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(19) 93/03/24 06:08

オランダ通信27 

 今回は、ちょっと変わった題材で、当世結婚事情です。
 オランダでは、非常に離婚が増えているそうです。学生と話をしても、親が離婚しているという例は、少なくありません。
 といっても、大体の雰囲気としては、老人たちはそれほど多くないようです。40代、50代が非常に多いという感じです。何故か、ということと、それに対して、若者たちがどう対処しているか、ということです。

 若者たちは、明確に自分たちの親の世代の離婚をみて、特殊な対処をしているように思われます。それは「試験婚」と言ったらよいでしょうか。
 つまり、好きになったら、結婚するのではなく、まず「同居」します。そして、3ねんくらい一緒に住むのです。大丈夫やっていける、とお互いに感じれば、結婚する、またそこまで決心がつかなくても、子どもができれば、結婚する、というような慣習ができつつあるようです。したがって、大学生でもこうした「同居」がたくさんあります。(未婚のまま子どもをもつということは、非常に少ないそうです。)

 非常に興味深いことは、少なくとも行政的にこの事実が容認されていることです。行政的な文書には、日本では「配偶者」と書いてある部分には、「配偶者またはパ−トナ−」と書いてあります。パ−トナ−が、結婚していないけれども、一緒に住んでいる者を指すことは間違いありません。私のところに、社会保険の調査書類が来たのですが、「パ−トナ−が都合で外国に行くような場合、あるいは帰国する場合、あなたはどうしますか。一緒に行く・後で行く・残る」というような項目がありました。
 だから、一時的に一緒に住んでいる状態を前提にしたもので、そういう場合でも、きちんと社会保険の対象になるわけです。

 私の感覚では、こちらでは学生は不当に優遇されていて、もし学生同志が「同居」していると、政府から住宅資金の援助があります。私のオランダ語の講義案を見てくれた学生は、通常900ギルダ−の家を、500ギルダ−だけ払っていて、後は政府の援助だ、と言ってました。政府による「同棲の勧め」みたいなもんです。

 はるか昔よんだトマス・モアの「ユ−トピア」に、たしか「試験結婚」なる話が出てきたと思います。結婚する場合は、一年くらい試験期間をおいて、その間、さまざまな面から互いに調べ、確か体を調べるなんていうのもあったのでは。

 オランダの形態は、(他のヨ−ロッパがそうかは知りませんが)まさしく「ユ−トピア」の現代版という感じです。ただ、これで関係がこわれた場合、どちらが多く傷つくかというような話は、まだわかりません。

 何故、40代50代で離婚が急速に増えたのか。
 もちろんそこまでよく分からないのですが、まず説明として出てくるのは、宗教的な束縛が弱くなったということです。

 オランダは、有名な事実ですが、以前は、「柱社会」という宗教的縦割り社会だったのです。つまり、社会のあらゆることがらが、すべて宗派的な組織として揃っていたのだそうです。出産から、学校、社交、新聞等のメディアなど、(企業は違うと思う)宗派ごとにあって、自分の宗派の病院に行き、学校に通い、新聞を取り、娯楽をするということです。オランダは、周知のように、カトリックのスペインから多くの犠牲を払って、新教徒が独立して作った国です。だからカトリックもプロテスタントも両方いる、そこをどのように共存していくか、ということで、「棲み分け」を選択して社会を作ってきたのです。(新教徒が作ったので、新教徒ばかりというのは、私も誤解していたところで、カトリックが支配していたのだから、当然独立してもカトリック教徒はたくさんいるのです。)
 結婚ももちろん同じ宗派の内で、昔は多く行われていました。

 「柱」というのは、この宗派毎の縦割りの組織をいうのです。

 しかし、60年代から、こうした「柱」が急速に解体しはじめたようです。宗派が違っても結婚する、自分の宗派でない学校に子どもを通わせる、教会に行く人の数が急速に減少する、等です。

 オランダは誰でも知っているように、海を埋め立てて作った国です。神は地球を作ったが、オランダはオランダ人が作った、という言葉は、オランダ人のもっとも好むことばの一つです。つまり、人為的な国なのです。だから、日本のような農業社会にある、長い間に形成され、したがって自然なもののように意識される「共同体」はオランダ社会にはなかったのではないか。だから、「共同体」が通常担う社会の紐帯は、宗派的「柱」が担ってきた、それが崩壊して、したがって家庭の紐帯も崩壊して、離婚が増大したと、まず通常考えられているようです。

 しかし、なぜ「柱」が崩壊したか、という原因が、その奥にあるはずで、その原因になると様々な人が、さまざまなことを言います。

 そこはまだ私としては、よく整理できてないので、いずれまた書くことにします。

 それで、若者たちの新しい形態について、大人たちはどう思っているのでしょうか。まだ離婚が多くなかった老人世代、70代の人達は、当然快く思っていないようです。しかし、離婚世代たちは、自分たちの世代の問題があるので、仕方ないことだ、と必要悪のように受け取っているように思われます。

 当人たちは親世代に批判意識があるでしょうから、結婚に対する違う準備として、実験的な営みをしているわけですが、彼らが結婚して、20年たったときに、どうなるか、非常に興味深いものがあります。