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(19) 93/05/15 05:40

オランダ通信44 麻薬問題
 私がオランダに興味を持った要因の一つに麻薬問題があります。数年前の週間ポストに大きくグラビア記事で、オランダの麻薬政策を扱ったことがありました。この記事で私はオランダという国家の、非常にユニ−クな面を知ったのです。もっともこの記事は、厳密に言うと、不正確な面もあることが、実際にオランダに来てみて分かりましたが。

 その記事は次のようなものでした。

 オランダはユニ−クな麻薬政策をとっている国で、国家が麻薬をある程度公認して管理しているというものでした。毎日決まった時間と場所に、国家の麻薬バスがやってきて、希望者に麻薬を専門家が注射してくれ、それが無料である、というのです。
 始めはこの破天荒な政策に、多くの国が批判的な態度をとったのが、段々と効果が現れてきているので、次第に指示する声も出始め、同じような政策をとる国も出てきた、という記事でした。

 これは、私にとっては、本当ならば、麻薬問題の解決法として、ある程度意味があると思われました。というのは、麻薬の問題というのは、3つあるわけです。
 本人の健康問題・犯罪組織が扱うことによる犯罪組織の増大・高額や麻薬を買うための犯罪です。そして、健康問題には、麻薬そのものによる健康問題とエイズのふたつがあります。

 もしオランダ的方法が有効であれば、本人の麻薬による健康問題以外は解決できることになるわけです。専門家の注射なので、エイズは問題ない。無料なので、犯罪を犯して費用を捻出する必要がない。犯罪組織は売ることができない、ということです。

 しかし、オランダに来て、いくつかの不正確な点に気づいたというのはこうです。

 私たちがオランダに来て、1月くらいたったとき、ロッテルダムで大きな麻薬をめぐる騒ぎがありました。どういうことか分からなかったのですが、前からいる日本人やオランダ人に聞いて、ロッテルダムの駅に移民で麻薬をやっている人が、ホ−ムに居つくようになり、社会問題になっていたが、保守的な海軍の人々が不愉快に思って、「清掃」にやってきたのです。そこで騒ぎが起きそうになったところ、警察が介入を始めたのですが、大体誰が警察に拘束されるべきか、という点で、意見がばらばらになってしまったのです。 海軍の人達は、べつに問題のない人達で、麻薬を撲滅するため、という正義があるが、しかし、実際にやろうとしていることは、合法的とは言いがたい「清掃」です。移民たちは被害者的ではあるが、麻薬常習者である、というような状態で、しばらく喧々がくがくやっていました。

 つまり、オランダの麻薬政策は、かならずしも国民的な合意もなかったということがわかりました。そして、麻薬バスが走っている、というのはオランダ国家全体ではなく、ミトレヒトなど一部の都市であることも、その時知りました。もちろん、週間ボストの記事は、完全な作り物ではなく、ユトレヒトなどに関しては、その通りだったわけです。
 
 それから、もう一つの問題は、段々外国の理解が得られてきたとうい点については、オランダは日常的に、今でも麻薬政策をめぐって、国連や隣国から批判されているということです。オランダの新聞を読んでいると、とにかく頻繁に、どこどこの国が、オランダの麻薬政策を批判しているので、政府の誰々が反論した、というような記事がでています。 麻薬の問題を考えると、とにかく難しい問題にぶつかります。

 オランダの政策をまとめると、オランダは麻薬をソフトドラッグ(大麻など)とハ−ドドラッグに区分し、ソフトドラッグに関しては、ある程度黙認し、ユトレヒトのようなやり方を認めているわけです。しかし、ハ−ドドラッグに関しては、非常に厳しい取締りをしており、これもコ−ヒ−ショップが手入れされたというような報道がよくあります。

 明確にこのようにしているのは、ECではオランダくらいのようで、特にフランスとの間で、問題が頻発しています。フランスではソフトも含めて禁止ですから、一端オランダに持ち込んで、国境検査のなくなった現在、簡単にフランスに持ち込めるということで、とてもこまるではないか、とオランダに抗議するわけです。

 問題を複雑にしているのは、イスラム問題と関連しているからだと私は思います。イスラム圏では、大麻などは麻薬ではなく、禁止の対象にはあまりなっていないそうです。しかし、アルコ−ルが逆に多く禁止されている。
 だからヨ−ロッパなどと、逆になっているのです。

 よく知られているように、1960年代から石油ショックまでの好況期に、ヨ−ロッパはトルコなどのイスラム圏から、大量の労働力を移入しました。彼らが故郷の習慣を持ち込むことは、いうまでもありません。

 「郷に入れば郷に従え」というモラルは、世界共通のモラルではなく、一部の人々のモラルに過ぎないようです。大体、イスラムの人達には、こうしたモラルは希薄なようで、自分たちの習俗を、移民先でも維持しようとします。彼らにとっては、大麻は麻薬ではないのですから、当然犯罪意識などもたずに、吸引するでしょう。
 しかし、ヨ−ロッパではそれは犯罪だから、別の犯罪と、当然結びつくことになる。代表的な事例が、自転車泥棒です。自転車泥棒はオランダ人の趣味と言われていますが、これは麻薬の費用を稼ぐためのものと言われています。

 大体誰に聞いても、オランダの若者の最大の問題はドラッグだ、と言います。アメリカのように、高校生が学校内で公然とドラッグを売っているということはないようですが、学校の近くに売りにきて、買う子どももいる、ということは言われています。
 大学生のほとんどは、一度は経験しているということも言われていますが、実際にはよくわかりません。

 EC内部でも、国家によって基準が違うことが、次第に問題を顕在化させている、とうい一つの事例です。また宗教的な相違もまた、大きな要素になっています。

 こういう点では、島国であることは、日本にとって本当に幸運な要素だと思います。フランスは国境警備を厳重にすると言っているそうですが、そんなことは、不可能でしょう。EC内部では、国境での検問などありませんから。