452/628 GEC01342 WAKEI オランダ通信60 大学について
(19) 93/07/11 04:34
オランダ通信60 大学について
オランダの大学については、度々書いていますが、現在文部大臣が、大学についての改革を提起しているので、それを紹介します。
文部大臣はリッツェン(Ritzen)といって、元ロッテルダム大学の経済学の教授だった人で、オランダでは大学の教授が、大臣や次官によくなるようです。
リッツェンが問題にしているのは、近頃の大学生は質が低下したということです。VWOの最終試験があまくなって、勉強が大してできない学生も大学に行くようになった、だから、もっと大学は厳しく学生に対処しなければならない、というわけです。
オランダには、日本の公開模試みたいなものや、アメリカのSAT、フランスのバカロレアのような、個別の学校とは独立した、つまり、個々の学校の判断ではない全国的な試験制度はないので、(小学校だけはある)高校や大学の学生の成績など、実は客観的には誰にも分からないのです。だから、何となく雰囲気で言っているという点は、否定できませんが、ただ、昔の学生から見れば、最近の学生が、平均的に学力が落ちていることは、確かなのでしょう。
いくつかの原因があります。
第一に、学生の数が増えたことです。といっても、まだ5、6%の進学率ですが。
第二に、正規のVWOを経なくても、大学に進学できる、バイパスを整備したために、大学の教授としては、当然学生は知っていると思っている知識を、学校で習得しないで大学に来る者も少なくない、という事実です。以前は、VWOに在学しなかった者は、大学には行けなかったのですが、現在では、2年の在学、あるいは全く在学しなくても、高等職業学校を卒業していれば、大学に進学できるのです。
VWOでは、最もスタンダ−ドな古典コ−スでは、ギリシャ語、ラテン語、フランス語、ドイツ語、英語が必修ですから、大学に入学時点で、既に5つの外国語を知っていることになります。昔は、卒業試験は難しかったし、また、大学はアカデミックな教育機関ですから、学者になるつもりの人が来たのですが、現在では、アカデミック意識の学生はすくないので、教授との間に心理的ギャップは、相当に大きいものがあります。
第三に、大学の年限を6年から4年に短縮したことです。オランダの大学は、基本的に大学院大学であって、卒業生はマスタ−の称号(オランダでは、博士候補者といいます。ドクトランデス。名前の前にdrs.というのがあると、大学卒ということです。国際的には修士)だから、以前は6年生だったのですが、それを10年くらい前に4年に短縮したのです。学生は3年まで授業を受けて、4年になると、論文執筆になって、ほとんど授業を受けなくなります。これだけでも、レベル低下なのですが、この波及効果として、以前は、6年かけて苦労して論文を書いていくのは、とても大変で、途中でどんどん止めていったけれでも、現在は4年なので、何とかなると学生が判断して止めなくなった、と言います。因みに大学では、1年の終了試験を合格しないと、専門課程に進学できないのですが、(プレパデウスといいます。)それに合格すれば、後は個々の授業の問題で、学生として退学させる、ということは、成績上はできなくなります。何年いてもいいのです。ただ、奨学金が6年間なので、7年目になるとかなり苦しくなって、大抵止めるそうです。逆に6年間は、遊んでいても奨学金をもらえるので、まずやめないのです。日本のように留年したら奨学金ストップなんてことはありません。それに返却なしの奨学金ですから。
第四に、大学としてもあまり難しくできない事情があるということです。つまり、他の学校と同じで、大学でも学生数が少なくなれば、廃止になるということです。大学としての廃止はないでしょうが、学科単位では、廃止はそれほど珍しくないのです。最もライデン大学だけは、国家の政策によって、非常に珍しい学科がたくさんあって、ここだけは、どんなに学生が少なくても廃止しないようになっているらしいのですが、しかし、それでも教員の定員などは減少します。人間だれでも、非常に難しいということであれば、学生は集まりにくくなりますから、どうしてもそんなに難しくできないということです。日本の大学だって、入学試験で、私立は3科目になっているのは、決して教育や学問の論理ではなく、それ以上にしたら、受験生が減るという事情ですから、そういう点は同じです。 ライデン大学はエリ−ト大学としての地位を保持するために、最低点を70点(現在は60点)にする改革を考えているようですが、それもライデン大学だからできるということがあります。