オランダという社会(2) 2002.10.27

オランダという国家(2)

 オランダがいかに人工国家であるかは、運河のことを知ることがいいでしょう。前回も少し説明しましたが、もう一度、少し詳しく説明しておきます。
 まずオランダは東と南がドイツ、ベルギーと接しています。北西は北海です。大きな川は、ドイツからライン川が流れ込んできて、北海に注ぎます。その注ぎ口の主な部分がロッテルダムということになります。しかし、普通の川であれば、そのまま、ドイツからオランダを通って北海にいくのでしょうが、ライン川はそうではありません。オランダは意図的にライン川を分割し、運河に変えてしまったのです。したがって、ドイツでのライン川とオランダの運河とでは様相がまるで違います。川は高いところから低いところに流れていきますが、運河は、階段状になっています。そして、段のことなる部分は水門で区切られており、高いところから低いときに流すときには、水門を開け、流れないようにしておくときには、水門を閉じておきます。通常はそれですむのですが、オランダの場合には、海面が陸地よりも高いために、低いところから高いところに水を流していく必要がでてくるわけです。その役割を果たしていたのが風車なのです。オランダでは高さの違う運河が道路の両脇に流れていたり、隣接している湖が水面の高さが違っているために、違う高さでボートが進んでいるような場面に、よく出会います。これはオランダ以外では、ほとんど見られない光景ではないでしょうか。
 もしライン川が氾濫すれば、その水はオランダに流れてくるのですから、当然その水をどんどん高いところにくみ上げて、北海に流していかなければ、オランダで洪水になります。風車の能力はやはり限界があったので、1,960年代までは、洪水があったのですが、その後風車をやめて、全国の水門にモーターが設置され、それがコンピューター管理されるようになりました。水位が厳密にはわかりませんが、10センチ程度上下するだけで、自動的にコンピューターが作動して、水位の訂正をはかるようになっているのです。そういう設備が整っていこう、オランダでは、洪水がまったく起きていないのです。ここ数年間、フランスやドイツで、大洪水が起きましたし、とくに今年はドナウ川沿いにひどい洪水が複数の国で起きました。
 ドイツのように高地で洪水がおき、オランダのように海よりも救いところで洪水が起きないのは、非常に不思議なのですが、それだけ、オランダが、国土を人工的に管理できるようにしていることの結果なのです。
 オランダの運河は、基本的な風景であると同時に、水上運送や水上娯楽に利用されていることは、前回書きました。この娯楽は、本当に身近なもので、冬になって凍るとすぐにそこがアイススケート場に早変わりします。大学の人たちは、たいてい研究室や部屋にスケート靴を常備していて、休み時間などを利用して、一滑りします。それだけ至る所に運河があるということです。

 今でも風車は至るところにありますが、それでもほとんどの風車は廃棄されたそうです。今残っているのは、主に観光用というべきもので、もちろん、実用的に利用されているものもありますが、まあ、憩いのために残っていると考えていいようです。実用的というのは、粉引きなどです。
 風車に興味のある人は、オランダにきたときに、風車博物館と呼ばれていて、湖にたくさんの風車が残されている地域があります。そこにいくと、粉引き用の風車もあるし、風車がよくわかります。

 風向きが変わることについてはどうするのかというと、羽がついている部分とその下の部分がわかれており、羽がついている上の部分は回転するようになっています。ですから、羽に布を貼って回転させるのですが、(船で帆をあげるようなもの)そのときに、風向きにあわせて回転するのです。ですから、風がどこから吹いてきても適応できるようになっています。