国際教育論 コメント 2016.5.9授業

Q アメリカの大学は入学が容易だが、その後が大変だという話をきいたが、疑問に感じた。

A 疑問に感じたのが、何故かわかりませんが、少なくとも州立大学については、入学が容易だが、卒業は難しいというのは、事実です。高校の成績といっても、それほど高いものを要求されるわけではなく、また、資格試験としてのSATの問題は、日本でいえば、中3か、精々高1程度なので、それほど難しい問題ではないし、資格試験なので、ある基準を満たせばよく、更に、試験は年に数回あるので、日本に比較すれば、かなり容易だと思います。

ハーバード大学などのような、私立の有名大学は、選抜試験なので、入るのはかなり困難です。

 

Q アメリカの大学におけるレポートの不正対策はどのようなものがあるのか。

A 大学として行うのではなく、不正レポートをチェックする企業があって、そこに委託するのが多いようです。システムを購入して、大学の部局で行う場合もあるでしょう。日本のようなコピペ対応であれば、特に発見は難しくないのですが、アメリカの不正レポートは、お金を払って代筆してもらうものなので、(代筆を人間がやるか人工知能がやるかで、おそらく料金が異なるものと思われます。)コピペのように検索機能を使って済むものではないようです。特別な何かアルゴリズムがあって、疑わしい、非常に疑わしいというような判定をして、あとは、本人に確認するのかも知れません。

学生がレポートをコピペしたり、他の人に代筆してもらったりすると、なんとなく雰囲気でわかるものですが、アメリカの場合には、より組織的に業者が行っているようです。


Q 日本の大学が発展するためには、何が必要なのか。

A みなさんに、大いに考えてほしいところです。基本は、学生にしっかり勉強させる、そのために教師がすべきことをしっかりやるということではないでしょうか。


Q アメリカのコミュニティ・カレッジと日本の通信制高校は似ていると感じたが、違いは何か。

A 誰でも入れるところは似ているでしょうが、それ以外は似ている面は少ないと思います。

コミュニティ・カレッジでは、きちんとしたカリキュラムにしたがって、授業が行われるし、単位認定が行われます。卒業すると、4年制への編入の資格が発生します。それに対して、日本の通信制高校は、生徒の多くは、他の高校を退学したものであって、何らかの問題を抱えている場合が多いので、生徒の学力や意欲の格差が大きく、実際にはしっかりした学習が行われていない場合も少なくないようです。また、スクーリングが行われる場所が、多くの通信制高校では、あちこちに設定されていて、通信とスクーリングが組みあわされているのが普通で、しかし、出席義務はかなり柔軟なようです。

教育内容も、コミュニティ・カレッジは高等教育であり、通信制高校は当然中等教育です。


Q アメリカの大学では、履修登録の単位数で授業料がきまるということだが、授業料を多く払わせるために、故意に落とすようなことはないのか。

A 落としたからといって、落とした教員の収入になるわけではないので、それはないと思います。ただ、アメリカの大学では、しっかりした試験答案やレポートでない限り、単位認定は安直にしないのが普通です。それは、授業料を稼ぐためよりは、やはり水準を保つためで、落とした学生のために、サマースクールが開かれて、必修などについては、もう一度授業を取り直す機会が与えられます。(有料)

日本の場合、科目間の順序(Aの授業を履修するためには、前年にBの授業を履修している必要がある、というような条件)がほとんどないので、翌年の再履修で済むことが多いですが、アメリカはそうした条件付けが日本より多いので、その年度内に履修しておく必要があるので、サマースクールなどの救済策があるわけです。また、救済策があるために、不十分な者は落とすことになります。


Q アメリカの大学は競争の選抜がない大学が多いというが、いくつかの大学に入学者が集中してしまうことはないのか。

A 競争ではないのは州立大学ですが、州立大学は、基本、住んでいる州の大学に入学するし、分校があっても、遠くにいくことはあまりないので、ある程度入学予想ができます。基本大きめにつくってあるので、集中してこまることはあまりないと思われます。

私立大学は選抜試験をするので、志願者が多くいても、入学者は一定です。


Q どのくらいのひとが大学院に進むのか。軍や政治との関わりとは具体的にどういうものか。

A 通常の意味での進学率の統計はないようです。だいたい多くのデータでは、人工千人あたりの大学院生の数という数値で、アメリカは9人、日本は2人ということになっています。大学院の場合には、日本でも、23歳で進学するのが多いにせよ、平均年齢はもっと高いし、社会人の入学も少なくないので、大学と同じような進学率を出す意味があまりないし、また難しいようです。

 文教大学では、臨床心理学科の大学院進学が最も多く、だいたい40名が進学します。(浪人も含めて)120名定員なので、だいたい3分の1、33%くらいになります。他の学科はもっと少なく、おそらく3〜4名でしょう。すると、2・5%くらいでしょうか。あまりに違うので、どちらが日本の平均的なところか迷うところですが、中間的に6%程度だとすると、アメリカの大学院進学率は、20%程度ということになるでしょうか。ただし、こうした数値に意味があるとは思いません。  

アメリカは、専門職につくためには、大学院は多くの場合、必須であるということです。

軍と大学の関わりの中心は、軍事技術の開発研究を、大学で行うということです。コンピューターは大学で研究開発されたものですが、当初の目的は、砲弾の着地点の正確な計算でした。飛行機やレーダー等々、多くの最新の軍事技術は、大学の研究を基礎にしているし、当初から軍の予算で研究が行われることも少なくありません。

政治の分野はもっと直接的で、大学の教師が政府の高官となって出向したり、またその逆の人事が行われたりするわけです。また、政府の高官が非常勤講師として、大学の授業を受け持ったり、あるいは、大統領クラスが大学で講演会をしたりするのも、頻繁にあります。