとしています。サントリー等の飲料製品メーカーは水を売っており、当然輸出も可能な限りやろうとしているのではないでしょうか。 Q ユーロ安は日本にとってどのくらいダメージなのでしょうか。 A ドル安やユーロ安が、日本にとってダメージというのは、そもそも「半分」の真実に過ぎません。ダメージなのは、輸出産業であって、輸入産業にとっては極めて好都合です。儲けている人はだまっているのに、損をしている人は声を大きくして主張するために、ダメージの印象が強まっている側面が強いといえましょう。輸入で有利になる企業と輸出で不利になる企業の間の「調整」が制度的に可能なら、それほど大きな問題とならないのでしょうが、自由経済では、国が調整することは難しいので、とくに大きな輸出産業である自動車等の「立場を代弁」するようになっていると考えたほうがいいと思います。 Q 建築や景色は世界遺産として保護されるのに、言語に関してはそういうケースがないのは少しおかしいと思った。 A 言語の保護というのが、全くないわけではありません。まずは、オランダやデンマークのように、その国の言語そのものが少数派で、ほとんどの国民が英語を話すために、国語が滅びてしまうのではないかという恐れをもって、国として国語を守っていこうという姿勢をとっている国がいくつもあります。  また、放言を意識的に守ろうとして、放送や新聞等のメディアで放言使用を部分的にしている国や地方もあります。  逆に、言葉の使用をめぐって、内乱が起きる場合もあります。(言語の章で扱う予定になっています。)  他方、言葉は「手段」であるので、スムーズに移行ができれば、英語のような国際語を国語とした方がよい、という考えをもつ人たちもたくさんいます。日本には、英語公用論を唱える人たちが、昔から常に存在しています。企業のなかには、日本なのに、英語で企業活動をしている企業もあります。  言葉は「生き物」のようなものであり、かつ、形のないものですから、「保護」といってもなかなか難しいのではないでしょうか。 Q どうして日本はここまで水が豊かなんでしょうか。 A 気候が温暖で雨が多いということ、そして、重要なことは、森林を守ってきたことでしょう。森林は保水力の中心なので、森林がなくなると雨が降っても水が資源にはなりません。森林を守ることが、そういう意味で非常に重要なのです。 Q 身の回りの物がほとんどアメリカ発祥のものとなった経緯はなんですか? A そういう事実があるかどうか、多少吟味する必要があるかと思いますが、電話、コンピューター、電気等々の近代的な日常用品の発明が多くアメリカでなされ、それが国際的に普及したことが事実でしょう。産業革命当初はイギリスで多くの発明がなされましたが、20世紀前後の発明はアメリカで多くがなされました。それは、経済力、人々の自由の度合い、能力主義の徹底などの背景があったからだと思います。 Q マクドナルドのある国には、本当に戦争はないのか。 A そのように主張しているのは、トーマス・フリードマン『レクサスとオリーブの木』という本であって、当時から批判はたくさんありましたが、確かにある時期までそうしたことは事実と認められる側面がありました。しかし、マクドナルドそのものが国際的に拡大し、戦争が起きている国も出てきたこともまた事実なので、「本当か」と言われれば、現時点では本当ではないといえるでしょう。  しかし、経済的な交流が進み、相互に資本投下が進んでいる国同士の戦争は、極めて起きにくいということは、間違いないと思います。