446/628 GEC01342 WAKEI オランダ通信55 失業問題
(19) 93/07/02 03:50
オランダ通信55 失業問題
現在のヨ−ロッパの最大の問題は、失業問題とユ−ゴの問題であると言えます。オランダに関して言えば、もともとあまり働かない土壌の上に、不況でどんどん失業しているらしいので、大変です。もっとも、オランダは、自慢の失業保険制度があるので、それほど個人個人が不安になっているわけではなく、むしろ、こんな保険がいつまで続くのか、というような社会的な問題としての不安が支配的です。
とにかくECでは、しょっちゅう首脳会談やそれに類する会議があります。さすがに、そのことは新聞でも、皮肉られていました。大体毎月ある感じです。しかし、それだけ話し合っても、あまりコンセンサスは得られなく、むしろ段々意見の相違が浮きでてくる気がします。
ユ−ゴに関しても、会議の度にヨ−ロッパとしての対応策が異なってくるようです。
さて、失業問題ですが、まだ私としては、勉強不十分で、よく分からないことが多いのですが、オランダの失業保険はとても複雑で、日本とは相当違います。
いくつか、これまで気づいた重要な相違をあげると、まず、日本でみ「家族の相互扶養義務」が基本的な責任ですが、オランダでは、子どもに対してだけです。子どもといっても、18歳までですから、18歳までは扶養義務があるけれども、18歳になると、義務はないのです。もちろん、だから18歳になったら、すぐに放り出すこということではないのですが、大体、18歳になると家を出て、経済的に援助を受けることも少なくないけれども、とにかく基本的に自活するわけです。大学生になると、だから、国が生活費を保証するということです。
もちろん、国の補助は少ないので、十分生活できるわけではないから、授業料など十分収めることができないときに、当然まず親に請求がいくわけですが、拒否する親もいるそうです。その場合、裁判になることもあるとか。少ないでしょうが。
それから、日本では親に対する子どもの扶養義務もありますね。だから、老人になったら、なんらかの形で親の面倒を見ることは、日本人では常識です。
しかし、オランダではオランダは、すくなくとも「扶養」という概念での援助はしないそうです。もちろん、家族の絆が弱いわけではないので、頻繁に行き来します。これは前に書いたと思うのですが、日本のように、1年に数回というのではありません。しかし、それはあくまで、会うのであって、扶養しているのではないのです。親が病気しても、ひきとりません。自分で生活できなくなったら、老人ホ−ムに入るのです。それに対する暗い感情は、あまり感じません。全くないかどうかは、わかりませんが。
さて、このように、家族の相互扶養義務がない社会ですので、国家が生活の基本的な責任者であるわけです。それが、様々な保険制度になっています。
2番目の相違は、学校が就職紹介をどうもしないらしい、ということです。
日本では、新卒採用の場合は、ほとんどが、学校を通して就職すると思います。しかし、オランダでは学校は「教える」ところであって、職業紹介するところではないのです。したがって、オランダでは、職業紹介事業は、とてもさかんです。新聞は募集の山ですし、また町に職業紹介の事務所が、至る所にあります。
いろいろ考えると、日本で学校が「職業紹介機関」になっているのは、どうしてなのか、分からないのと、またその影響は非常に大きいと思います。失業という観点から考えると、日本の優位性は否定できないようにも思いますし。
さて、失業状態で、どのような社会保障があるかということですが、主に二つの制度があるようです。ひとつは、職業をもっていたのに、会社が潰れたとか、いろいろな理由でその職業を失ったという場合です。(失業法WW)それから、とにかく仕事がない場合です。
前者の場合は、日本の失業保険とよく似た制度で、一定期間、それまでの給料の何割かをもらえるということです。だいたい1年間70%くらいでしょうか。もちろん、働いた期間などによってことなるわけですが。
で、問題になっているのは、第二の場合です。オランダにはWAOとい法律があって、「労働不適応保険法」とでも訳すのでしょうか。そして、現在オランダでは、このWAOをめぐる問題が、国内問題としては、最大の問題になっています。というより、どうもいつでも、この問題が、最大の問題のひとつのようです。ただ、今年の始めに、ある企業が、この保険を悪用して、従業員を解雇したことが発覚して、国会に調査委員会が設けられ、ずっと討議していて、その過程で、保険を扱う省の次官が辞任させられるというような問題に発展して、とにかく経済・政治を巻き込んだ大問題なのです。
現在、この「不適応」という概念が、とても広く適応されているように思われます。
例えば、大学生が卒業して、さあ就職をしようか、という時に、日本なら4年生の時に就職活動をして、卒業と同時に働きはじめるわけですが、オランダでは、在学中は就職活動をしないので、卒業してからということになります。しかも卒業論文の提出時期は、年4回あるので、卒業時期も4回あるのです。実は今日もある学生の卒業ハ−ティ−で、これから出掛けるのですが。
卒業すれば、奨学金は打ち切りですから、当然失業状態になります。親は扶養しないので、国家が失業保険で面倒をみるわけです。この状態が、「不適応」状態ということなのです。就職したことがありませんから、「失業法」は関係ありません。
オランダは日本と全く異なって、自分のやりたくない仕事はしませんから、気に入る仕事がみつかるまで探すことになります。日本では、ジョブロ−テ−ションは当たり前ですから、特定の専門職を目指しているのでない限り、「自分にあった仕事をやるよりは、失業状態の方がいい」なんてことはないと思うのですが、オランダ人は平気なようです。
もっとも、「不適応」という概念は、病気や障害で働けなくなった状態を想定していたのです。しかし、それが、能力や適性にあった仕事ではない、というのも、この「不適応」として運用されているのです。その結果、別に無理して働く必要がない、というような人々が出てきました。もちろん、人間そんな状態は、通常の人にとって、誇りもない生活ですから、多くの人がそうしているわけではありませんし、また大学生に聞いても、失業保険を受けるよりは、多少嫌でも仕事をする、という人が多いのですが、とにかく、そういう人が、ちょくちょくいるらしいことも事実なのです。
もっと問題になるのは、外国人の場合です。オランダもドイツと同じように、外国人労働者がたくさんいます。移民に対しては比較的寛容な国ですから。そして、移民を認められれば、こうした保険の対象になるわけです。ところが、彼らの場合、言葉ができませんから、すぐに仕事があるというわけではないのです。もちろん、彼らのための特別の語学教室などは充実していますが。
また、職があったとしても、もちろんやり甲斐のある仕事というわけにはいかない。しかし、仕事をしなければ、保険を受けられる、ということになれば、保険の方がいい、ということになりますね。
つまり、職を得るまで時間がかかる、あるいは、あまり働こうとしない、というような外国人労働者がたくさんいることが、オランダ人たちの大きな反感をかっています。それが、外国人排撃運動にならないのは、オランダ人の国民性とか、となりのドイツでの外国人労働者問題の悲惨さを見ているので、注意しているとか、まだそれなりに経済的余裕がある(農業が比較的しっかりしている、天然ガスが出るなどの、優位性がある)などの理由でしょう。
さて、こうした失業保険制度が「充実」しているので、失業問題が、深刻な社会不安を生まないで済んでいるのですが、これも、経済がもっと悪化すればどうなるかわからない、とオランダ人はよく言います。そうした背景には、とにかく「税金の高さ」があります。普通に働いている人で、税金に不満のない人などいないのではないでしょうか。
消費税が18%であることは紹介しましたが、給料は大体半分になるそうです。だから、給料を貰ったときに50%は税金でとられ、使うときに18%は消費税で取られるのですから、給料の40%しか使えないということになります。給料が高い人はもっとです。 これは、とても大きな負担感です。
こうして、大きな負担と大きな福祉ということになっているわけですが、このことを今問題にする気はなく、むしろ、「家庭での相互扶養義務」や「あわない仕事はしないで、保険をうける権利」そして、「職業紹介機関としての学校」などの問題が、きちんと日本でも考えなければいけない、と思うわけです。
こうした概念をどう考えるか、については、また別の機会にします。長くなったので。