国際教育論コメント 2018.6.25

Ｑ　文教大学のシニアスクールもフォルケに近い、あるいは影響されているものなのか。

Ａ　文教大学が行っているシニアスクールがフォルケホイスコレの影響なのか、という「影響」を非常に近いものと考えれば、その影響ではないと考えざるをえません。

　おそらく、あのような制度を考えた人が、フォルケホイスコレについて知っていて、その精神を受け継ごうと考えたとか、そういうことはほとんど考えられないからです。冬の時代を迎えて、生き残りをかけた競争に大学は駆り立てられているわけですが、その一環として、シニアを取り込んで、少しでも収入を増やそう、高齢化社会を迎えて、ある程度効果があるだろう、というのが、シニアスクールの設置の動機だと思います。

　アメリカでは、冬の時代を社会人の学生を増やすことで乗り切ったと言われているのですが、日本では、労働時間の長さ、そして、企業内教育の存在から、社会人が大量に大学で学ぶ可能性は低いので、せめて定年後のシニアとなっているように思われます。

　しかし、非常にグローバルな歴史的観点にたてば、イギリスのオープンユニバーシティに代表されるように、大学を一般市民に開放していくことが、大学にも社会にも有用であるという意識は、フォルケホイスコレに源流をもつ考えなので、そういう広い意味での影響はあると思います。

４

Ｑ　IPCは入試がないことで、集まりすぎて入りきらないことは起きないのか。誰でも入学可能ということで、質が低下することはないのか。

Ａ　そういうことがあれば、学校として歓迎すべきことでしょうが、集まりすぎることは、ほとんどないようです。もしかりにあれば、定員が埋まったということで、断ると思います。

Ｑ　デンマークの自由時間法を利用している人は、どのくらいあるのか。

Ａ　いろいろと調べてみましたが、そういう数値的なことはわかりませんでした。わかったら、何らかの方法で知らせたいと思います。ただし、多くの人が利用していると思います。

Ｑ　フォルケホイスコレの生きた教育が現在でも、先進的なものなのか。

Ａ　授業でも説明したように、グルントヴィが活動していたころは、中等教育機関は、古典教育を軸にしており、現実の生きた社会を扱う内容は、非常に弱かったのです。しかし、その後教育教育制度が確立し、新教育運動やカリキュラム改革、科学技術革命などをへて、「生きた教育」が通常の形になったので、今では先進的とはいえないでしょう。また、先進的な教育内容を教える点では、大学などに比べれば劣っており、教養を学ぶ性格が強いといえます。

Ｑ　テストがない教育で、大学へのポイントがもらえるなら、入ったけど勉強しないという人がいるのではないか。(好きな勉強をするので、いないと感じた)

Ａ　勉強以外のことに熱心である人は、もちろんいると思います。しかし、勉強するしないは、個人の自由ですから、勉強しない人がいても、誰もとがめもしないし、迷惑をかけるわけでもないので、かまわないと扱われます。

Ｑ　デンマークはゆとりのある生活を保障するようにできていると感じたが、日本は、いつも追われるような生活をしている。日本の教育の方向性が気になる。

Ａ　若い人が頑張って、適切な方向にいくようにする必要があるのではないでしょうか。

Ｑ　オランダのように、教育が憲法に明記されないのには、理由があるのか。

Ａ　教育の社会権と自由権の両方が、憲法に規定されているのはオランダだけといったことに関連しているのだと思いますが、先進国であれば、教育について憲法で規定しているのはごく当たり前です。アメリカやドイツは、州の権限なので、中央政府の憲法には規定がありませんが、州憲法に規定があります。

　国家が規定する教育は、社会権に属する権利だということです。日本国憲法でも、当然教育権は社会権と把握されています。そういうなかで、オランダだけが、自由権としての教育権を規定している、唯一の国家なのです。論理的にも困難な論点を提示するので、オランダでも常に論議の対象になっています。詳細は授業で説明します。

Ｑ　IPCに「テーブルマナー」があったが、日本で教えているようなところがあるのか。軽く触れる程度しか聞いたことがない。

Ａ　IPCのテーブルマナーというのは、たとえば、フルコースでのナイフ・フォークの使い方などということではなく、まず、いろいろな国からきているので、食事習慣が異なり、かつ、IPCでは集団生活なので、料理のとり方、お代わりの仕方、食事後の片づけの方法、食器洗いのルールなど、さまざまな取り決めがあります。80人が一斉に食事をするし、一人一人に盛りつけてもっていくサービスをする人がいるわけではありません。そういうなかでのマナーなので、日本での給食のルールをきっちり教えていることと同じだと思います。