デンマークの学校  2003.4.26

デンマークの教育制度についてだんだん分かってきたのですが、オランダと同様、かなり戦後制度の変更があったようで、正確に理解するのは、まだまだです。
 オランダの学校よりはずっと日本的で、デンマークというのは、日本にかなり似た国なのではないか、という印象をもってきています。
 似ているというのは、小さな学校をたくさん作るのがオランダ流だとすると、こちらは比較的大きな学校になっています。
 まず日本と違うのは、義務教育学校はひとつにまとまっていることで、ようするに日本でいうと小学校と中学校はひとつの学校で、「国民学校」とでも訳す学校になっていて、それで大きな学校にならざるをえないのです。
 またオランダと違って学校選択の自由はなく、公立学校は住居によって通学学校が決まっています。ただし、少なくとも学校の教室等の条件で余裕があれば、変更を申請したときに、ほぼ認められるそうですが、余裕がないときには、断ってもよいという規則になっているそうです。オランダでは通学区域という概念がそもそもないので、隣の市だろうが、気にいればどこの学校でも選択できるわけですが、デンマークでは、変更を願い出ても隣の市の場合には認められないということです。
 こうした点は日本とオランダの中間的なところなのでしょうが、ただ違うのは、公立学校に気に入った学校がない場合には、容易に私立学校を設立できることで、かなり小さな学校でも責任をもって運営する大人がいれば、かなりの部分が公費によって補助されます。もっとも、オランダのように人数の条件はないので、全額の公費補助ではありません。
 今いる学校の先生の一人も、自分の子どものために私立学校を設立したそうです。
 そうするとかなりの人数が私立に行っているかというと、そうでもなく、多くが公立で私立は2割程度ということで、公立学校への信頼度が高いという説明になっています。もっとも、現状維持的な発想が強いのがデンマークの特徴とも思えるので、少し前までの日本と同じで、それほど学校への期待感がない代わりに、学校への不満も少なく、これが当たり前と思っているということかも知れません。

 今の学校の授業の一環としてなのですが、近くの公立国民学校を訪問する機会がありました。
 ヨーロッパはどこでもそうなのですが、水曜日は午前中しか授業がありません。それで午後にかかるような時間帯になってしまったので、上級学年が特別に残ってくれて、説明などしてくれたわけですが、その点では普段の学校の雰囲気は窺い知ることが少々難しかったので、そこは残念でした。ただ、日本と非常に違うなあ、と思ったことがいくつかありました。
 それはなんといっても、校舎の廊下の壁に一面絵が描いてあることで、それが非常にすばらしいのです。デンマークはデザインで有名な国なのですが、そうした優れたデザイン感覚がこうして形成されるのか、と思いました。ただ、あとで日本人たちに聞くとあれは日本にでもあるというのですが、どうでしょう。 
 私は日本ではあのように、廊下の壁に大きく、かつ長い絵画を描く学校を見たことがありません。けっこういろいろな学校を訪問しましたが。
 次に男女平等が徹底していることで、料理や裁縫に関する授業を男子が非常に真剣に受けていました。というより、男子の方がずっと多い人数でやっていたのが印象的でした。

 ただ、やはりヨーロッパの学校だと思うのは、給食とか生徒全員による校舎全体の掃除などはなく、また校庭もすこしはありますが、そこで体育をやるというようなことはありません。オランダにしてもデンマークにしてもとても緑の多い国なのに、校庭はたいてい石です。

 最上級学年のあるクラスが分担して、学校説明を英語でしてくれたのですが、その最中に先生に指導されている小さな生徒がいて、とても印象的だったのと、途中で火災報知機がなって、校舎外に避難したりして、いたずらはどこでもあるのだ、と思って苦笑してしまいました。

 もうひとつ近所の、現在いるのと同じ民衆学校の労働組合版の学校を訪問したのですが、それはまた別に書きます。