国際教育論コメント2018.5.21

 入試関連

Q 共通テスト、レポート、内申書をチェックした上で、全員に面接を行うとすると、どの程度の入試期間なのか。日本のように2,3カ月で可能なのか。

A 日本でも2,3カ月でやっているわけではなく、問題作成から始まって、オープンキャンパスなどもありますから、年中入試関連の仕事があります。実際に問題作成から始まると考えれば、半年はかかっています。

日本の大学は、重要な仕事を教員が行いますか、アメリカの大学(ヨーロッパも同様)では、専門の担当者がたくさんいて、そこをアドミッション・オフィスといいます。日本のAO入試という言葉は、ここから出たものです。これは、日本の大学の入学課のような事務ではなく、完全に専門職です。そういう人たちが、レポートを読んだり、書類の評価をするので、一年中選抜関係の仕事を専門的に行うわけです。

 

Q 3000もある大学を、どうやって選ぶのか。

A 専門学校やコミュニティカレッジであれば、勉強したい領域がある学校で、比較的近くの学校を選ぶように思います。州立大学は、自分が住んでいる州の大学が、授業料などの特典があるので、そこを選び、通常複数のキャンパスがあるので、そこは、通いやすさ、あるいは親から独立する場合、住みやすさ、キャンパスの評判等考えて選択すると思われます。州外の州立大学にする場合には、さまざまな情報を集めるでしょう。

 有力私立大学の場合は、選抜が行われるので、通常複数に応募し、合格したなかから、好みで選ぶと思います。現在は情報時代ですから、大学の情報提供はさかんに行われており、問い合わせも可能ですから、特に困ることはないのではないでしょうか。

 

Q 日本ではコミュニティカレッジのような無試験の例はあるのか。

A 原則入試がなく、正規の学校体系に入っている教育機関は、ないはずです。しかし、実質的に応募すれば確実に入れる大学や短大は存在します。

 

ローン返済問題

Q アメリカで、どのような対策をとっているか。

A 利子逓減措置が主なもののようですが、それも、日本の公定歩合にあたる利子の利上げによってかえって苦しくなっているようです。他に一定期間公務に就くと返還免除という措置をとられたこともあるようですが、徹底されていないようです。解決の方向が見えない問題のひとつのようです。

 

Q お金のない学生を支援する制度があるのか気になった。

A 返済義務のない奨学金制度が存在していることは、その最大の制度でしょう。人数が限られているとはいえ、その存在は、貧しい生徒が大学進学を考える際に、大きな支えになるように思われます。

 

中退問題

Q 中退をださないように、どのような対策をとっているか。

A 個別の大学では、対策をとっているところがあるかもしれませんが、アメリカの大学の全体的な傾向としては、そのような対策はとらないと思います。しっかり勉強して単位をとれた者が卒業という認定がされるので、単位をとれない者は、中退すればよいという考えであると思われます。

 日本は、学校の「面倒見のよさ」が応募の参考になるような面があるので、少なくとも文教大学ではかなり神経をつかって、面談したりしています。日本の大学は入学試験で、学生のレベルがある程度揃っているので、そのなかで中退者が多いことは、教育力が弱いと感じられますが、アメリカは、多様なレベルの学生が入学できる仕組みなので、ついていけない者は別の道を探すのがいいという意識が強いのではないでしょうか。

 

Q 中退した学生のその後はどうなっているか。

A より易しい大学に転校する、その中退の状況で就職可能な職場を探す、アルバイトなどをしつつ、何をやるか考える、等々様々でしょう。

 

Q アメリカの女子学生が多いのは、学問領域において男女の平等が守られているからなのか。学会などは、男性社会と聞いたが、アメリカでもそうか。

A 日本の学会が男性社会であるというのは、平成27年度で研究者における女性の割合が13.6%という数値からわかります。しかし、大学院修士の院生の割合は、30.4%なので、今後女性の研究者の割合が少しずつ上昇していくと思われます。しかし、研究者の中心である理系では女性院生の割合が非常に低いことも注目すべきです。

 アメリカの研究者の女性は33.6%で、それほど高くありません。女性の割合が高いのは、旧ソ連圏で、男女だいたい同数です。

 アメリカの学会が、日本よりは男性社会的雰囲気が少ないけれども、完全に共同参画社会的といえる段階でもないようです。

 アメリカの女子学生が多いということですが、日本でも高等教育進学率は女性が男性よりも高くなっています。ただし、4大は男子のほうが多く、全体として女子が高いのは、短大の影響です。

 「学問領域において男女の平等が守られている」というのは、かなり様々な検討課題があります。

 たとえば、研究者や大学の教員を選ぶ場合に、男女が考慮されるかといえば、日本においても、少なくとも近年ではほとんど考慮されないと思います。大学も生き残りをかけているので、優秀な人材をとる必要があり、性別ではなく、優秀さで採用するでしょう。もし、それ以外の差別的な観点で採用すれば、やがてその大学は弱体化していかざるをえません。したがって、採用時の男女差別はかなり少なくなっていると思います。

 しかし、数的には、アメリカでも30%代、日本は10%代ですから、平等が守られているかといえば、完全に肯定はできないでしょう。

 いずれよせよ、量的な問題だけではなく、質的問題もあるので、単純な答えはないように思います。

 

Q 近くの卒業生に面接を任せるのは、先生たちの仕事を減らさないと余裕がないのではないか。

A 面接が土日に行われ、1、2件であるとすれば、そうでもないように思われます。

Q 卒業生に面接を任せるのは、日本のシステムで大丈夫なのか。(大学で働いているわけではない。)

A 大学がそれを認めれば問題ないと思います。

 

Q 特許に関して、日本は発明主義で、アメリカは届け出で主義だということだが、なぜアメリカが日本を訴えることができるのか。

A 一般的に刑事訴訟は、犯罪が生じた国で行われるものですが、民事訴訟は、外国に対しても訴えることができるし、また、グローバル時代ですから、日本企業がアメリカで活動していることはかなりあるわけで、日本企業がアメリカ企業から訴えられることは、不思議ではありません。

 また、アメリカの訴訟は、成功報酬方式で行われることが多いので、かなり気楽に訴えることができます。日本より訴訟が多い主な理由でもあります。

 

 

Q レポート不正問題に関連して、そもそもレポートで何を評価してのるか気になった。

A テーマを題している教員によって異なると思います。

 ただ、学生諸君が忘れてはならないことは、文章はかなり正確に書いた人の知的水準を表しているということです。だから、評価の対象や観点が別でも、レポートの評価は、採点者によってそれほど変わりません。文章力は訓練によって向上するので、適切な訓練をすることで、よい文章をかけるようにすることが大事で、それによって、知的水準も向上するのです。

 

Q 推薦状に「採用しないほうがよい」と書くのであれば、もともと断ったり、推薦状を出さなければいいのではないか。

A 確かにそのように思いますが、ただ、どこかの公募に応募するときに、指導担当の教授の推薦状が不可欠であるとされていて、教授に対しては、そのような「評価」を書く義務があるとされている可能性があります。「推薦状」というのは、日本的な表現で、おそらく教授の院生に対する評価書類だったのではないかと想像します。

 

Q ハーバードの授業風景を見せられるが、日本でも同じような授業を導入しないのか。また、アメリカと日本の大学の授業に優劣はあるのか。

A アメリカでは、小学校のころから、自分の意見をいうよな授業が行われ、そうした積み上げがあるということ、また授業で説明したように、アメリカの大学は、予習をかなり重視しているために、授業で意見を求められても準備がある学生が多いこと、そして、最後に、授業と院生指導によるゼミが組み合わさっているために、考えを事前にまとめるきっかけがあること、などが、日本との相違でしょう。更に、教育風土として、アメリカは進学が競争試験によって行われる要素があまりないので、「正しい解答−間違った解答」という区分を意識することが、日本に比べて格段に低いので、意見をのべてもネガティブにとらえられることがあまりないのに対して、日本では、「意見」に対して、正しい、間違っているというような意識が強く、間違ったらいやなので、意見をいうことを控えようというように、段々なってしまう傾向があると考えられます。教育のシステムや、風土によるものなので、授業の優劣とはいえないのではないでしょうか。

 

Q 成績のことで教授に事情を聞きたいと申し出ても、相手にされない雰囲気があると思う。

A 教員として反省する必要がありますね。特に成績のことだけではなく、さまざまな不都合を率直にいえる雰囲気が大事だと思います。また、それ以前の問題として、学生の間で、もっと改善されてしかるべきだという意識で、あり方をみたり、提言したりする姿勢そのものが弱く、こんなもんだと思っているということは、ないでしょうか。