393/628 GEC01342 WAKEI オランダ通信35 教育事情1
(19) 93/04/24 06:40
オランダ通信35 我が子の教育事情1
オランダに行こうと思ったのは、3年くらい前ですが、日本にはオランダ教育の研究者というのは、本当に少ないので、事情がよく分からず、こちらに来るだけでも随分と苦労しました。オランダで1年間研究するには、どういう身分になるのか、ということすら、よく分からなかったのです。オランダ大使館に行っても分からないのだから、話になりません。大使館では、「学生」として行く形態は、もちろん分かっていますが、「教員」が行くことに関しては、さっぱり要領をえないので、こまってしまいました。オランダの大学に留学した人がいても、大抵オランダ政府の奨学金で行っているので、私のようにサバティカルで行く場合とは、ビザの取得の仕方が全く異なるので、参考にならない。
それでいろいろあって、現在の日本学科にお世話になるというところまで、こぎ着けたわけですが、そうすると、学問的な教育学研究ということが中々できそうにないし、またいろいろと分かってくるうちに、オランダの教育学というのは、大体は教育方法論と教育心理学で、私のような社会科学的な教育学というのは、まず無いに等しいということに気づきました。もっとも階級性に関する研究は随分あるということが、こちらに来てわかりました。坂本さんの好きな「再生産論」的な研究ですね。でも「入試」がないから、「入試問題」などないわけで、そういう意味では、日本的な「教育行政学」問題が存在しないので、「教育行政学」がないとも考えられます。
そこで、ある意味では仕方なしの選択だったのですが、自分の子どもを実験材料にして、研究しようと思い立って、こちらに来たのです。私は大学で「国際教育論」なる科目の担当者なので、そういう意味で、これはまたとない研究機会です。
これまで、そのことは、ほとんど書きませんでしたが、いよいよオランダ滞在も終わりに近くなってきたので、帰国したら、まとめる必要があるし、その予備的考察として、いろいろあった「子どもをめぐる」教育事情を、これから何度か紹介していこうと思います。
日本の教育の方が、ずっと包括的なので、オランダにある教育事情は、たいてい日本二もありますが、日本にはほとんどないけど、オランダでは必修になっているある教育について今回は、紹介します。
オランダでは体育は、小学校だけのようですが、いわゆる「社会体育」です。体育の授業時間は、教師は子どもを引率して、体育施設などに連れていくだけです。体育施設には専門の体育の指導員がいて、授業をするわけです。もっとも、これは完全な分業ではなく、教師の中には体育をする人もいます。現に私の長女の担任教師は、体育の授業をしています。担任をしている長女のクラス(グル−プ7)と下のグル−プ6です。
すべてかどうかは分かりませんが、中学では学校ごとのような気がします。少なくとも私の知っている中学は大体体育館があって、そこで体育をしていると思われます。ただ、日本と違うのは、部活などはないので、夜は曜日を決めて、市民に開放されています。
さて今回のオランダのみにあるというのは、「洋服を来て泳ぐ」という授業です。グル−プ4と5が多分水泳が必修になっています。次女はグル−プ5なので、毎週体育2時間の内、1時間は水泳です。つまり、温水プ−ルを昼間は小学校の授業に使い、夜は市民が使うという形です。冬はそれでも大変で、往復は徒歩で15分くらいで、雨が降ると親の何人かが車で応援するのですが、天気のいい日は徒歩です。今年の一番寒かったときには、子どもたちの髪が凍ったと言ってました。
周知のように、オランダは運河の国です。国中至るところ、本当に至るところに運河があります。大中小の運河がどこにでもあって、問題は大きな運河には、たまに車が落ちるのです。大きな運河は自動車道路が平行して走っていることが多く、不注意運転をすると、運河に落ちそうな気分にいつもなります。それで、オランダ国民は、運河に落ちても泳いで岸に辿り着けなければならないということで、小学校の必修の授業になっているのです。
年に数回まず授業があって、終了試験まであります。授業の前には、当然予告があって、余分の服を持ってくるようにというお知らせを貰ってきます。その授業のときには、よく親が見に来て写真などを取っています。そういう風景をテレビでも放送していました。 服をきたまま、プ−ルに飛び込む。それもいろいろな姿勢でやります。つまり、どういう姿勢で落ちても対応できるためということなのでしょう。
それから、服を着たまま泳ぐのです。泳ぎ方は何でもいいようです。そこは、あくまで事故に備えてですから、クロ−ルとか、平泳ぎというようなうるさいことは一切言いません。でも、一番楽な顔をつけない平泳ぎで、大体やるようです。
一通り授業があると、試験があります。それも2回。姿勢や距離をきちんとこなせるかどうかが試験されます。まだ修了証なるものはもらってこないので、証明書まで発行するかどうかはわかりません。
水泳の授業はとても丁寧なもので、専門の指導員が教えて、しかも2年間毎週あるので、大体だれでも泳げるようになるようです。
日本の娘の学校では、学校の水泳の授業で泳げるようになる生徒は、ほとんどいないという印象です。スイミングスク−ルに入っている生徒は始めから泳げるけど、そうでない生徒は最後まで泳げない、というのが実情で、日本では一年の内ほんの僅かな時期で、しかも天候に左右されるので、水泳の授業に関しては、オランダの方が圧倒的に優れています。それ以外の体育の授業は、まあ日本の方がまともだと思います。というより、オランダの体育は、普段の授業は、遊びの延長のようなもので、汗を流すというようなものではないようです。
オランダの学校は3時30分までなので、プ−ルはその後は市民へ開放され、夜もやっているので、グル−プ6以上の生徒も、一年中泳げます。150円くらいの値段ですから、経済的にも負担はないし。
さて、肝心の生徒の反応ですが、娘は始め非常に嫌がっていました。大体服を着て泳ぐなどということは、日本では考えられないわけです。それに、皆一斉にやることは少なく、きちんとした指導が必要ですから、グル−プに分けて、日を変えて順番にやっていくのです。たまたま娘の場合は、1人でやるかも知れないというので、とても嫌がっていたのですが、帰ってきたらご機嫌で、あんなに面白いものはない、毎週やりたい、なんて言うのです。服を着たまま、後ろ向きにプ−ルに落ちるというような動作は、答えられない程面白いそうです。