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(19) 93/06/05 06:25
オランダ通信50 刑務所事情
最近、オランダで最もホットな話題になっていることを紹介します。
それはずばり、刑務所の問題で、連日テレビで取り上げ、「今日のハ−グ(因みにオランダで書くと、VANDAAG DEN HAAGとなって、語呂合わせの名前になっています)では、国会の論議を長々と紹介しています。
未だ問題の全貌をつかんではいませんが、新聞、テレビ、話などで知りえたことを書きます。
まず問題は、刑務所が圧倒的に不足している、ということに発しています。昨日の新聞では、法務大臣は、正確な数字を発表したがらないようですが、大体7000人分が不足しているそうです。
不足している分はどうなっているのか、それは自宅待機ということです。事実上釈放と同じです。これでは、市民は安心して寝られるはずはありませんから、重大社会問題化するはずです。これに、オランダの刑務所は脱走しやすいことでも、問題になっているようで、3月に警官から銃を奪って殺人を犯した犯人が、脱走して、連日新聞テレビを賑わわせていました。3年くらい前には、マフィアの一員が、ヘリコプタ−で脱走したことが、2度あったそうです。
さて、テレビを見ていると、大いそぎで、カプセル型の独房を追加している様子が映し出されています。また刑務所の中も出てきます。そういうのを見ていて、まあ日本人として、非常に驚くことかいくつかあります。
まずどきもを抜かれたのは、囚人が「囚人」として、どうどうとインタビュ−に応じて、何を言っているのかはあまり聞き取れなかったけれども、(彼らの言葉は、どういう国ではくずれているので、分かりにくい)とにかく意見を述べているのです。刑務所が問題なのだから、とにかく当事者の意見を聞こうというのでしょうが、日本ではまず考えられないことです。顔など全然隠さないのですよ。
それから、独房といっても、日本ではワンル−ムマンションといった感じで、テレビやラジオ、ビデオなど、娯楽用具が、個室に揃っていて、まず退屈しないでしょう。丁度1週間前に、BBCの日本紹介番組で、警察と刑務所をやっていたので、比べると、とにかく違います。日本の刑務所は、やはりひたすら耐える、という感じですが、オランダの刑務所は、楽しむという感じです。多少不自由ではあるが、孤独な一人暮らしを楽しんで、刑期を送るというようなものです。
本当かどうかわかりませんが、あるオランダ人の説明によると、売春婦まで世話をしてくれて、無料なのだそうです。オランダは公認の売春施設がありますから、不思議ではないのかも知れないけど、ちょっと信じられない話ではあります。女はどうするのかは、残念ながら聞いてませんが。
日本人の感覚からすれば、あんな贅沢なものにするから、作るのにお金がかかって、足りなくなるのでは、と思うけど、今回の不足を補うために、独房をやめて、2人部屋にしようという案があって、それが、人権問題として、スム−ズには行かないようなのです。独房が不足で、有罪の人が自宅待機している方が、市民の人権問題だと思うけど。2人部屋にする、といっても、先述したように、大きめのりっぱな部屋なのですよ。
では何故そんなに刑務所が不足するのでしょうか。
オランダの犯罪は、とにかくドラッグと結びついているようです。前に書いたように、オランダのドラッグ対策は、ヨ−ロッパの中でもユニ−クなもので、要するに寛大なのです。従って、オランダにまずドラッグを持ち込み、そこからヨ−ロッパ各国に持っていく、というようなル−トが出来ることになります。もちろん、オランダでも完全に自由ではありませんから、頻繁に取締りがあります。それで、ドラッグに係わる犯人が、急増しているのです。しかし、それだけでは、特に凶悪犯人という感じのものではないので、安易に自宅待機などというのが、出てくるのでしょう。
それから、オランダの刑務所が楽だ、というので、各国の悪いことをした人が、まずオランダに逃げてくるそうです。そして、オランダで捕まって、オランダで裁かれるようにするのだそうです。あるいは、悪いことをしようと思うと、同じことするなら、オランダでやろう、捕まっても楽だ、というようなことでしょうか。正確なことは分からないけれども、そういう感じで、とにかくオランダが「わるい人」に人気があるそうです。今やEC、つまり、ほとんどのヨ−ロッパでは、何の規制もなく、入国・出国できますから、ドラッグの持ち込みなど、まったく簡単です。
唯一簡単ではない、イギリスでは、フランスとの海底トンネルで、簡単になることを恐れている、とある人が言ってました。
ところで、現在の先進国では、刑務所は、応報の施設というよりは、段々「教育の施設」になっています。日本では、まだ応報施設的要素が残っていると思うのですが、ヨ−ロッパ、特にオランダや北欧の刑務所は、完全に「教育施設」になっているように思われます。そういう意味で、この会議室の対象でもあると思うのです。
おそらく、刑期を終えて社会に出たときに、社会の中で普通に生活できるようにする、ということが、「教育刑」の考えでしょうが、日本では、それは「職業能力」の形成という感じなのに対して、どうもオランダでは、「人間性」ということになるのでしょうか。犯罪を犯すのは、職業をもって、社会の中に位置を占めることができないからだ、というのが、日本の考えであり、前提であるとすると、オランダでは、「人間性」が歪んでいるからだ、ということなのでしょうか。尤も、オランダでも、刑務所がとても快適であることは、すべてのオランダ人が共鳴していることではなく、やはり疑問に思っている人も多いようなので、このように単純化することはできないでしょうが。
現在のオランダでは、失業していても、国家からの生活費保障で十分に生活できるので、このようになるかも知れませんが、現在オランダでは、石油ショック後の日本のように、公務員削減、国庫補助削減というような政策が、どんどん進行しているので、いずれ生活保障費も削減されるだろうから、刑務所のあり方だって変化していくことは、当然予想されます。