臨床教育学 2016.4.28授業のコメント

Q ADHDの子どもが増えた原因はあるのでしょうか。

A 様々な原因が考えられます。自閉症なども含めて、脳の微細な異常によって起きる発達障害については、脳が胎児として形成されるところから、出産後にも細胞分裂をある時期まで繰り返すので、その間に何らかの影響で、通常発達すべき部分に異常が起きると考えられます。科学の世界でも、まだ研究が十分に行われているわけではないので、明確なことはわからないようですが、考えれらていることは、

1 物質的影響

 50年くらい前までは、冷蔵庫などの食品保存のための器具を普及していなかったために、毎日店で材料を買って、調理して食べていました。しかし、その後電気製品や生活スタイルの変化によって、大量に購入して冷蔵庫で保存するようになり、そのために様々な化学物質を添加するようになり、そのいくつかが原因となるのではないかと考えられています。また、車や工場が増加し、大量の廃棄物質が空気や水を汚染することによって、体内にそうした物質がはいってくる可能性がでています。

2 社会的環境の影響

 現代社会は、以前に比較すると、社会的ストレスが大きく、相互援助体制が弱くなっていると考えられます。子どもの頃から、比較され、競争を強いられます。地域共同体がほとんど機能しなくなって、助け合いも弱くなっています。小さな子どもは、知らないひとを見たら、あやしいひとだと思うようにしつけられることも少なくありません。母親になっても、子育てを孤立した状態で行わねばならないひとたちが少なくありません。

 こうした結果として増加していると考えられます。

 

Q 学級崩壊の原因のひとつに教師の弱体化があると考えた。他のクラスでは教師がなめられているので崩壊してしまったと聞いた。原因のひとつではないか。

A 現象的には確かにその通りでしょう。問題はその対策で、だから、なめられないように、強権的であるのがいいのか、もっと別の方策が適切化ということでしょう。

 

Q ヨーロッパの学級では個別指導、ゲゼルシャフト指向だということだったが、日本で意識されている、他の人と協力できるか、コミュニケーション能力等々は、学校のなかで意識して育てられる場面はあるのか。

A ゲゼルシャフトというのは、目的をもって集まる集団のことですから、目的遂行という共通の目的があります。集団として目的を効果的に達成するためには、協力が必要であるし、そのためのコミュニケーション能力は不可欠です。したがって、日本的ゲマインシャフトよりは、ずっと意識して育てられるではないでしょうか。

 ゲマインシャフトは、自然にそこに存在しているわけなので、むしろ、くどくどいわなくてもわかる関係が、よりよいものだと意識されることも多いのではないでしょうか。

 単純にはいえないでしょうが、日本のほうが、ヨーロッパの学校より、コミュニケーション能力や協力能力の育成には、消極的であるように感じます。

 

Q 何人かの生徒が教師に消しゴムなどを投げて、教師がどうにもならない状況になったことがある。他の教師が監督に来たりして、そのときだけは落ち着いていた。集団で教師をいじめるような状況になってしまっとき、どうすればよいのかと思った。

A どの当事者であるかによって違うと思いますが、子どもにとっては、できることはあまりないと考えられます。打開できるのは、校長などの管理職が、担任を交代させることが、ほぼ唯一であると、通常は考えられています。誰か他の教師が入るのも、そのときだけの対症療法であり、生徒に完全に不信感をもたれている教師が、短期的に信頼を取り戻し、クラスをまとめることができるとは、ほとんど考えられません。

 

Q 親が保育士で、自由保育でない保育園だが、自由保育化するという園の方針で、大変になっている。自由保育をする上で、子どもの質が変わると思うが、ここだけは変えてはいけないというのはあるのだろうか。

A 自由保育といっても、放置することではなく、定型的なカリキュラムを決めないで、基本的に子どもたちの意思によってすることを決めるということでしょうから、逆に、保育士の注意力はもっと必要になるのだと思います。子どものやりたいことを効果的に指導・援助したり、問題が発生した場合には、適切に介入するなどです。変えてはいけないという点では、しっかり保育することでしょうか。

 

Q 日本の学校では、学級経営も評価の対象となるが、欧米では評価の対象となるのか。

A 学級の子どもたちが生き生きしているかとか、問題が生じていないかとか、そういうレベルでいえば、評価の対象となっていることは当然だと思われます。

 

Q 教師がいじめを助長するという話しがでたが、助長だけではなく、きっかけを作ってしまうことがあるのではないか。教師が特定の子どもに何度も強く叱ってしまうと、周りの子どもが「あの子は悪い子だ」と思って軽蔑してしまい、いじめに発展してしまう場合もあるのではないか。

A 確かにそういうことも、多くはないと信じたいですが、あると思います。どうしても教師は「よい子」を重視しがちであり、その見方が子どもたちに影響するわけですから、気をつけたいものです。

 

Q 外国と日本の学校形態は全然違うのだと思ったが、日本のような形をとってい)く国はあるのだろうか。そこては、やはり学級崩壊は起こるのか。

A アジアの国々で、日本の近代化から学び、教育を重視している国では、学校・学級を似た感じにしている国はあると思います。しかし、日本でも、戦前などは、学級崩壊は少なかったと考えられるし、また、戦後も高度成長以前はあまり聞いたことがありません。それは、教師の権威や権力が強く、それに反抗する気風が乏しかったからで、子どもたちの人権が容認され、そこから勘違いするひとたちが大人も含めてでてくる、教師の権威や権力を認めないひとたちが出てきて、子どもがそうした行動をとるようになると学級崩壊が起きるのだと考えると、中間層の形成とそれに伴う個人主義の発達、そして、教師の権威の低下が起きれば、そうしたアジアの国でも学級崩壊が問題となるのではないでしょうか。

 

Q 学級ごとのまとまりが強いのは日本だけなのか。日本とヨーロッパを比較していたが、アジア圏内でもそれは特殊なことなのか。

A 日本では、学級のまとまりがいいかとは、簡単にはいえないでしょう。日本ではゲマインシャフト的なまとまりを重視していると述べたのであって、その結果としてまとまりがよくなるかどうかは別問題です。学級崩壊があったり、スクールカースト的な支配関係があったりするわけですから、かならずしも日本の学級が一般的にまとまりがいいとはいえないでしょう。アジアの他の国が、日本のようにゲマインシャフト的に学級を考えているかは、正確なところはわかりませんが、日本のような同質性社会を形成してきた国は、やはり少ないので、日本の独特な性質であると考えられます。

 

Q 欧米的な教育の仕組みに近づけることが日本にはできるのか。

A 本来、学校はゲゼルシャフトなので、やがて欧米的になっていくと思います。

 

Q オランダでも軽度発達障害の子どもは増えているのか。

A 学習障害の一種であるディスレクシア(読字障害)のことを聞いたのは、オランダにおいてでした。欧米では非常に多いので問題となっているということでした。オランダのライデン大学の教育学部は、障害児教育の主要な取り組みです。