国際教育論コメント 2014.6.23
1 白い学校と黒い学校について、格差を社会的に是正していないのか疑問だ。
A 格差を是正しようという政策は、かなり熱心に行われいます。それは、授業でも説明したように、移民の子どもとか、障害をもった子どもは、子ども一人あたりの補助金の積算が高くなっていることに現れています。したがって、移民の子どもがいると、教師を余計に雇って、丁寧にみることができるようになります。
 では、白い学校と黒い学校問題については、どうなのかというと、これは、基本的に親と子どもが自分で選択した結果であることを重視しています。分かれる傾向を是正するためには、選択する権利を制限する必要がでてくるわけです。現在のオランダ人の意志としては、自発的な分かれ方を是正してまで、選択の自由を放棄するのはよくないという意見だということだと思います。

2 学校同士のライバル関係はないのだろうか。また、教育実習生はどのように学校を選ぶのか。
A 選択制度が徹底しているということは、学校がライバル関係にあるということです。生徒数が減れば、閉鎖せざるをえなくなるので、学校も生徒たちの満足がいくように、おおいに努力せざるをえません。
 教育実習は、教員養成学校である専門学校に、各学校から案内があり、また、実習生がそれをみたり、あるいは自分で訪問したりして、相互の合意で決めていくと思います。


3 黒い学校の先生はオランダ人なのでしょうか。
A 黒い学校というのは、イスラム教徒の子どもが多いという意味ですが、通常のオランダの学校であれば、ごく普通にオランダ人の教師がなっていると思います。「通常の」という意味は、イスラム学校ではないという意味です。公立学校でも、イスラム教徒が半数以上という例がありますが、通常のオランダの公立学校なので、通常の教師がいます。
 問題は、イスラム学校の場合です。イスラム学校ですから、当然、学校としては、教師もイスラム教徒で固めたいはずですが、現時点では、イスラム教徒で、オランダの教員免許状をもっている人を十分集めることはできないようです。それで、教師だけは、イスラム的戒律を守る義務を課さないという条件で、オランダ人を雇っている場合がたくさんあります。子どもに対しては、イスラム教徒としての戒律を、最低限学校の中に取り入れているわけですが、教師に対しては、免除しているのが普通です。
 逆の場合もあります。キリスト教の学校に、イスラム教徒の教師が雇われていることもあるわけです。イスラム教徒だから、マフラーをしていますが、中に生徒でイスラム教徒がいると、先生がしているのだから、私もということで、マフラーをしだした生徒が現れたことがあります。学校は、キリスト教の学校なのだから、それは禁止ですといっても、きかないので、退学になりました。フランスでおきたようなことがおきたわけですが、オランダでは、世俗性原則は私立学校にはないので、問題になりませんでした。それよりも、キリスト教学校に、イスラム教徒の生徒や教師がいることが、多少驚きですね。

4 実際にオランダの教育で、格差は縮まったのでしょうか。
A 通常、先進国では、教育格差は縮まることはないと思います。ただ、移民問題は、ドロップアウト問題として深刻化するので、そうならないように、格差是正に取り組んでいる側面もあります。

5 学校選択制ということですが、定員があると思いますが、選抜試験はやるのでしょうか。
A 選抜試験はありません。そもそも、オランダの学校(というより、ヨーロッパの学校には)入学用の選抜試験はありません。小学校などで、定員が超過した場合、先着順であることが普通です。日本の学校選択制では、ほとんどが抽選ですが、ここらが文化意識の相違を感じます。先着順であるために、人気のある小学校では、かなりはやい時期に、申し込みをします。日本の友人で、0歳で申し込みをして、定員以内だったと喜んでいる人がいました。

6 着衣水泳のとき、2、3人でやるということでしたが、他の生徒は何をしているのですか。
A だいたい授業は20人くらいで行われ、指導員が4人程度いたと思います。着衣水泳が常に2、3人で、指導員は一人。あとは、泳ぐ人、遊ぶ人など、数名のグループができて、それぞれ一人指導員がつきます。かなり広いプールなので、それぞれ場所がわかれています。