国際教育論コメント 2016.5.23授業

Q 北欧の国は、学力や経済力がとても高いことに驚いた。いつごろから伸びたのか。

A 戦後福祉政策が堅実に実行された以降徐々に経済力がのび始め、注目されたのは、サッチャーによる福祉政策抑圧後といえます。

 

Q 日本の国際経済力が高いと思っていたが、意外に低いのに驚いた。世界からの評価も必要慈雨ョに低いのが、なぜそのようになってしまったのか。

A 日本の経済力で、明らかに高い順位にあるのは、GDPの大きさくらいではないでしょうか。人口が多ければ、それだけGDPは大きくなる傾向があるので、比較的人口の多い日本の位置としては、多少高め程度ではないでしょうか。他に海外資産も高いのですが、これは、過去の経済が順調だったときの資産もある程度影響しているといえます。

 これから人口減少社会になるとともに、更にGDPの順位は落ちていくと思われます。(やがてインドに抜かれるでしょう。)しかし、逆に、GDPがそれほど重要な意味をもつ指標であるかは、たぶんに疑問で、経済規模の大きさを示すものであっても、国民の豊かさを示すものではありません。GDPが日本よりずっと低くても、国民一人一人の経済的豊かさが日本より高い国はいくらでもあります。GDPを基準として、経済の好調さを判断するようなメディアの見解に、むしろ疑問をもつべきでしょう。

なぜ、日本の経済力が落ちたのか。基本的には、経済格差が広がることで、中間層が分解したことではないでしょうか。その結果貧困層がかなり肥大しました。お金をあまるほどもっている富裕層が、その分消費をするわけではないし、貧困層はあまりものを買うことができません。経済格差は国家的規模・国際的規模では、経済を停滞させるものなのです。経済力の高い国の多くは、格差の少ない、あるいは格差是正政策を重視している国です。

 

Q 戦前から北欧の影響を受けたと感じた。フィンランドは学力が世界一で有名だが、そこから日本は何を学び、教育の場に何を取り入れたのか。

A 戦前受けた影響は、ほとんどがデンマークで、農業再生の政策や農民たちの努力、そして、フォルケホイスコレが影響の大きなものでした。あとデンマーク体操も。

 フィンランドの学力に関する影響は、人によって様々な評価があると思いますが、あまり政策的にはあまり影響されていないと思います。

 日本の政策担当者の「教育意識」「学力意識」は、基本的に学習量と競争にあり、フィンランドの教育は、かなりそうした姿とは遠いからです。実は、PISAでベストテンにはいっている国の教育は、ほとんどが競争主義的な教育であり、フィンランドは例外なのです。福田誠治という都留文科大学の教授が、フィンランドの競争的ではない教育のありかたを取り入れようと、かなりの著作を書いていますが、読者の心を捉えたけれども、政策担当者への影響はあまり感じられません。PISAの反省で出てきた政策は、ゆとり教育の削減(現在では脱ゆとり)と学習量・学習時間の増加だったわけで、それらは、PISAで低い評価だった国の多くがとった政策でしたが、フィンランドの特質とはかなり違うものであるといえます。

 

Q デンマークは当初EU加盟を拒否したとあるが、その後とどのような敬意でEUに加盟することになったのか。

A 1992年12月31日の朝日の新聞記事を紹介します。

●欧州統合 道なお険しく

 2月7日、欧州共同体(EC)加盟国は欧州連合条約(マーストリヒト条約)に正式調印。条約はECの憲法といえるローマ条約の改訂版で「単一通貨」「共通外交」「欧州市民権」がキーワード。

 順調に進んできた統合に痛打を浴びせたのは、6月2日デンマークでの国民投票が示した条約否決だった。同月19日にはアイルランド、続いてルクセンブルク、ギリシャが批准を可決したものの、フランスの国民投票を控えマルクの独歩高が続き、9月16日には英国とイタリアが為替相場安定制度(ERM)から一時離脱した。9月20日行われたフランスの国民投票では、小差で条約批准が確定。「デンマーク・ショック」でつまずきかけた統合への歩みはかろうじて立て直された。

 12月12日、今後のカギを握るデンマークに対し、単一通貨・共通防衛への参加免除を認めた。18日にはドイツが条約批准、EC12カ国中10カ国が批准を済ませた。

 1993年1月1日からは単一市場が実現するが、その先の欧州連合という大目標に向かってなお困難な道が続く。