臨床心理学コメント2018.7.12

Q 軽犯罪を行った少年に、2つの選択を設けるのは何故か

A ダイバージョンプログラムが存在する場合、当然その数だけ選択可能になるためです。プログラムがない地域では、選択はありません。

 

Q teen court で犯罪歴を抹殺するのは、寛大過ぎるのではないか。罪を犯したことをなくするのは、子どもたちの認識を甘くしてしまうのではないか。

A 10分程度の審理で、罰金刑、それも親が払うのが、通常の司法手続きです。それに対して、公開裁判を受けなければならず、罰もかなり重くなります。それをあえてやろうとする少年の意識は、前科者としてではなくまっとうにこれからは生きていこうというためです。前者のほうが甘い認識を植えつけるような気がしますし、やり直したいという少年の気持ちを汲むことは、大事ではないでしょうか。

 

Q 少年犯罪が大人への一段階という考えは、アメリカの大人が犯罪をして育ったかのように聞こえるのが、そういう風潮はあるのか。

A 非行や犯罪は、もちろん悪いことであり、すべての人間が犯すわけではありません。しかし、単なる「悪いこと」と考えて、「悪い人間」として扱うだけではなく、何故そのような行為をしてしまったのか、それには、本人の歪んではいるけれども、自立しようという意識があると認めたほうが、本人が更生する上でより積極的な見方だということです。

 

Q 陪審員は、何回くらい行うのか。

A 罰として行われる陪審員は、通常2回です。ボランティアとして行われる陪審員は、制限がありません。

 

Q 講習を受けたとはいえ、専門家の行う裁判と同等に扱うのはどうしてなのか。

A 専門家が行うよりはるかに厳しい罰を課せられるわけですから、緩い対応ではありません。したがって、甘いからおかしいということにはなりません。逆に、より厳しいのはおかしいということに対しては、前科を消すという特典があるからで、そういうバランスをとっていることになります。同等に扱ってはいけないとなると、すべてのダイバージョンプログラムが不可能になります。

 

Q 実際にアメリカの学校でのteen court をみて批判的になった研究者の名前は。

A 山口直也『ティーンコート  少年が少年を立ち直らせる裁判』です。ただし、その話は、実際に、私たち人間科学部の教員による共同研究会で話をしてもらったときに、直接聞いたことです。

 

Q 軽犯罪を放置すると積み重なって、重犯罪へつながるということが、サカキバラもそうだったのか。

A 日本の少年が重大犯罪をしたときに、ほとんどのケースで、小さなことから始まり、次第にエスカレートしています。サカキバラの最初の兆候は、動物虐待だったと言われています。小さな虫から始まり、やがて猫を殺害しています。彼の人間相手の犯罪は、最初は公園で少女の腹を指すことでした。3人被害者がいたのですが、一人死亡しています。生存した一人が、顔を覚えていて、近所の中学にいっている人だということだったので、被害者家族が中学に確認と対応を求めたところ、報道されている限りでは、学校がそれを拒否したと言われています。そのときに、学校が被害者に応じた対応をしていれば、最後の事件はなかったのではないかとされています。サカキバラは典型例といえると思います。また、最近では、名古屋大学女子学生による殺人事件はもっと顕著な事例といえるでしょう。

 

Q teen court で裁判に弁護士などで、かかわれるのは、何歳からか。資格は、未成年のときだけ有効なのか、生涯なのか。

A 刑事罰として扱われる年齢であるといえます。下は州によって、刑事罰となる年齢が一定していないのですが、だいたい12歳から18歳未満までということになるでしょう。

 

Q teen court では、同年代に裁かれることが、罪を気付くことになるということだが、逆に同年代に裁かれたくないという人もいるのではないか。

A teen court は本人による選択ですから、そういう人は、選択しないでしょう。

 

Q 日本でteen court のような活動はないのか気になった。

A 授業でも説明したように、日本には、ダイバージョンプログラム自体が存在しないので、法的に不可能でしょう。また、日本の高校生は、こうした資質を育てる教育を受けていないので、無理だと思われているのではないでしょうか。

 

Q 日本は少年の再犯率は高いのか。また、再犯しないための対策を国としてとっているか。

A 傾向として、少年の犯罪は減少しているが、再犯率は上昇しています。

平成でもっとも犯罪が多かった平成10年は、検挙数16万弱で、再犯率10%程度、27年は、それぞれ4万弱、36.4%です。

 法務省がとっている再犯防止策は、http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/63/nfm/n63_2_5_2_1_2.html で見ることができます。少年の場合には、これに、少年院の教育、保護観察による指導等が加わりますが、詳細は、「犯罪心理学」等の授業で学んでください。