主に銀行のこと(10年前と比較して変わったこと、変わらないこと1) 2002.10.19

9.20

 10年前とオランダは相当変わった面があると同時に変わらない面がある。変わったとすぐに感じたのは、バイクが多くなったことだ。10年前はバイクというのは、本格的なバイクがごくたまに走っているくらいだったが、今は日本でいう原付がたくさん走っている。もちろん若い人が多い。オランダは坂がないのだから、自転車で十分だし、健康にもまた環境にもいいと思うのだが、どういうわけか、非常に多くなっている。しかも原付なので、基本的に自転車の道を走る。だから、自転車道を横切るときもけっこう気をつける必要がでてきた。

 次に物価が高くなった気がする。もっともこれは、日本の物価がこの数年非常に安くなったので、そう感じるのかも知れない。
 10年前のオランダは、けっこう大変な時期であると言われていた。そして日本はまだまだ景気のよさが残っていた。しかし、日本では物価が高く、オランダに来て、物価が安いので感激したものだ。しかし、その後オランダは奇跡のオランダと言われた好景気が続き、ごく最近落ち始めたようだが、日本はずっとこの10年悪いままだ。
 しかし、暮らしやすさはオランダが低下し、日本が向上したような気がする。もちろん、日本では失業が増大し、失業した人たちは、大変だが、とにかく物価は低下して、消費者的には、非常に暮らしやすい実情が生じているのは事実だ。オランダではスーパーで食料を買うときには、確かに安い感じがするが、それ以外の物は日本の方が安い印象だ。ガソリンなどは、レギュラーにあたるものが、リットル130円もする。ディーゼルが90円以上だ。
 また電気製品も高いし、特にインターネット関連はびっくりしてしまった。
 今日ADSLをやっと契約したのだが、なんと、速度は250キロバイト/秒という超低速度で(ただし、極高速がうたい文句だ)3,400円もする。1Mだと1万円だ。それ以上の速度はない。
 パソコンも日本の方が安い。
 CDなどは、レギュラーの価格は同じようなものだったが、日本のクラシックCDでは外国盤が非常に安く、ファンはそういうものを中心に買うが、オランダにはそうしたものはあまりみかけない。

 変わらないもので強く印象に残ったのは、銀行システムだ。もっとも、少しは変わっているのだろうが。
 10年前には、オランダの銀行システムは最初に世界的な貿易大国になった国だけあって、すごく便利だと感心したものだが、その後、日本での改良は著しく、今回はオランダの銀行の不便さに腹が立つほどだった。
10年前の日本の銀行は実に不便なものだった。基本的にお金の出し入れは、3時までしかやっていない銀行の支店に行って行う必要があった。もっとも「引き出し」はATMでできたが、ATMだって、時間が伸びたのは最近のことであって、支店が開いている時間帯しか使えない時期がながかった。これは少しずつ伸びたが。
 ところがオランダに来て、お金の出し入れは基本的に紙に書いてポストに入れておけばいい、という具合になっている。したがって、銀行に口座を作り、給与が振り込まれるように設定しておけば、お金の出し入れや送金のために銀行に行く必要がないのだった。そして、お金の出し入れがあれば、銀行から郵便で通知がきて、それをバインダーにはさんでおけば、日本の通帳のようになるというわけだ。こうした便利な使い方をするために、口座があるということで、利子は一切つかないのだった。
 こうした便利さに感じ入ったのは、世界のどこかで災害が起きたときに、すぐにテレビで、この災害地に寄付をする意思のある人は、画面の口座に送金してください、と字幕がでるのだ。オランダの銀行は、**銀行++支店などというのがなく、全部それが数字に組み込まれているので、口座番号だけ書けばいいことになっている。オランダは非常に災害への寄付が多い国だということを聞いたが、単に国民性の問題だけではなく、こうした銀行システムの便利さにも原因があると思ったものだ。
 日本だって、災害があれば、何か協力したという気持ちをもっている人は多いのだが、以前は「現物」での寄付が多く、それがかえって迷惑がられて、送金が主体になったときに、簡単に送金ができるシステムがなかったので、日本人は冷たいように思われていたように思う。

 しかし、日本では、この10年間、銀行の利用システムは実に大きな変化をとげた。ATMで出し入れだけではなく、振込などもできるようになったし、時間帯が飛躍的に拡大した。日曜日なども基本的に使用可能だ。しかも、それだけではなく、引き出ししかできないようだが、コンビニにATMがおかれるようになった。これで24時間使用できるということだ。ATMの機能はオランダよりも勝っているが、なんといっても時間帯において負けていた。しかし、24時間のコンビニATMが登場するに及んで、ハンディは消えたわけだ。

 さて、今回何が不便と思ったかを書こう。
 10年前は、家賃を日本で1年分全額事前に振り込んで行った。だから、こうした銀行システムには直接かかわることがなかったわけだ。
 ところが、そうするとかなりの送金手数料がかかるし、なれたこともあり、現地に行ってから支払うように計画をした。それで早速お金を下ろして銀行に振込に行った。こちらのATMは「引き出し」しかできないから窓口になる。振込をしたいというと、それはできない言う。その銀行に口座をもっていないと振込というのはできないのだ、というのである。日本では口座などなくても振り込むことができるから、どうしてなのか理解できないが、とにかくだめらしい。他の銀行でも同じことを言っていたから、そうなのだろう。では、口座を開くことができるか、と聞くと、どれだけオランダに滞在するのか、というので、1年だというと、口座は開けない、開けるのは、PostBank だけだという。PostBankというのは、昔の日本での電電公社と郵便局が一体となったような組織で、郵便、銀行、電話を一括して行っていたのだが、これが今では分割民営化されてらしい。しかし、組織形態がよくわからず、現地の人にも正確にはわからないそうだ。郵便局とPostBankはだいたい同じところにある。電話は別らしいのだが、郵便局でも業務内容のところに、電話の敷設申し込みなどと書いてあるから、完全に分離しているようには見えない。
 とにかく、PostBankだけは口座を開けるからそこに行けという。なんとまあ、商売気のない銀行なんだろうとは思ったが、仕方ないので、近くにあったPostBankに行ってみて、事情を話すと、たしかに口座がないと振込はできず、PostBankでは口座は開設できるというので、口座開設を申し込んだ。そうすると、10日かかるという。この点については、10年前にも、PostBankで口座を開設していたので、同じだったのだろう。ただ、以前はせっぱつまっていなかったので、あまり自覚がなかった。
 なんで10日もかかるのか、と喧嘩するわけにもいかないので、ああそうですかと聞いて、とにかく10日待つことにした。日本から大至急大家さんの口座に送金してもらうということも考えたが、一応事情を話して、待ってもらうことにした。
 で10日たって、確かに書類が来て、振込用の用紙も送られてきた。木曜日に、早速PostBankに赴き、キャッシュカードを交付してもらい、それで振込はできた。しかし、口座に入金されるのは、月曜日だという。木曜日の午前中だ。日本なら、自分の口座に銀行で窓口を通じて振込をすれば、ただちに口座に入金されるはずだ。他人への送金ではない。当然すぐに入金したあと、大家さんへの送金が可能だと思っていたが、結局月曜日まで待たねばならないことになった。これもそういうのだから仕方ない。
 結局日曜日の夜に振込のための用紙に事項を書いて、封筒に入れてポストに入れた。送金の知らせ(正確には自分の口座からこれだけ送金されたという通知)が来たのが、更に1週間後くらいのことだった。ただちに支払いが必要な家賃が、結局2週間もかかってしまった。日本なら1日ですむところなのに。