国際教育論コメント 2016.5.30

Q 北欧で失敗した政策はなかったのか。

A 1960年代まで、スウェーデンでは胎児条項があり、どの程度実施されていかは鮮明ではないが、ある程度の実施があったようです。198090年代くらいにかけて、国際的な非難をあびていました。

 医療費が無料であるということで、かなり気軽に診療を受けられるので、待たされることが多いといわれていて、それに不満をもつ人もいるようです。

 

Q 教師が個々の子どもをどのようにサポートしているのか知りたい。

A 日本の教師に比較して、特別なことをしているとはいえないでしょう。ただフィンランドと比較すると、フィンランドでは、教師の仕事が「教える」ことに集中し、余分のことがあまりないために、じっくりと教えることができるし、また、そのための準備も多くできるといえます。

 また、フィンランドでは、「わかる権利」があると子どもたちにしっかりと教えられるので、子ども自身が、わかるまで教師に質問することが、あたりまえの雰囲気になっているといわれています。日本では、わからないから質問する行為は、なんとなく恥ずかしいと思う子どもが多いし、また、全員がわかっているかどうか確認せずに、子どもたちの「大声」での「いいです」の掛け声で、次に進む教室風土があり、わからないままおいていかれる子どもがたくさんいるのが実情でしょう。そうした風土の近いもあるかと思います。

 

Q 成績やテストはあるべきだと思う。それらがなかったら、勉強しなくなると考える。

A それは、日本では、伝統的に、試験も成績を手段として勉強させてきたから、そのような勉強姿勢が形成されてきたと考えるべきでしょう。勉強そのものの面白さを感じさせることによって勉強をさせるようにすれば、テストがなくても勉強すると思います。ぜひ、勉強本来の楽しさを早く味わってほしいと思います。

 

Q 住みやすい人口というのは、その地域の広さや町並みなどによって変化するはずなので、目安を決めることに意味があるのか疑問に思った。

A ある程度まで人口が増えたら、そのあとは建築許可等をしないことで、人口が増えないようにするのです。都市計画を厳格に実施すれば、人口が増えることはありません。土地は十分あるので、別のところを開発して、住宅を建設するわけです。

 

Q 通知表は義務ではないのに驚いた。義務ではないのに、大学入試や高校入試で利用されるのはなぜか。

A 入試の材料とする「調査書」は、通知表の数値を利用するのではなく、指導要録の数値を利用します。指導要録は義務なので、まったく問題ありません。

 

Q オンブズマン制度が行き過ぎると、プライパシーの侵害となる危険性はないのか。

A オンブズマンは、公的な活動を監視するものであって、個人の活動を監視するものではないので、プライバシー問題は生じないと思います。政治家や公務員は、「公人」であって、公人としての活動についても、プライバシーを認めないのが、欧米での普通の考えかたです。クリントン大統領は、不倫を徹底的に暴かれましたが、だれもプライバシーの侵害だと非難するものはいませんでした。日本でも、京都選出の某議員の不倫がメディアでかなり取り上げられましたが、国会議員であるために、フライバシー侵害とはされていません。

 

Q デンマークで何故風力発電が成功したのか。日本や高くは真似できないのか。

A デンマークの風力発電が成功したのは、小さな単位で設置したためといわれています。当初は日本のように大規模な風力発電地帯が構想されたのですが、フォルケホイスコレの活動家たちが、小さな単位を主張して、それが普及して成功したとされています。

大規模な形で風力発電をすると、消費地から比較的遠方に設置するので、送電設備や送電ロスが生じます。そして、大規模な風力発電機だと、騒音被害をだしてしまいます。それに対して、個別の家庭での小さな風力発電だと、その家で使うのが主になるので、送電ロスがほとんどありません。また、家庭には電線が既に敷設されているので、あらたな送電のための設備があまり必要とされません。(家庭での消費と、電力会社にあまった電気を売ることをコントロールする設備は必要ですが。)また、小さなものなので、たいした騒音も発生しないわけです。

 日本では、個別家庭での太陽光発電は、比較的成功しているのではないかと思います。もっともっと普及させれば、かなりの電力を太陽光発電でまかなうことができるのではないでしょうか。もちろん、それだけで足りるということは決してありませんが。

 

Q 北欧の高い政治的透明性をえた経緯や国民の意識とはどんなものなのか。

A 様々な要因があるかと思いますが、基本的には、高い税金とそれに対応した納税者意識の高さでしょう。日本も、消費税が導入されたあと、納税者意識が高くなりました。消費税導入以前は、源泉徴収制度の影響もあって、税金がどのように使われているかという意識は、あまり高いとはいえませんでした。まだまだ北欧に比較すれば、低いでしょうが、それでも高くなったことは事実です。政治家の政治資金などに対する監視の意識が高くなっていることでもわかります。

 納税者意識を高くしている他の原因は、申告納税制度であること、前納制度であることでしょう。

 申告納税制度は、自分で収入と税額を確認するのですから、源泉徴収制度よりもずっと納税者意識が高くなります。日本で源泉徴収制度をやめないのは、税金徴集の効率性だけではなく、納税者意識を低くしておくことが理由でしょう。更に前納制度は、実際に払った税金ですから、その使われ方に対して、より意識的になると考えられます。こうした納税者意識の高さが、税金の使い方を監視する意識を高め、その制度を作ってきたと考えられます。