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(19) 93/06/01 07:15

オランダ通信48 校舎など
432へのコメント

ヨ−ロッパの学校を見学した、というのは、見学旅行のようなものでしょうか。先生たちのよくやる。

百聞は一見に如ず、ですから、もちろん見ることの利点は、非常に大きいのですが、また危険も大きい、ということは、忘れるべきではありませんね。私が、とにかく文献的研究ではなく、生活的に見たいと思ったのは、そのためです。教育って、生活が分からないと、分からない部分が非常に大きいと思うのです。それで、1年間、子どもを実際に、現地の学校に入れてみて、観察してみようと思ったわけです。

 以前ワシントンポストの記者が、大学の教師と一緒に、日本の学校を3日間見学して、記事を送ったことがあります。その記事を読んだのですが、(もちろんニフティの記事サ−ビスで)私は笑ってしまいましたね。

 日本の子どもは非常に行儀がよく、授業中は実に静かで、教師の言うことに集中しており、しつけがよく行き届いている、というような趣旨の記事だったのです。大体、アメリカから記者がきて、大学の教師と一緒に授業を見れば、生徒だっておとなしくしていますよね。そんな風景を見て、日本の子どもを紹介していたら、とんでもない誤解を生むでしょう。

 外部から出掛けて行って、学校を見るというのは、常にそういう制約があるのですね。「校舎がきれい」という文字に、うっ!となりました。見学ツア−ともなれば、きれいな校舎の学校を業者が選ぶだろうな、という感じです。

 もちろんきれいな学校もたくさんありますが、そうでない学校も、それに劣らずありますよ。大体、ヨ−ロッパは建造物を100年200年使用するのですから、そんなにきれいな校舎ばかりのはずがありません。

 私の娘たちの学校は、とても貧相な校舎です。
 大体扇型をしていて、弧の部分を8つに区切って、8年までの教室にしてあり、紙のない要の外側がホ−ルになっていて、要の部分に校長室がある、という感じです。とても小さいもので、日本では幼稚園より小さい感じです。

 昨年9月にとても雨が多く、何度か非常に強い雨が降りました。どしゃぶり、というのは、オランダではあまりありません。しかし、その時はめずらしいどしゃぶりだったのです。次女のクラスでは、かなりの雨漏りがあって、バケツで雨を受けて、大変だったと娘は言ってました。貧相な建造物なので、雨は漏らなくても、屋根を打つ音がひどく、先生の言うことがあまり聞こえないということもあるようです。オランダの小学校は、平屋が少なくありません。

 1学級の人数が少ない、というのも、いくらでも例外があります。
 何度も書いたように、「選択の自由」があるわけですから、人気のある学校に、多くの生徒が集まるのは、理の当然です。
 私の娘は、2つの学校に断られたことは、既に書いたと思います。その理由は、まず「人数が多い」ということで、オランダ人ならまだなんとかなるが、日本人で、英語もオランダ語もできないのでは、コミュニケ−ションが難しい、という理由でした。

 確かに、その2つの学校は人数が多いのです。モンテッソ−リとイエナ・プランという学校なのですが、1学級に36、7人いると言ってました。これは完全に日本なみで、日本でも、これ以下の学級はいくらでもあります。

 少し詳しく説明すると、オランダでは、学校設立の自由もあるのですが、100名の生徒がいない場合は、補助金を受けることができません。自前でやればそれでもいいのですが、補助金を受ける、ということは、公立の学校と同じ条件でうけられるのですから、とても大きな要因なのです。そして、原則として、公立学校でも、100名以下だと廃校です。100名というと、1学年平均13名ということになりますね。つまり、1学年(1クラス)13名はいないと学校として、成り立たないというのが、通常です。しかし、13名とういのは、いかにも非能率的ですから、大体20名はいると思います。

 オランダの場合、ちょっとヨ−ロッパでも特殊なのは、オランダは人工的国家ですから、人口密度が高く、過疎地域は全く存在しません。文部省の最低目標は、4キロ圏には絶対に小学校がある、ということになっているようですが、それは100%満たされているそうです。そして、80%の地域では、2キロ以内に複数の小学校がある、従って、選択の自由は、実質的な意味をもっている、というのが、現状認識になっています。

 私の住んでいる村では、小学校は6ぐらいありますが、もちろんすべて通学可能です。オランダ人は大体自転車で通学するので、結構遠くても気にしません。他の村や市の学校でも、もちろん自由に入れます。だから、通学可能な小学校は、20位はあると思います。その中から、様々な情報を参考にして、学校を選択するわけです。いやだったら途中で変更も可能です。そういう意味では、生徒はとても自由を与えられています。(服装でとやかく言われることも、絶対にありません。制服は皆無ではないようですが、極めて例外的です。私は制服姿を見たことはありません。)

−−先生は授業だけで−−
 これも、厳密に言うと、正確ではないですね。
 基本は授業だけでしょう。

 しかし、次のような授業以外の義務もあるのです。

 まず体育は、学校の外の施設で行うのですが、引率義務があります。体育館やプ−ルまで引率して行って、また引率して帰ってくる。しかし、体育の授業は、体育の専門家が原則として行います。
 親との懇談会や面談が、年数回あります。私たちも出たので、別に報告します。これは、夜行うので、先生にとっては、かなりの負担になります。手当ては出ません。
 スポ−ツデ−・遠足・クリスマスなど、通常の時間とは異なる時間帯の行事にも、先生は大体出ています。
 これらは拒否できないと思います。

 ただ、日本と非常に違うのは、職務の内容がかなり明確になっていることでしょう。生活指導という考えは、確かにほとんど感じられません。生徒が悪いことをした場合、その責任は親にあるということで、教師が攻められることはないと思います。
 授業秩序を乱すような生徒がいた場合、通常の注意では指導できないと判断すれば、そういう生徒を特別に扱う「特別学校」や「施設」にお引き取りを願う、というやり方です。
 だから、そういう意味では、「楽」ですね。とにかく日本の教師は大変ですよ。力量も当然日本の方が高いでしょう。

 それから、もちろん「決められたこと以外しない」などということはなく、ごく常識的な人間的行為、あるいは指導はいくらでもあります。生徒の人間的な悩みを聞いたり、忠告をしたりすることは当然あるでしょう。

 前小学校によっては、ドラッグを売りにくる、ということを書きましたが、そういう場合、教師は当然でていって、追い払うと思います。しかし、それは職務ではなく、大人としての責任感から、あるいは子どもにドラッグなどさせたくない、という感情からするのであって、放置したからといって、非難されたりはしないはずです。

−−タバコは校舎内で吸わないと生徒が申し合わせた−−ということは、ちょっとよく理解できないので、もう少し説明してくれませんか。そこでは、学校として校舎内のタバコを許しているのに、生徒が自発的に禁止したということですか。それとも学校としても禁止しているのに、守られないから、ある生徒がリ−ダ−シップをとって、申しあわせたということですか。

 ドイツやフランスではどうか知りませんが、オランダでは校舎内で煙草を吸うことは、ほとんどないと思いますよ。オランダの学校は道路から、授業風景が見える場合が多いのですが、私は授業中に煙草を吸っている生徒を見たことはありません。
 しかし、校舎外では、まったく自由に吸っていて、私としてはとてもいい感じをもてません。もちろん大人が注意することは、まずないでしょう。
 つまり、校舎内、あるいは授業中に煙草を禁止するのは、あくまで、教育の秩序維持のためであって、個人の指導上の問題ではないわけです。そのような最低限の秩序維持のための規則・指導内容を決める権限を、教師はきちんともっていると思います。

それから法律文を確認したわけではありませんが、聞いたところでは、オランダでは子どもの喫煙は禁止されているわけではないそうです。だから、小学生でも法的にはかまわないということです。

 教師の暴力が裁判沙汰になることは、オランダでも同じだそうです。だから、教師が生徒をなぐることは、ほとんどないそうです。ちなみに、親が子どもをなぐっても裁判になるそうですから、なぐることは犯罪、ということですね。通常親が子どもをなぐっても、わからないわけですが、ヨ−ロッパの家は長屋が多いので、となりの人が通報したりすると、親と言えども逮捕されてしまいます。
 ついでに付け加えると、夜子どもだけにして、親が外出することも、保護義務の放棄として罪になるそうです。だから、これも通報されると、警察沙汰になります。欧米でベビ−シッタ−が多いのは、そういう事情もあるようです。
 
 それで、生徒の教師に対する暴力はどうか、というと、いろいろな人に聞いてみましたが、これは少ないがある、ということでした。否定した人はいませんでした。そういう場合、どう対応するか、というのは、教師や学校で違うのではないでしょうか。警察に訴える、親と話し合う、退学にする、等々。

 ただ日本と違うのは、生徒が希望して、その学校に入学した、ということがあるので、日本とは、生徒の不満の爆発状況は大分違うのです。それは、絶対に間違いありません。だから、問題は、選んだ入ったものの、成績が振るわないので、もっと下の学校に転校させられた場合でしょう。そういう吹き溜まりの学校になってしまうと、やはり問題は大きいのではないでしょうか。

 それから、ヨ−ロッパ全体がそうですが、オランダも「マイノリティ」の教育問題がひじょうに大きいのです。こうした分野では、マイノリティ問題を抜きでは考えられません。これは、別に書くことにします。