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(19) 93/01/06 05:11      コメント数:1

オランダ通信11
英語教育について
 英語教育についての紹介をざっと読みました。
 よく分からないのですが、「すぽっく」さんはこの講義をされている当人なのでしょうか。それとも聴講している人なのでしょうか。それによって、コメントの仕方が異なってくるように思われますが、単に著作の紹介ではないようだし、ちょっと戸惑っています。もし当人ではないとすると、当人の了解があるのでしょうか。この会議室では「著作権」ついては、時々論議になるし、きちんとしていこうという姿勢になっているので、そこははっきりさせてほしいように思います。

 率直にいって、こういう勉強をした学生が、英語教師になって、役にたつのでしょうか。もっもとこういう部分だけではなく、もっと具体的な英語教育の分析があってのことなのだと思いますが、紹介された部分では、あまりに抽象的な論理展開で、実際の英語教育の分析なのかな、と疑問に思われてしまうのです。

 といっても、全く無責任なので、少しずつ私にも興味がわく範囲で、感想めいたものを書き送ります。

 まず「序」みたいなところで、英語を学ぶ3つの立場の違いが分けられています。しかし、私は4つある、という感じで、オランダに来たので異論を唱えたいのです。

 私がオランダに来たのは、もちろん教育の研究のためなのですが、外国語教育もその一つとして関心をもっています。そして、その関心の中に、オランダにおける外国語教育にとても興味をもったのです。

 この3つの分類(母語・第2母語・外国語)に無理に従えば、オランダの英語教育は、外国語の範疇に入るでしょう。しかし、オランダにおける英語の位置というのは、どうも外国語というのとは違うのです。もちろん母語でも、第2母語でもありません。従ってこの3つの分類は、今後の外国語教育を論じるには、ちょっと妥当でないという感じです。 よく知られたことですが、ヨ−ロッパで英語が(イギリス以外に)最も通じるのは、オランダです。オランダでは英語を話せれば、生活はほとんど支障なくできます。店でも店員の全員が英語を話せることはありませんが、必ず話せる人がいます。駅で切符を買うにしても、道を聞くにしても、英語で聞いて、私は英語がだめなので、と断られることはまだ経験していません。
 子どもでもかなり英語を話します。
 ではこの論文の第2母語なのか、というと、ここでは植民地のために、国語が形成されなかったために、英語を公用語として採用した旧植民地国の英語を前提にしていますから、全く事情が異なります。
 
 ところで、オランダに来るまえは、本当にオランダ人のほとんとすべてが、英語を自由に操れるのかと思っていたのですが、それ程ではありません。というより、年齢的にそれぞれ程度が異なっているように感じます。
 老人は、知的な職業に付いている人以外は、あまり英語を話せません。
 中年の人も同様ですが、話す範囲はずっと広範囲になります。
 20代ですと、学校時代勉強がいかにも嫌いだった、という雰囲気の人以外は、英語を話す感じです。
 そして、特徴的なのは、10代後半の勉強の出来る生徒たちは、まったく自然な英語を話すのです。これはネイティブではないか、と思われる程です。私の子どもたちのオランダ語の勉強を見てもらっている高校生がいるのですが、彼女の英語を聞いていると、まったく淀みがないのです。したがって現在の若者が中年になる頃には、本当にオランダは国民が「バイリンガル国民」になるような感じがするのです。もちろんスイスのように、国語がいくつかあるというわけではなく、オランダ語という明確な国語が存在してなおそうなのですから、やはり非常に新しい「言語現象」であると私は思うのです。

 では何故、若い人達が自然な英語を習得したのか、ということになりますが、これは教育制度とマスコミがまず要因として考えられるでしょう。
 オランダは1985年に小学校の法律が変わり、それまでの幼稚園と小学校が統合されて、「基礎学校」という8年制の学校になり、その7、8年生、日本でいうと小学校の5、6年生から英語が必修になったのです。オランダは中等学校ははっきりとコ−スに別れるので、以前はあまり英語をしない学校もあったわけですが、共通の基礎学校で英語が必修になったので、それこそ全員が英語を9、10歳から勉強するようになったわけです。この影響はとても大きなものがあるでしょう。
 それから、テレビの影響です。
 前にも書いたと思いますが、オランダのテレビは、アンテナだけで見ているひとはほとんどなく、ケ−ブルテレビが発達しています。そこでは、アメリカ(CNN)、イギリスBBC2局、オランダ4局、ベルギ−2局、ドイツ3局、フランス1局、その他スポ−ツ、音楽、映画専門、そして、随時いろいろな局や国の放送を選んでするのが各1局あります。ここで注意してほしいのは、オランダの放送は、昼間はやっていません。やっていてもわずかです。そして、夕方から始まっても、番組の3分の1は英語番組なのです。BBCはNHKとほとんど同じだと思ってください。もちろん全部英語です。CNNはよく知られているように、24時間やっています。全部英語。
 こう考えると、実はオランダでテレビを見ていると、英語でやっている比重が凄く多いのです。オランダの放送は、吹き替えというのをしません。全部字幕です。(逆にドイツの放送は全部吹き替えで、字幕は見たことがありません)
 オランダ人は実によく、テレビを見ます。日本と同じテレビ中毒という人々がたくさんいて、子どもも早くも感染している感じがします。でも、そうして英語を自然に習得していくのです。

 だから、すぽっくさんの紹介した文章の分類は、やはり大切な視点を落としていると思うわけです。
 ところで、ここで言いたいことは、それだけではありません。
 ひとつは、日本でも衛星放送が始まり、日常的に英語がテレビで流れるようになって、少しずつ日本人の英語力は、上昇していくだろうということと、もうひとつは、テレビのあり方と、その影響の違いについてです。

 まず後者。
 多くの日本人は、英語の番組を字幕で見ているとき、英語が耳に入っているでしょうか。私など、恥ずかしいことに、字幕を追っているときには、英語は耳を素通りです。
 ところが、オランダ人は子どもでも、オランダ語の字幕を見ながら、きちんと英語を聞き、英語を覚えていくのです。
 どうしてそういう違いがあるのか。
 私はここに日本の英語教育が克服しなければならない最も重要な問題があると思うのです。そういう点では、すぽっくさんの紹介した文章は、まったく現実離れした空論に満ちている、と言わざるをえません。
 で、そこのところは、次回に。