国際社会論 4回 イラン・イラク・アフガン戦争 Q イランコントラ事件の時、アメリカ政府が武器を売らせていたのですか?それとも民間が売っていたのですか。 A アメリカ政府はイランに武器を売ることをもちろん禁止していたわけですが、裏で売ることを黙認していたということで、軍需産業と政府はかなり一体ですから、(それはほとんどの国でそうなのであって、アメリカだけが例外ではありません。戦争を行うのは政府であり、軍需産業は兵器を作るわけで、政府と一体となって商売をしていることになります。)政府が売らせていたと言っても間違いではないように思います。そして、その売り上げ金をニカラグアのゲリラ援助に使っていたという点でも非難されました。  兵器産業が敵味方の双方に武器を売ることは、ごく普通のことであって、とくに珍しいわけではありません。  第一次世界大戦は、双方がドイツのジーメンスの武器を使用して闘ったといわれています。 Q CIAは映画のようにスパイ活動をしているのですか?(別のQ CIAとは何ですか?) A CIAは情報機関ですから、まさしくスパイ活動のための組織です。従って活動している人は、通常秘密になっていて、世界中に協力者がいます。ただ、映画のようにというのが、どういう意味かわかりませんが、スパイ活動というのは、日本の忍者もそうですが、普通の人になりすまして、全く気づかれないように情報収集をするのであって、映画のように危うく、かっこいいものではありません。  ただCIAは軍事力ももっている、国際的には少ない情報組織なので、かつては政府転覆とか、要人暗殺などをしていました。 Q フセインは失脚して、隠れていたのが見つかって処刑されたということでいいんですよね? A フセインは戦闘状態の中で逃亡中見つかって、新政府樹立後、裁判にかけられ、死刑判決を受けて死刑執行されたということです。従って、形式的には、アメリカの意思ではなく、また、アメリカによってでもなく、新イラク政府の司法制度の中で死刑になったということです。 Q 「アメリカが要人の暗殺を禁止していたから、フセインは殺されなかった」と言ってましたが、それ以前は暗殺を認めていたのでしょうか。 A 暗殺とは、文字通り、密かに殺害することであり、当然表立って、正式に「認めている」ということはありえません。ただ、公式の行為としてではなく、密かに殺害していたという事実があるということです。もちろん、そういう場合でも、例えばベトナムで、ゴ・ディンディエム政権がクーデタで妥当され、兄弟が暗殺されたことも、南ベトナム人を「援助」する形をとり、実際に手を下すわけではないのです。しかし、当時は、共産主義は打倒するのが当然という雰囲気がアメリカにあり、多少のことには目をつぶるという状況があっただと理解すべきでしょう。しかし、その後ベトナム戦争の敗退などを経験し、国際的な批判をあびた結果、公式に暗殺を禁止したということだと思います。 Q 何故化学兵器を使うと、普通より非難されるのですか? A 化学兵器が最初に使われ、その結果化学兵器の使用を禁止する国際条約が制定されるきっかけになったのは、第一次世界大戦でした。それまでの兵器は、とにかく「大砲」であって、敵の兵隊に打ち込むのが目的で、まだ、都市全体を攻撃するような兵器ではなかったのです。つまり、戦時法でいう、戦闘員と非戦闘員を区別して、戦闘員だけを攻撃する武器だけが使われていたのですが、化学兵器は、有毒物質をまき散らすわけですから、戦闘員だけではなく、非戦闘員、民間人、そして子どもまでも攻撃することになります。このことが、化学兵器を使ってはならないという主張につながっていったのです。原爆もそういう意味で、化学兵器であり、その使用は国際法に明らかに違反していたというべきでしょう。 Q 中東の国は、日本と違い、ひとつの宗教を崇拝しているように思えるのですが、その人たちはアメリカなどの違う宗教の人たちが自分たちの宗教問題に関与してくることをどう思っているのでしょうか。 A いくつか誤解があると思います。まず中東の国ではひとつの宗教を崇拝しているというのは、間違いでしょう。イスラム教が支配的な宗教ということであって、それ以外の宗教を信じている人たちがいないわけではありません。イスラム教は、戒律が極めて緩いこと、信じると税が軽減されることによって、改宗する人が多かったわけで、税を負担すれば、以前でもイスラム教にならない自由はあったのです。現在でも、ユダヤ教徒、キリスト教徒なども多数いると思います。  それから、アメリカは「宗教問題」に関与しているというよりは、やはり、地政学的な観点からの支配、とくに石油利権を中心にして、中東での活動をしていると考えられています。宗教に関しては、一時はイランに肩入れしていたように、あまり興味はないのではないかと思います。興味がないからこそ、中東の人たちの行動を正確に理解できないのではないでしょうか。