信号のこと 2002.11.10

 11月の初めに車を買いました。まだ絶対に必要というわけではないのですが、オランダ滞在は半年で、そのあといろいろな国を回るので、そのときには必要であり、まあ、早めにというわけです。
 10年前に比較して、車は確実に増えています。また、車に関する法制度もいくつか変化したようです。前は日本の車検にあたるものがなかったのですが、今は日本よりももっと頻繁な車検が必要になっているようです。新車を買って3年たつと必要になり、その後は毎年です。車もガソリンも日本よりは高いでしょう。ただ、高速料金がただなので、その分は非常に助かります。

 さて、今回のテーマは信号です。信号というのは、国内でもさまざまですが、いろいろな国を比較すると、微妙に違っていて、とても興味深いものです。
 例えば、はっきりと違うのは、信号の位置と「黄色」です。日本では、黄色は注意であり、原則として信号の手前で黄色になれば、止まれ、止まれない状態で黄色になったら、急いで、という意味でしょう。(少なくとも私が習った時代ではそうだった。)ところが、黄色は「止まれ」である国もあるようで、黄色で急いで通りすぎようとする車がほとんどない国も確かありました。(はっきりと記憶していないけど、オーストリアがそうだったような気がします。)また、黄色が出てくる順番も違っていて、多くは、青が黄色になり、赤になる。つまり、青と赤のつなぎ薬ですが、赤から黄色に変わって、青になる国もあります。

 オランダの信号ですが、私が運転した国々の中では、非常に運転しやすい信号体系だと思います。 
 日本とまず違うのは、信号の位置が、交差点の手前、つまり車の目の前にあるということです。これはふたつの点で便利であり、日本でもそうしないかなあ、などと思っています。予算的に無理でしょうが。
 信号が交差点の向こうにあると、横で見ている車が変化を見て取れるので、予備的に車が発進するのですが、手前にあると、他のところから見ることができないので、予備的な変化がありません。
 つまり、日本では、自分の信号が赤のときに、横の信号を見ていて、青が黄色になると、動き出すようなことがありますが、そうしたことは一切できません。自分の信号が青になるのをひたすら待つだけです。これは、一見不合理であるように見えても、安全性からすると優れています。

 それから、オランダの信号は、車、それも直進、右折、左折、そして、自転車と歩行者が非常に細かく分かれていて、多くの場合それぞれが順番に変わっていきます。もっとも、日本でもそうですが、信号によって、どのように分岐しているかは、ずいぶんと差があり、それはオランダでも同じです。
 オランダで、最も単純かつ、もっとも安全なのは、それぞれの要素がまったく個別に一つずつ変わっていくタイプです。理屈で言うと、北進の直進、北進の右折、北進の左折、南進の****、東進の***、西進の***、自転車、歩行者というように変わっていくものです。実際にここまで細分化されているのは見たことがありませんが、これに近いのはあります。
 ただし、日本だと歩行者と車は方向が同じであれば、同じときに青になりますが、オランダでは、車と歩行者は、完全に分離しており、車が青のときは歩行者は赤であり、歩行者が青のときには車は赤です。したがって、日本のように、歩行者にしても車にしても、互いに注意して進むという必要がありません。つまり格段に安全なわけです。
 ただし、今までロッテルダムで、歩行者が青だからわたったのに、車が曲がってきたことがあり、驚きました。他の地域ではそうしたことは経験がありませんが。

 この方式の利点はとにかく安全であるということです。ただし、きめ細かく変わっていくために、自分の信号が青になるまで、非常に長い時間がかかり、青の時間が短いという難点があります。それから歩行者の信号はすべて押しボタン式です。また、日本のように聴覚障害者のための音声が流れるのは、まだ経験がありません。

 次に、10年前と違っているのは、サークル交差点が出てきたことです。前は見たことがなかったのに、今度は至るところにあるので、サークル交差点を作っていく方針なのでしょう。前明らかに信号があったのに、サークルになっているというところを何カ所か確認しました。
 サークルというのは、日本にはないので、わからない人が多いと思いますが、交差点が円状態になっており、サークル内は一方通行になっています。そして、サークル内に入って、自分が行きたい道になったら出るという方式です。これも国によって、ルールが微妙に違うらしいのですが、オランダの場合には、原則(これも少し場合によって違うようですが)、サークル内に車がいないときに、進入する。サークル内の車が優先、出るときにはその前で方向指示器を点滅する、というルールになっているようです。
 まだオランダでは新しいようで、オランダ人でも間違える人がたくさんいるらしいです。

 車が非常に多いところでは、とても無理がある方式ですが、少ないところでは、ある程度合理的ではあります。車の状況をみて、すぐに入れるし、無駄な信号待ちがありません。
 しかし、最大の利点はおそらく行政的な観点であって、信号経費がいらないということでしょう。信号の経費というのは、相当に高いもので、設置費用も高いし、維持費も相当かかるはずです。
 ところが、サークルの場合には、信号経費が一切かからないので、実に経済的なのでしょう。
 ただ、日本でやろうとすると、十字の信号よりも、サークル部分の面積が広がるので、土地収用費で高くつくかも知れません。