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(19) 93/05/03 04:54      コメント数:1

オランダ通信39 わが子教育事情2
 今ではすぽっくさんは、もう読んでいないのでしょうが、読んでいれば、すぽっくさんに役に立つようなことが、今回の話題です。
 
 前回書いたように、子どもを連れてきて、教育の実験的な観察をしようと考えたわけです。その最も主要な目的は、子どもがどのようにして、外国の子どもたちの中でやっていくか、その場合の障害、困難、そして、また方法です。

 私の子どもは、来たときには11歳と9歳で、来て直ぐに12歳と10歳になりました。もちろん英語もオランダ語も話すことができません。まったく外国語を知らない状態でした。親だっておぼつかない状態なのですから。

 このために、始めの2校には、「人数が多すぎる上に、コミュニケ−ションできないのでは、無理だ」ということで、小学校に断られてしまいました。この間の事情については、また別の機会に書きます。

 とにかく、歩いて10分のところにある公立小学校に入ることができました。二人とも言葉ができないので、ひとつずつ下のクラスに入ることになりました。長女はグル−プ7で、非常に若い男の教師(ペッピング)、次女はグル−プ5で年配の女の教師(ビルスマ)でした。

 このふたりの教師は、まず言葉を教えなければならないわけですが、とても興味深いことに、全くことなった方法で、オランダ語を教えました。
ペッピングは、長女をホ−ルに出してしまい、そこで一人でテ−プを聴くように指示しました。長女はひとりで、テ−プを聴く毎日が始まりました。もちろん体育や音楽などのように、言葉が関係ない科目は、一緒です。ひとりで聴いているときは、時々もちろんペッピングがやってきて、読ませて発音を矯正するということをしました。
 長女はこのことをとても嫌がり、分からなくてもいいから、教室にいたいようでした。ひとりにされるのが嫌なのです。
 はじめはただそれだけだったのですが、その内に、そのテ−プを家に持ちかえるようになりましたが、それ程、家できちんと聴くというようなことはなかったようです。何しろ、日本の学校がとても楽しかったのを、無理に連れてきたので、精神的にも落ち込んで、日本を懐かしがる状態だったので、近所の子どもと遊ぶことばかり、家では考えていました。

 これに対してビルスマは、次女を教室から出さず、簡単なテキストを使い、読みを教えるとともに、絵を見せて、発音し、意味をわかるようにしました。
 犬の絵を見せて、ホントと発音し、ホントが犬であることをわからせる、という方法です。ビルスマはこういう方法ですから、次女のためにかなりの時間をとり、その間、他の子どもたちは自習することになります。もちろん課題を出してはいますが、それほどきちんと自習するわけではありません。

 とりあえずの反応は、長女は一人で教室から出され、テ−プを聴くという作業がとても嫌で、学校に行くこと自体を嫌がりました。とにかくクラスに入ったといっても、一緒にやる授業は、芸術や体育と算数だけなのですから、まあ嫌だろうと思っていました。しかし、それなりの方針があるのだろうから、とだまっていました。そして、次女の方は、クラスから離れることもなく、一緒なので、(性格的なものもあるけれども)毎日嫌がらずに行っていました。
 ところが、数カ月後の状態は、全く逆になってしまったのです。長女はかなりオランダ語が上達し、次女の方は上達が遅く、あまりまだ十分にコミュニケ−トできないので、長女の方が、学校に対して積極的になっています。(もっとも次女の方はバレ−に生き甲斐をもっているので、学校よりバレ−学校に積極的ということがありますが。バレ−に関しては、別の機会に書きます。)

 どうしてこうした差が生じたか、というと、やはりペッピングの指導法が良かったのだと思います。つまり、言葉を習得するためには、とにかく先ず聞き取る力をつけるのだ、という明確な方針で、徹底的にテ−プを聞かせ、意味を十分に分からなくともいいのだ、と割り切って、耳の訓練をさせたのです。
 ビルスマの方は、意味と一緒に理解させようとしました。しかし、耳の訓練を十分にしなかったので、嫌がらずにやった割りには、オランダ語の上達は遅かったのです。

 すぽっくさんとの論争を覚えている人は、ここで、私の言いたかったことが、もう少し理解できると思います。
 
 しろくまさんが、とても興味深い経験を紹介していましたが、それに対応させていうと、ビルスマが、例えば「犬」の絵をみせて、「HOND」と言って、次女に理解させようとしたとき、次女は、必ず、「犬」の絵をみて、まず日本語で「いぬ」を考え、それから、「ホント」という音を頭に入れようとしたに違いありません。
 しろくまさんは、中学2年生でありながら、この回路の非有効性に気づいて、自分で中間の日本語部分を追い出す作業をしたわけですが、通常は、そういう作業をほとんどの人がしないわけです。
 したがって、「犬の絵」→「hond」という回路ができずないので、いつまでたっても、上達しない、それが、現在の日本の学校の英語教育の実情でしょう。

 ペッピングは途中に日本語が入り込む余地を始めから封じるような方法を取った、と考えられます。長女は最初意味も全くわからないし、聞き取れないし、ということで、反発をもっていたのですが、その内に聞き取れるようになり、聞き取れるようになってから、少しずつ意味を教えるようになっていき、友達なども積極的に教えてくれるようになって、オランダ語での会話ができるようになっていったのです。

 大切なことは、この聞き取れる状態になると、1、2回言ってもらうと、直ぐに覚えるけれども、聞き取り力がないと、何度言っても直ぐに忘れてしまうということです。

 ただそうは言っても、まだ教科のオランダ語についていってるわけではなく、日常会話ができるようになった程度であることも事実ですが。それ以上の能力については、また別の次元の方法が必要でしょう。