国際社会論ノート 慰安婦問題を考える3

 最初に設定した問題がひとつだけ残っている。
5、違反者が罰せられるべきか
 実際に、罰せられた事例は、インドネシアでの法廷で、死刑を含む有罪判決があったのみだったと言われている。しかし、今から当事者を罰するということには、意味があるとは思えない。モサドによるユダヤ人の追跡は、いまでも続いているのかも知れないが、これとても、今生きている旧ナチといえば、90歳を越えていることになり、しかし、90歳といえば当時はまだ未成年だから、自分の意思で戦争犯罪を実行したとは言い難い。慰安婦問題でも同様だろう。
 従って、最後に、どのようにお互いが歩み寄ることができるのか、あるいは何が必要なのかこそが重要だろう。
 まず必要だと思うのは、お互いの歴史を知ることだろ。これは、おそらく、驚くほど互いに知らないのではないだろうか。韓国で、体系的な日本史の本がどの程度だされているかわからないが、日本では、体系的な朝鮮半島の歴史書は極めて少ない。個別的なテーマを扱った朝鮮の歴史書はあるが、通史は少ないのだ。アマゾンで購入できる通史は(通史に限らないが)、かなり明確な立場が表明されており、そして、レビューを見ても、それに対するコメントが寄せられるような本が多い。圧倒的に、朝鮮の歴史に否定的な見方をする書物が多い印象を拭えない。 “国際社会論ノート 慰安婦問題を考える3” の続きを読む

スピーカーコードを換えてみた

 我が家のスピーカーは、実に40年くらい前に買ったものだが、換える気持ちにならないくらい、私の耳にはいい音がする。比較的広い部屋にフローリングというのも、いい音がするにはいい条件だ。さすがに、アンプは3台目で、今は、オンキョーのCDデッキをアンプ代わりに使っているが、それまで使っていた古いものよりは、いい音がするし、前のはハンダ付けが緩んでいたのか、けっこう雑音がしていた。それほど高くないCDデッキだから、アンプに換えればもっといい音がするのかも知れない。
 最近でたブルーノ・ワルターのコンプリート(ソニー)は、ステレオ録音については、まったく新しくオリジナルテープから、リマスターして、ワルター特有の低音を重視した音に変えたという宣伝になっている。その感想を若干書いたが、それでも、以前に聴いていたものに比較して、それほど低音が強調されているように思えなかった。それで思いきってコードを換えることにした。というのは、以前からずっとこのコードについては問題があった。 “スピーカーコードを換えてみた” の続きを読む

週刊朝日12月27日号の記事「NHK「安楽死」番組に波紋…

 週刊朝日12月27日号の記事「NHK「安楽死」番組に波紋…障害者支援団体が問題視する点とは?」が今日(20日)にウェブ版として掲載されている。これは、NHKスペシャルの「彼女は安楽死を選んだ」に対して、障害者や難病患者の自立的生活を推進する団体「日本自立生活センターJCIL」が、障害者や難病患者の尊厳や生命を脅かすと声明を出しただけではなく、放送倫理・番組向上機構BPOに調査・審議の依頼をしたことをきっかけとした記事である。
 私は、この番組を当日見ていなかったので、後日の再放送のときに録画してあったものを、この記事を読んで、見てみた。実は、今回のような「安楽死」の実際が放映されたあと、同じ病気の患者の団体が抗議をしたということは、以前にもあった。オランダで、発病から安楽死を実行した過程を詳細に描いた番組が、TBSで放映されたのだが、ALS患者の安楽死だったので、ALS患者からの抗議だった。TBSは、そうした抗議を受けて、半年後に、安楽死した夫の妻にインタビューをして、その模様を放送した。抗議の趣旨は、今回と同じように、このドキュメントビデオは、ALS患者は安楽死しなさいというメッセージだということだった。ちなみに、オランダ人にこの番組のことを聞いたところ、実際にオランダで最初に放送されたわけだが、別に特別な反響はなかった、ごく普通に受け取られたということだった。 “週刊朝日12月27日号の記事「NHK「安楽死」番組に波紋…” の続きを読む

新幹線殺人事件無期判決について やはり納得できないものがある

 いわゆる「新幹線殺人事件」に対する判決があった。無期懲役だった。殺人犯のあまりの身勝手さと、まったく罪のない無関係な人を、自分が「無期懲役刑」を受けるために殺害し、かつ、まったく反省もしておらず、むしろ、誇っているかのような発言を繰り返してきたことに対して、おそらく、多くの人は、死刑が求刑され、その通りになるだろうと考えていたのではないか。私自身は、その可能性はあまり高くないとは思っていたが、しかし、私が裁判員だったら、無期懲役には疑問を表明したと思う。求刑以上の刑罰というのは、ほとんどないわけだから、賛意はえられないとは思うが。
 既に、判決への疑問は出されている。その思いは、「疑問」を感じる人には共通だろう。被告の言明や態度は、あまりに酷すぎる。そして、一生、刑務所で楽に生活していたい、ということを明言もしている。更に、有期刑で出所したら、再び殺人事件を起こすとまで公言しているのだ。殺害が一人で、初犯であれば、余程のことがない限り死刑判決はないということを、予め知った上での犯行でもある。
 こういうことを、被告の思惑通りにしていいのだろうか、ということは、誰もが感じたことだろう。 “新幹線殺人事件無期判決について やはり納得できないものがある” の続きを読む

次々に出てくるセブン-イレブンの問題

 セブン-イレブンの問題が今年はずいぶんと出てきた。他のコンビニも同様なのかはわからないが、セブンのやり方には、特に以前から疑問をもっていた。最初は、娘が大学に入ったときに、近くのセブンにバイトの申し込みに行ったときのことだ。もうずいぶん前のことだ。
 面談から帰った娘は、セブンでのバイトはしないと即座に言った。それは、途中でやめた場合には、解約金を支払う義務があるということを聞いたからだ。期間と、その額は忘れてしまったが、たぶん、1年以内で2~3万くらいだったと思う。大学に入ったばかりで、バイト経験などはなかったのでびっくりしたろうし、私たち親も驚いた。期間と額については多いに疑問だが、直ぐにやめられては困るという事情はわかる。というのは、コンビニのレジは、かなり大変な作業で、レジ打ちも単に金額を打って、レジの計算にまかせているわけではなく、客層の判断などもあるし、また、配列されているさまざまな商品を、かなり正確に頭にいれておく必要がある。とくに大変なのが、煙草の銘柄を憶えることだそうだ。煙草を買いに来た客に、またせずにすばやく注文の煙草をとってくるというのだけでも、かなり大変のようだ。もたもたしていれば、怒鳴られるだすろう。そういう作業をしっかりと教える必要があり、憶えてもらうまでには、それなりの時間とコストがかかるのだろう。だから、そうそう簡単にやめられてはこまるのも確かだ。 “次々に出てくるセブン-イレブンの問題” の続きを読む

『教育』2020年1月号を読む インクルーシブと特別支援を深く知る

 大分『教育』の読後感を休んでしまった。また、できるだけ頻繁に書くようにしたい。
 さて、今回は、特集1が「インクルーシブと特別支援を深く知る」となっている。私は、特別支援教育の専門家ではないので、これまで、いろいろと勉強したり、また、特別支援学校の授業を見に行ったりしてきたが、依然として、よくわからないというのが正直なところだ。記述式問題を出すのはいいが、50万人もの答案をわずかな期間で採点できるのか、というようなことと、似た困難が、現場には無数にある。大学を卒業して教師になったとき、ほぼ全員が直面する事態が、教室のなかにいる障害をもった子どもを、どう教育したらよいのかわからず、暗中模索するという点である。ベテランになったから、充分にできるようになるというものでもない。多くの場合、介助や支援をしてくれる人がついているわけではないから、常識的にイメージされる「授業」は不可能になっているわけだ。「ともに学ぶ」という理念はいいことだろうが、それを保障する条件がないままに実行すれば、現場を預かっている人が、とにかく苦労する。そういう実状が、かなりあることは、誰も否定できないだろう。 “『教育』2020年1月号を読む インクルーシブと特別支援を深く知る” の続きを読む

松坂が今でもレッドソックスに嫌われているという記事

 12月12日のJBpressに「西部復帰の松坂大輔が今もRソックスに嫌われる理由」という文章が載っている。ここに書かれている内容については、私は多くを知らなかったが、日本のメディアの松坂に対する甘い評価については、日頃から疑問に感じている。
 まず記事の内容を紹介しよう。執筆は、臼北信行氏である。
 古巣の西部に復帰して、松坂は覚悟を決めているのだろうと書いたあと、日本復帰後は一年を除き、散々の成績だったことを確認する。そして、大リーグでは活躍したと、多くの日本人が思っているが、実はレッドソックスでは、ヒンシュクをかっていたし、成績も期待されていたほどではなかったと書く。一見いい成績だったシーズンもあるが、統計的評価では、運と味方の援護に大きく助けられたとして、四球が多く、味方もいらいらしていた。2シーズンのあとは、けがや手術で10勝をあげられたシーズンがなく、松坂の獲得は失敗だったと評価されているのだそうだ。
 そして、何よりも、評価を落としたのは、日本人スタッフが付きっ切りで、同僚たちとあまり交流もせず、同僚が近づくこともできなかったらしい。 “松坂が今でもレッドソックスに嫌われているという記事” の続きを読む

小中学校2学期制再ブレーク?

 12月14日毎日新聞に「小中学校・2学期制、再ブレーク? 「通知表3回もらえぬ」不人気一転… 年35時間増、授業確保に有効」という記事が載っている。働き方改革が進むなかで、新学習指導要領で増加した授業時間数をこなすには、2学期制のほうがよいということで、人気が復活しているという記事である。何故、授業時数を増やせるか、働き方改革になるかというと、始業式、終業式、通知表の回数を減らすことができるということのようだ。
 これまで、通知表を夏休み前にほしいという保護者の要望があり、2学期制は不人気だったのだが、現場で望む声が多くなっているということだろうか。文科省によると、2018年度では、小学校19.4%、中学校018.6%が2学期制だが、記事によれば、来年度からはもっと増えるということだ。
 しかし、働き方改革をしようという姿勢はわかるが、すっきりしないものを感じる。 “小中学校2学期制再ブレーク?” の続きを読む

福岡妻子殺人事件判決について

 2019年12月13日に、2017年6月に福岡県小郡市で起きた母子3人が殺害され、夫(父)である中田充被告が犯人とされた事件に、死刑の判決がくだされた。被告は即日控訴したということだが、極めて難しい事件で、本当に死刑が妥当なのかという疑問もわく。私は犯罪の専門家ではないが、裁判員制度が導入されたということは、市民の感覚を重視するということだろうから、考えを述べることにした。
 念のため、事件発生からの毎日新聞記事を検索してみた。判決全文がネットで読めるようになったら読んでみたいと思う。それぞれの論点に、双方がどのように詳細に言及しているか、新聞記事だけではわからないので、憶測部分が入るが、各論点について検討してみたい。
 警察が公開している犯行は、「充被告が妻を絞殺し、自殺を偽装するために、ライターオイルで火をつけた。髪の毛の一部が燃えた。その後子ども二人を絞殺して、家を出た。犯行を隠すために、妻に電話を数回した。学校から子どもの不登校を知らされ、妻に電話したが出ないので、妻の姉に確認を依頼し、姉が死体を発見、被告に連絡。被告は、「自殺している」と110番があったと虚偽の報告を警察にした」というものである。 “福岡妻子殺人事件判決について” の続きを読む

日本もホームドクター制の導入を考えていいのではないか

 『プレジデント』2020年1月号に、「病院消滅の夕張で、心疾患と肺炎の死亡率が低下した理由」という記事が載っている。元夕張市立診療所所長の森田洋之氏のインタビューに基づく記事である。周知のように、夕張市は、市として破産したわけだ。もちろん、市が破産しても、無くなるわけではないし、また、倒産するわけでもない。財政や行政が、国の管理下におかれ、財政支出の削減を強いられることになる。その一環として、総合病院が無くなり、いくつかの診療所があるのみとなった。171床が19床になってしまったそうだ。そして、多くの患者があぶれ、適切な医療を受けられないようになると危惧されたが、実際には、その逆だったというのである。森田医師の話によると、「日本人の主な死因であるガン、心疾患、肺炎の死亡率は、女性のガンを除きすべて破綻後のほうが低くなっている」という。その理由が、プライマリーケア中心の医療にシフトしたからだと、森田医師は分析している。
 プライマリーケアとは、地域のかかりつけの医師が、予防から看取りまで行い、必要な場合のみ専門病院を紹介するというシステムである。夕張市では、綜合病院が消滅してしまったので、そうせざるをえなくなったわけだ。入院や手術が必要な場合のみ、札幌の病院にまかせるようにしたのだそうだ。
 その結果、無理な治療が減り、死因も老衰が多くなった。 “日本もホームドクター制の導入を考えていいのではないか” の続きを読む