国際教育論回答集2
1 なぜ、教育が普及すると、人口がへるのですか。
A 農業社会や、初期工業社会までは、子どもは生産人口です。農作業を手伝うし、児童労働の担い手として、給料を稼いでくれます。そして、親が働けなくなると、扶養してくれる福祉的機能も担います。だから、その時期までの社会では、子どもはたくさんもとうとするのです。日本が戦争で負けて、逃げていったときに、置き去りにされた子どもたちがたくさんいたのですが、中国人たちは、敵国の子どもであるのに、自分の子どもとして育てました。それが残留孤児です。つまり、労働力として期待されたのです。
 しかし、工業社会が進み、義務教育が制定されると、労働させることができなくなります。教育の部分が拡大するほど、労働部分が減り、逆に、教育にかかる費用が拡大してくるのです。現在の日本をみればわかるように、子どもが就職して一人前になるまでに、おそらく、1000万以上の費用がかかるでしょう。その間稼ぎだすお金も考えれば、膨大な赤字になるのです。だから、教育が普及すると、たくさんの子どもをもてなくなるのです。また、子どもに長い教育を保障するような社会では、大人は自由時間をもち、また女性も働きに出ていることが多いので、育児にかける時間が少なくなってしまいます。そういう理由から、どんな社会でも、教育が普及すると出生率が低下するのです。現在、世界で最も出生率が低い国は、韓国だと思いますが、韓国の大学進学率は80%を超えるほど高いのです。
2 アメリカで、現在でも黒人差別はありますか。
A 一般的には、黒人差別がまだ残っているといわれています。その結果として、経済的な格差がますます拡大しているといえるでしょう。しかし、公民権法が施行されていますから、露骨な差別はとても少なくなっていると思います。しかし、よくいわれるのは、犯罪容疑者として、白人が疑われたときと、黒人が疑われたときには、格段に、黒人の犯人扱いになることが多いとされています。黒人の犯罪が多いとされるのは、貧困だけではなく、黒人が疑われたときには、厳しく対応されるからだと考えられています。だから、犯罪容疑がからんだ黒人の暴動がよく起きるのです。
 黒人はさまざまな分野で活躍できるようになりましたが、まだまだ、幼少のときから、かなりの費用をかけ、しっかりした指導者がつかないと上達しないような分野では、黒人の一流の人たちは滅多にいないのです。スポーツではゴルフ、音楽ではバイオリニンなどがそうですね。水泳もそうですが、水泳の場合には、さらに黒人と一緒に泳ぐのが嫌だ、という雰囲気がまだあるのかも知れません。
3 リトルロック事件で、なぜ知事は最初、黒人をいれようとしたのか。
A 本人はその後、立場を逆転してしまったので、よくわかりませんが、やはり、最高裁判決がでて、黒人をいれるべきであるという雰囲気が一定程度でてきたので、それに自分ものろうとしたのではないでしょうか。そうすることが、支持を広げることになると。しかし、実際にやり始めると、白人たちの反発がすごく強く、知事に投票しないぞ、というような声が広がったために、入れない派に鞍替えしたのではないでしょうか。
4 エリートたちは、少人数教育の全寮制の学校にいれているというが、親の価値観よりも、学校の価値観が優先されるようになるのか。
A それぞれの学校に、かなり伝統的に築かれた教育方針や理念があり、それをしっかり公表している。そして、当然、親と子どもが一緒に事前に学校を訪問し、意見交換もして、それから応募するわけですから、基本的に、親は自分の教育的価値観にあった学校を選んで、子どもを入学させるわけです。だから、通常は、両者が異なることはないのです。
5 そもそも、なぜ黒人が差別されるようになってのかわからない。ユダヤ人差別のように明確な理由があるのでしょうか。
A これは授業でも説明したと思いますが、まず、南部のプランテーションは、安価な労働力を大量に必要とした。白人は、安価な賃金で働いてくれないし、また、いろいろと労働に対して注文をつけるはず。ヨーロッパ的文化水準からみれば、低かった現地人たちは、安く働かせることはできたが、現地人なので、逃げる場所があり、すぐ逃走してしまった。だから、安価な労働力としては定着しなかった。そこで、当時原始的な生活をしていたアフリカの黒人たちを、だまして連れてきて、労働させた。まったく文字文化を身につけていないし、つれてきてしまえば、他では生活できないので逃げない。どんなに過酷に扱っても、押さえつけることかできたし、また、死んでしまっても、どんどんアフリカからつれてくればよい。そうして、ますます奴隷的な状況が深刻になっていった、ということでしょう。公民権法が施行されても、黒人は肌の色でわかるので、同化しにくいという問題があり、差別が継続しやすいのです。
 むしろ、ユダヤ人差別の方が、理由が不明確で、あいまいではないでしょうか。
6 南北戦争で忙しいはずなのに、アメリカはなぜ日本に来たのですか。独立戦争といったり、南北戦争といったりするのはなぜですか。別の戦争だと思っていましたが。二番目は、別の戦争です。
 江戸時代を通じて、外国は日本にやってきたのですが、幕末付近になると、その勢いがどんどん強くなってきました。列強の間で競争が起きたということではないでしょうか。日本は、非常に豊かな国で、貿易をすると儲かりそうだ、というので、日本との通称を求めたわけです。オランダは、かなり日本との貿易で利益をあげたので、それにあやかろうとしたのが、基本的な理由だと思います。アメリカのその動向におくれまいとした。それから、アメリカ特有の理由として、当時アメリカは鯨から油をとっていて、鯨漁のための、補給基地が必要で、日本がとてもそれにかなっていたからだといわれています。
7 スコープス裁判とありますが、教師の名前はスコープであっているのですか。
 教師の名前がスコープスです。John Thomas Scopes
8 アメリカのエリート学校に通っているうちに、勉強が追いつかない人などはでないのか。また、公立の学費はどのくらいか。
 勉強が追いつけなくなる人はいない、とはもちろん断言できませんが、そもそもこうした学校は、少数を除いて、ハードな勉強でうっているわけではなく、文武両道みたいな学校が多いので、あまり落ちこぼれはいないと思うし、また、少人数教育なので、おくれている子どもは、教師が特別指導するのではないでしょうか。勉強の厳しいところでついていけない場合には、おそらく、合意の上で、他の学校に転校するものと思われます。公立学校にはいかないことが多いと思われますが。
 公立学校は、最後の1年程度を除いて、義務教育期間なので、原則学費はかからないはずです。