臨床心理学コメント 2016.7.14

Q 終身刑は途中で出所するというが、アメリカで何回も終身刑という事例があるが、それでも出てくるのか。

A 年齢にもよると思いますが、比較的高齢で入所し、刑期が非常に長い場合には、もちろん獄死する場合が少なくないでしょう。しかし、仮釈放なしの終身刑という判決であっても、恩赦で刑期が短くなり、それを繰り返すことで実際には仮釈放になる事例もあるといわれています。

 実際に死ぬまで獄中に閉じ込めるのは安心でしょうが、そのことの公的負担は大きなものがあります。それならば、更生させて復帰させるほうが社会のためにはよいという議論があります。更生が不可能ならば、死刑が妥当だということになるでしょう。しかし、死刑は避けたいという意識が多くの人にあり、終身刑なら、という「妥協」の論理から終身刑の主張がなされることがあります。つまり、堂々巡りの論理になっているのです。

 

Q Teen Courtで、犯罪者を前にして、少年が裁くというが、怖いくて刑を軽くしたりというようなことはないのか。あるいは、その後いじめられるとかは。

A もちろんその危険性があるので、当事者が希望したり、コーディネーターがそうしたほうがよいと判断したときには、被害者・加害者・Teen Court関係者(少年)が関係ない土地で裁判が行われるような配慮をすることがあるようです。判決後に、そうしたことが皆無とはいえないでしょうが、もともと前科がつかないように更生意思がある少年がTeen Courtを選択するわけですし、有罪になることは通常前提なのですから、あまりないのではないかと考えられます。いじめなどをして、つかまってしまったら、それこそ前科がついてしまうわけですから。

 

Q イギリスで犯罪を犯した人がアメリカやオーストラリアに追放されるということだが、オーストラリアやアメリカは容認していたのか。

A アメリカやオーストラリアがイギリスの植民地だったときのやり方で、独立した以降は、もちろん行われていません。それで追放の土地がなくなってしまったので、刑務所制度が発達したわけです。

 

Q Teen Courtを受けた少年の全員が更生するとは思えないが、どの程度なのか。

A いろいろな研究があるかと思いますが、テキストに引用している例では、再犯率が10%以下になっています。通常の司法システムだと、半分以上が再犯すると考えられます。

 

Q Teen Courtは効果があるのに、国や州が支援しないのは何故か。

A もともと正規の制度ではないので、通常の予算支出はされないわけです。しかし、補助金などがだされている例はあります。

 

Q 厳罰主義になると軽犯罪に警察力を動員できないということだったが、警察官の数が足りないのではないか。警察力が十分であれば、対応可能なのではないか。

A それまで少年犯罪者の更生にも回されていた警察資源が、厳罰化によって、捜査に回されることで警察資源の偏りが出てくるので、警察官が大規模に増員されれば、不足はなくなるでしょうが、それは社会的負担ということから容認されないと思われます。

 

Q Teen Courtで再犯率が低下するのはいいと思うが、少年が判断するのは、問題ではないのか。

A 少年が裁くほうがよいと考える人が、Teen Courtを選択するわけで、よくないと思う人は、選択しないと考えられます。大人が裁くより同年齢の者が裁くほうが、裁かれる人間にとって素直に判断が受け入れられるものだという社会観・発達観に依拠しているわけで、それはそれで合理的な理由があるでしょう。

 

Q Teen Courtで重罪を扱わないのは、子どもには荷が重いという判断からか。

A 凶悪犯罪を大人の刑事裁判で裁くという時代の流れのなかで出てくるので、凶悪犯罪は当初から対象から外されています。ただ、Teen Courtの評価として、それほど効果があるのならば、凶悪犯罪も対象にしたらどうか、という意見はあります。

 

Q 動画では、少年裁判は公開制で罪が重いが前科がつかない、Teen Courtは軽いが犯罪記録が残るといっていたと思うが、授業での説明と逆ではないかと思った。

A 聞き違えでしょう。少年裁判(これは、正規の司法システムにある裁判のこと。ビデオでは青少年裁判所という言い方をしています。)は、簡単に済むが記録が残り、Teen Courtでは重いが、記録が残らないシステムです。

 

Q 大人が加害者ないし被害者として参加した場合、子どもの判決に納得するのだろうか。

A 判決ですから、すべての人が納得することはありえないでしょうが、判決は有効なものとされます。大人が行う裁判でも、判決に納得しない人は多数います。

 

Q ビデオでは大人が高校生の質問に素直に回答していたが、他のケースでも同様なのか。

A あのビデオの場合は、原告と被告が家族であり、家族としてTeen Courtを選択していたので、ともに協力的だったと思いますが、被害者が大人で他人だった場合には、加害者に反対する気持ちが強く、今日りょ的でない人がいる可能性も否定できないでしょう。