国際教育論コメント2018.4.23

Q アメリカの貧困格差と教育格差が問題だが、富裕層と貧困層の割合は。貧しくても優秀な人たちの援助組織はあるのか。結婚状況は。

A 富裕層と貧困層の簡単な数値は、今回の授業のパワーポイントにありますので、それを参照してください。アメリカは、キリスト教国家ということもあり、富裕層の寄付は少なくないので富裕層が助けるという私的な援助が、他の国よりは多くあるといえます。しかし、政治的な公的な制度として、そのような援助組織は、基本的に非常に弱いといえます。

 

Q アメリカと中国の貧富の差の違いについて知りたい。

A  OECD加盟国でのジニ係数による貧富格差の表では、中国は2位で0.51、アメリカは9位で0.38、ちなみに日本は、22位で0.32です。順位は格差の大きい順です。

 アメリカの超富裕層は、その内部での結構が多いようです。結婚は出会う場が重要なので、やはり、似た家庭環境の間の結婚が多いと思われます。

 

Q 日本では奨学金の返済の負担が社会問題になっているが、アメリカでは、返済義務のない奨学金があるというが、奨学金制度でどのような違いがあるか。

A アメリカは、日本よりももっと深刻な奨学金返済問題が起こっているといえます。返済義務のない奨学金というのは、大学がエリート教育であることの反映であって、アメリカや日本のように、大学教育が大衆教育機関となると、奨学金は、返済義務がある制度に通常変化していきます。奨学金というのは、上流階級の相互扶助的な性格をもっている(イギリスパブリックスクール)や、民主主義的原則からくるものでしょうが、大衆教育で多くの人に返済義務のない奨学金を与えると、財政的に行き詰まってしまいます。それで、返済義務が生じるのですが、アメリカの場合は、日本では少数である銀行ローンが主力になっていて、現在の日本のような低金利ではないので、返済が社会問題になっているのは、日本より早くからだといえます。アメリカのドラマで、医学生や若手医師の世界を描いた話には、こうしたローン地獄的な話題がでてきます。

 

Q アメリカで格差を防ぐためにいままで一番有効だったことは何か。

A アメリカでは、長期間、真剣に格差是正政策が行われたことは、あまりないと思います。例外的には、1960年代からジョンソン大統領によって始められ、現在でも続いているヘッドスタート計画でしょうか。どれだけ実効性があったかは、議論の余地がありますが、高く評価する人もいます。これは、いずれこの授業で扱うことになっています。

 

Q アメリカの学力格差の理由が気になる。

A アメリカの学力格差を生んでいる最大の問題は、人種差別、移民問題でしょう。経済的に貧困状態におかれている黒人では、家庭での教育体制は脆弱なので、学力が低い子どもが多いし、移民の子どもは、言葉ができないので、どうしても不利になります。アメリカには、絶えず大量の移民が入ってくるので、学力問題は再生産されます。

 

  日本では無宗教の人がいるが、アメリカの若者はどうか。

A 日本人も、統計的にはほとんどが仏教徒です。日本の仏教は、江戸時代に宗教性を喪失しているので、その影響で、「信仰」としての宗教は、非常に小さな要素になってしまったといわれています。しかし、アメリカは、やはり、宗教的な指導者が重要な役割を、いろいろな場面で果たしてきたので、いまでも信仰心をもっている人が多いのでしょう。そして、自分が無宗教であると公言することは、憚られる雰囲気があります。だから、少なくとも、自分は無宗教であると公言する人は、極めて少ないのではないかと想像されます。

 

Q 進化論を教えていなかったというアメリカで、生物学者は、どのように割り切っていたのか。信仰心が強くなかったということなのか。

A 進化論を教えずに創造説を教えていたのは、学者ではなく、高校の教師ですから、悩みは教師にあったといえ、アカデミックな科学者である生物学者は、そうしたことに、論争はしても、自らの授業で教える義務を負っていたわけではないので、それほど深刻な悩みがあったとは思えません。

 

Q アーミッシュの現在の生活はどうなっているのか。

A http://www.albatro.jp/birdyard/photo/amish/index.htm

 

Q 何故銃規制が行われないの。抗議デモなどが起こっているのに、何がこういう動きをつぶしているのか。

A 基本的には、銃を製造している企業と、銃を愛好する人たち(全米ライフル協会)の人たちの資金力と政治力が強いので、議員たちへのロビー活動によって、銃規制の法案をつぶしてきたということでしょう。銃乱射事件と彼らの活動を追った「ボーリング・フォー・コロンバイン」というマイケル・ムーアのドキュメンタリー映画が、その問題を追求したものとして有名です。

 

 

Q 犯罪ドラマや映画があるので、犯罪はなくならないと感じている。

なかなか重要かつ、難しい問題提起だと思います。テレビやゲームなどの残酷場面が、子どもたちに悪影響を与えて、犯罪を助長するのだという見解は、多数寄せられます。しかし、他方、そうした残酷場面を画面で経験し、ある程度消化してしまうので、実際には残酷さを押しとどめているという見解もあります。もっとも、それはそうしたドラマやゲームを制作している人たちから示されることが多いといえますが。

A 実際のところ、本当のところはよくわからないし、厳密な研究がなされているわけでもないと思われます。そもそも、科学的な研究が可能かという疑問もあります。

 確かに、テレビやゲームで学習する、あるいは、それをみて、本当にやってみたくなる、ということがないとはいえないと思います。でも、テレビやゲームがなかった時代にも、残酷な犯罪はいくらでもあったことも事実であり、たとえば、戦後日本でもっとも犯罪が多かったのは、戦後まもなくの時代であったと言われていますが、そのときには、テレビはなかったし、また、テレビゲームなども存在していなかったのです。

 どちらの疑問にも、あげれば対応する事実はあるのでしょうが、私の好みでいえば、残酷シーンなどは好きではないので、そんな場面のドラマなどはなくなってほしいとは思います。

 

Q トランプは教師が銃をもてばよいといったが、どうなのか。

A まともではないとしかいいようがありませんね。この先生は銃をもっていて、いざというときには撃つかもしれないと思いつつ、授業を受けることなどできないでしょう。

 

Q 職業に就くときの試験のようなものはどうなっているのか。

原則アメリカは、職務別の採用で、新卒一斉採用というようなシステムはなく、個別に必要なときに募集が行われ、個別に採用条件が示されることになります。そのときに、必要な学歴、学校における履修単位、職歴などが書類選考され、面接で採用されるのが普通でしょう。

 

Q インディアンという言い方は勘違いということだが、それほど差別的なものではなかったのか。

A インディアンは征服の対象だったので、差別的以上のひどい扱いだったといえます。

 

Q SATはどのようなものなのか。

A アメリカの大学のところで扱います。