国際教育論コメント2018.7.2

Q 麻薬の合法化はHIVには効果があっても、他の体に影響はないのか。

A 大量に摂取すれば悪影響がでるでしょうが、大麻などのソフトドラッグは、少量であれば、たばこよりも害が少ないと言われています。もっとも、たばこの害も強く意識されていますから、だから日本でも合法化しようという必要はないと、個人的には思います。

 

Q 安楽死は9割の支持で、ドラッグは6割というのは、3割の差は何故か。

A 安楽死は、ぎりぎりのところで苦痛を回避する手段であり、それが保障されていることで、逆に生きる意欲がでると言われており、しかも、強制されるわけではないので、ほとんどの人が支持をしています。また、外国人には絶対的に禁止されています。

 ドラッグの場合には、やはり、犯罪と結びつきやすいし、麻薬バスなどに外国人がやってくる、オランダ政府の財政的負担になる等々、いろいろな反対理由があるということでしょう。

 

Q 講義のなかで、オランダは、エイズが多いと説明した。また売春が合法というので、これでエイズが増えるのか。

A エイズが多いという説明ではなく、エイズの感染が、ヨーロッパでは麻薬の注射によって起きることが多いという説明でした。それが、麻薬バスを創設する理由でした。

 売春の合法化は健康診断の義務化は結びついているので、野放しよりは、病気の蔓延は防げると考えられています。

 

Q 親子の会話で性について考えさせることは、かえって、強姦やセクハラの危険性を生まないのか。

A 親子の会話から、強姦やセクハラが生まれる危険があるというのは、理解できません。親が子どもにそういう被害をうけないように、加害者にならないように、注意をするだけではなく、率直に話し合うわけですから、危険を回避する効果のほうが圧倒的に大きいと思います。

 

Q NPOを介して援助をするメリットはわかったが、デメリットはあるのか。

A 援助を通して利益を受けようという、企業にとってはデメリットでしょう。政府を通した援助は、通常、公共事業として工事が行われ、その工事を行う企業は、援助する側の国に属する企業が含まれるように契約されます。つまり、援助しつつ、援助による収益は、援助国に還流する仕組みです。NPOを通した援助は、このようなことが行われにくくなります。工事の受注も、援助を受ける側の企業になる可能性が高くなるでしょう。結局、誰のための援助なのか、という問題に帰着するといえます。

 

Q オランダで退学処分を受けた子どもは、別の学校で義務教育を継続できるのか。その場合、また1年生から始めるのか。

A もちろん、他の学校に編入します。

 

Q よく洪水が起きる他のヨーロッパ諸国は、オランダのような対策をとらないのか。

A オランダほど洪水の被害の切実性が高くないというのが、ひとつの理由でしょう。オランダは多少の継続的な雨でも洪水の被害がありますが、他の国では、かなりの大雨で初めて洪水が起きる。そのために、オランダでは治水は全国的な、国家的な事業として長い間積み上げられてきたものであり、全国の河川を対象として、水位をコントロールする仕組みを作り、それを維持しているわけです。それには、莫大な費用と労力がかかっています。他の国は、それだけの負担をする必要性を感じていないということだと思います。

 

Q なぜオランダには、移動式の遊園地があのか。

A オランダに移動式の遊園地があるのではなく、ヨーロッパには、常設の遊園地は通常ないということです。ウィーンには観覧車があるようですが、大規模が遊園地ではないですね。大規模な常設の遊園地はパリのディズニーランドが最初だと思います。それ以後もほとんどできていないはずです。

 

Q 麻薬が合法になって、麻薬から抜け出せる人がいるのか。

麻薬バスに通っているひとたちの2割は、抜け出せると言われています。しかし、8割はそのままです。麻薬の合法化によって、麻薬から抜け出すということは、ほとんどないと考えられます。ただ、非合法の麻薬をやっていた人が、より害の少ない合法麻薬に移る人はいるでしょう。

 

Q 大麻が許されているのは、マフィアが裏で大きな社会を形成しているのか。

A 大麻を合法化したのは、たばこほどの害もないものを禁止することによって、犯罪の温床にすることを防ぐことだと思われます。そのために、逆にマフィアのような犯罪組織が育ちにくくなっていると言われています。

 

Q オランダの財政は。

A 先進国では、どこでも赤字財政であると言われていますが、EUでは国家の財政に厳しい制限があるので、それほど大きな赤字は生まれないようになっています。(もっとも、ルール違反をすれば別ですが)したがって、日本のような状況よりは大分改善されています。

 下の図は、オランダと日本の財政支出の推移ですが、日本は、バブル経済のときだけが黒字で、それ以後はかなり深刻な事態といえますが、オランダは、赤字主体とはいえ、最近はかなり改善されています。

 

Q エイズ対策で麻薬バスを走らせる合理性はわかったが、麻薬をする人たちの犯罪が増えたり、体への影響は考えないのか。

Q 麻薬の合法化で犯罪は減ったのか。

A 麻薬を合法化すると、増える犯罪と減る犯罪があると言われています。合法化すると、麻薬の値段が格段に下がるので、強盗などをする必要がなくなり、凶悪犯罪が減ると言われています。それに対して、合法化されれば、使用する人数が増えること、安いとはいえ買う必要があることなどから、窃盗などの軽い犯罪が増えると言われています。オランダでは、自転車泥棒が横行しており、盗難自転車を扱う店などがあり、盗んでそこにもっていくと購入してくれ、その売って得たお金で、麻薬を買うと言われています。また、そうした自転車屋は、通常の値段よりもずっと安く販売をします。麻薬バスは、無料であるために、軽犯罪も減らす効果があるとされます。

 

Q 大麻の合法化といっても、少量と大量の差を見抜くことは難しいのではないか。

A 大麻は市販品となるので、店が個人に対して売る量に制限がかかっており、使用の差を見抜くことは難しくとも、店に基準量しか売らせなければ、それなりに量の規制が可能になります。絶対ではないにせよ。

 

Q 24時間テレビは、オランダのようになればいいと思うが、国民の意識が似ていないので難しいのではないか。日本人は、外からくる人にあまり寛容ではない。

A 国民の意識はかならずしもそうではないように思います。むしろ、メディア運営者の意識のように思われます。欧米の24時間テレビは、文字通り社会貢献のために実施されていますが、日本の場合には、放送局の営利部分がかなりはいっていると言われています。そのために、出演者にギャラを払うことになり、本来の番組の趣旨が歪められており、それを国民が望んでいるかどうかは、検討してみる必要があるのではないでしょうか。

 

Q 途上国への援助でマイナスになっているのは、どうすれば、納得のいく援助になるのか。

A マイナスを無くすためには、現地の本当に援助を必要としている人たちのための援助にすることでしょう。日本の企業の利益優先をやめるということです。そうするべきかどうかは、国民の意識によるでしょう。

 

Q 自転車道が整備されているということだが、そんなに自転車を利用する人が多いのか。

A オランダは世界一の自転車王国です。自転車保有台数が、人口よりも多いと言われています。つまり、一人2台以上もっている人が少なからずいるということです。

オランダには、ほとんど坂がないので、自転車が非常に楽な乗り物です。また、オランダ固有の自動車産業が存在しないので、政府は日本と違って、自動車産業に気兼ねすることなく、自転車奨励策をとることができます。更に、オランダは温暖化の被害を最も受ける国家なので、温暖化対策に非常に熱心であり、車通勤ではなく、自転車通勤を奨励しているわけです。1970年代くらいまではオランダは豊かな国ではなかったので、自転車通勤や通学は、国民も積極的にやっていたのですが、近年はかなり豊かな国になっているので、自転車ではあっても、原付がはやるようになって、温暖化対策的には、後ろ向きの現象もおきています。

 

Q 昔は宗教的な地域性が強かったということだが、住民の間の争いはなかったのか。

A 地域的に棲み分けているということと、寛容の精神が重視されているので、少なかったと思われます。