国際教育論コメント 2018.6.4

Q 中国やロシアなどの大国よりも小国のデンマーク、フィンランド、アイスランドなどのほうが経済力は高いのか。

A 経済力や経済競争力を測る指標は多様で、調査期間によって異なるので、順位も相当変わってきます。したがって、メディアが経済力の調査などを発表したときには、どのような調査項目で、どのように評価をしているのかを注意してみましょう。

 大国という場合、GDPなどを意識すると思いますが、人口が多ければ、自然にGDPは大きくなり、それだけでは、経済力が高いとはあまり意識されません。経済力という場合、国民の教育程度、知的財産、流通経路の状況、労働者の条件、資源、セキュリティなど、様々な要素が関連してきます。北欧の場合、新しい製品を生む力、社会の安定性、教育程度など、経済力を構成する要素で、高い水準を示す領域が多いので、多くの調査で上位にきていると考えられます。

 

Q スウェーデンの福祉で、医療費などが無料だとしても、税金が高いのは、貧困の格差を広げているのではないか。

A 税率が収入にかかわらず、同率であれば、確かに高い税金は、格差を拡大しますが、累進課税であれば、所得再分配となるので、格差を是正します。消費税も高いので、確かにその面では、格差拡大の影響力がありますが、所得税については、累進課税なので、格差是正であり、無料の医療費は、所得再分配の意味をもちます。無料の医療費の問題は、むしろ、気軽にかかれるので、待ち時間が長くなったり、希望の診療が受けられないことがあるというような点にあります。

 

Q 義務教育は小1から中39年間ではないのか。高校にはかかっていないと思うが。

A 日本や北欧はそうですが、アメリカは、9年間の州はほとんどなく、だいたい高校の1年か2年までが義務教育年齢になっています。

 

Q 幸福度調査はどのようにしてやるのか。

Q 幸福度調査で他の上位の国はどうなっているか。

A カテゴリーを決めて、それぞれに点をつけて、合計点で順位を決めるのが通常です。そのカテゴリーによって、客観的な要素を重視する場合と、主観的な要素を重視する場合とでは、かなり順位が異なってきます。北欧が上位にくるのは、だいたい客観主義で、主観主義だと、アジアが上位にくる傾向が強くなります。概して日本はあまり上位ではありません。さまざまな幸福度調査があり、ウェブに掲載されているので、検索してみてください。(調査委によって国が変わりますので、ウェブで検索してみてください。)

 

Q お酒を持ち込むときに、税関にひっかかったりしないのか。

A EUやスカンジナビア3国の間では、国境管理がないので、自由に出入りできますし、もちろん、持ち物検査などはありません。(シェンゲン協定を参照してください。)

 

Q 福祉国家が経済的にも発展しやすい理由が気になった。

A 福祉政策をすると、経済力が落ちるのかどうか、ということは、特にイギリスにサッチャー首相が登場して、福祉は経済力を低下させるという理由で、様々な分野での福祉の削減をしていったときに、大きな論議になりました。サッチャーと同じ立場のひとたちが、いわゆる新自由主義政策を押し進めていったのですが、それに対して、北欧は福祉政策をむしろ徹底させる政策をとりました。少なくとも、現在では北欧が経済競争力を高い水準で維持しているので、福祉政策が経済力を低下させると、強く主張する人は、少なくなっているように思われます。しかし、逆に、北欧でも新自由主義的と言われる政策が導入される傾向にあるので、より精密な考察が必要となっているといえます。

 

Q 福祉国家の経済競争力が高いのは、資源に恵まれているからではないのか。福祉が経済力が強い理由にはならないと思う。資源が貧しい国家では、福祉政策は難しいのではないか。

A 経済競争力は、資源に恵まれることが条件であるかと、北欧が資源に恵まれているかは、分けて考える必要があるでしょう。

 資源に恵まれないと経済競争力がないというのは、明らかに間違いでしょう。シンガポールは、まったくといっていいほど資源がない国家ですが、高い経済力を誇っています。いかに資源がないかは、水ですら、マレーシアから輸入しているほどです。農業もほとんどできず、もちろん、金属、石油等の資源も皆無に等しいでしょう。シンガポールの経済力は、高い教育水準、海運上の有利な位置の効果的な利用、安定した社会による観光事業等々にあると言われています。

 日本はかつては豊かな自然資源に恵まれていましたが、長い歴史のなかで、金属などはほとんど枯渇しており、恵まれた自然資源をもっている国とは思われていません。(豊かなのは水資源くらいでしょうか。)にもかかわらず、高い経済力をもっているのは、教育力にあると言われています。(それも問題が多いようですが)

 次に北欧が資源豊かであるかですが、確かに資源が乏しい国家ではありませんし、かつてのスウェーデンは、鉄や石炭による工業で国力が増大したと言われていましたが、現在の北欧の経済力は、主に知的創造性に基づくと言われています。大学まで無償なので、世界中から優秀な留学生が集まることも影響しているでしょう。

 

Q 平和・軍事的な側面をあまり出さない中立国には、どのような特性があるのか。

A いわゆる地政学的な見地で考えるのが、一番多く見られる解釈だと思いますが、大国と離れている、比較的人口が少ない、島国であるなどでしょうか。日本は、開国するまでは、国際的には平和な国家であったといえますが、近代化して、中国、ロシアなどに近いし、また、軍事的に航空機が中心になると、島国であることは、あまり意味がなく、冷戦という米ソの狭間にいることになって、地政学的には、中立国にはなりにくい状況にあるといえます。日本が戦争をしないできたのは、やはり、憲法の存在が大きいと思われます。

 

Q 北欧の国は平等だというが、どのような面で平等なのか。

A 教育と医療が無料なので、利用に格差がない。(現在は福祉政策に反するような政策も行われているので、厳密には、格差はある。)住宅政策によって、住居条件がかなり格差の少ない状況になっている。(大邸宅とウサギ小屋というような格差があまりなく、また、授業で説明したように、熱湯の供給システムなどが整っているので、お湯などが平等に使える。)

 

Q 開放制刑務所で、逃走してしまうことはないのか。どのように管理しているのか。

A 逃走がまったくないとはいえないようですが、想像するよりは、ずっと少ないと言われています。また、完全な国民背番号制度をとっていて、ある程度の大きな買い物やホテルの宿泊などは、番号を示す必要があるので、逃げるのが困難であると言われています。

今年、日本で脱獄騒ぎがありましたが、実は、極めて稀な現象だったのです。

 

Q 北欧に比べて日本の政治参加率が低いと思うが、どうすれば改善されるのか。

A 若者がもっと自分たちの状況の改善のために、立ち上がることが必要ではないでしょうか。

 

Q 4年でも北欧研修にいけるか。

A 正式科目なので、履修登録が必要ですが、4年でもいけるはずです。