教育行政学コメント 2019.6.27

Q 教師が逮捕された場合、免許は剥奪されるのか。また、剥奪になった場合、二度と取得はできないのか。

A 免許が失効するのは教職免許法10条に規定されています。

 

第十条 免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その免許状はその効力を失う。

一 第五条第一項第三号、第四号又は第七号に該当するに至つたとき。

二 公立学校の教員であつて懲戒免職の処分を受けたとき。

三 公立学校の教員(地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十九条の二第一項各号に掲げる者に該当する者を除く。)であつて同法第二十八条第一項第一号又は第三号に該当するとして分限免職の処分を受けたとき。

 

そして、五条とは

第五条 普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。

一 十八歳未満の者

二 高等学校を卒業しない者(通常の課程以外の課程におけるこれに相当するものを修了しない者を含む。)。ただし、文部科学大臣において高等学校を卒業した者と同等以上の資格を有すると認めた者を除く。

三 成年被後見人又は被保佐人

四 禁錮こ 以上の刑に処せられた者

五 第十条第一項第二号又は第三号に該当することにより免許状がその効力を失い、当該失効の日から三年を経過しない者

六 第十一条第一項から第三項までの規定により免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者

七 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

 

 ただし、逮捕されただけでは失効しません。裁判で有罪が確定して初めて、5条が適用されることになります。ただし、懲戒免職になった場合には、その時点で失効します。

 二度と免許がとれないのか、という点ですが、有罪で失効の場合には、授与されませんので、取得できないことになります。ただし、10条による失効の場合には、刑罰以外の理由による懲戒解雇、あるいは、刑罰でも罰金刑レベルだと、5条5項によって、3年経過したものは、取り直すことが可能といえます。

 

Q スクールカウンセラーは何故2週に1回しか来ないのか。

A 通常は週に1度来ると思います。もし2週に1度だとすると、そういう契約になっているからでしょう。スクールカウンセラーは、その人がもっている資格にもよりますが、臨床心理士の資格保有者だと比較的人件費が高いので、貧しい自治体だと2週に1度にしているかも知れません。また、安く雇える他の資格保有者を雇用している自治体もあります。いずれにせよ、何曜日に勤務という契約がほとんどです。

 

Q 子どもが担任のことをスクールカウンセラーに相談して、その子だけがクラスがかわることはあるのか。

A 明らかに、その担任とその子どもが一緒にいることに大きなマイナスがある場合に、認められないことはないでしょうが、通常、担任と子どもの相性のようなもので、学年途中で担任が代わることは、ほとんどないといえるでしょう。そういう場合の実際的な結果は、不登校になると思いますが、親が子どもを転校させることもあると思います。

 

Q 中学のころ、学年内でつきあっている生徒がわかると、担任は他の先生と共有するために教えていた先生がいた。言われた生徒は不快だったが、守秘義務に違反しないのか。

A 指導上必要である場合に、学校内に限定して、教師間だけの共有情報として守られていれば、守秘義務には反しないと思います。生徒たちもおそらく知っているでしょうから。しかし、それを学外で誰かに述べたりしたら、守秘義務違反となる可能性があります。ただそういうことは、教師より生徒間で広まるでしょうから、生徒たちは一切黙っているのに、教師が学外で広めたということがはっきりしない限り、守秘義務違反に問われることは、少ないのではないでしょうか。

 もっとも、その学校では男女交際が禁止されていて、発覚すると懲戒処分の対象となるというような場合は別でしょう。

 

Q 教師が塾で講師をしてはいけないか、理由がわからなかった。

A 基本的には社会的批判が強いという理由でしょう。

 

Q 教育熱心、あるいは親が優秀な地域の学校に、優秀な教師を集めることがあるが、それは妥当なのか。

A 妥当かどうかは、考え方によると思います。学校での大きな価値は、学力にあることは、世界共通ですが、学力が優秀であることを重視して、そこに重点をおくような政策をとる場合と、逆に、学力が低い状況にあるところに、重点的に補充していく政策をとる場合があります。日本は前者であり、フランスやオランダが後者であるといえます。

 日本では、多く自治体で、伝統的な名門の学校を「あがり」として、優秀な教師を集めたり、特に優秀な校長をその学校で定年を迎えさせるというようなやり方をとっています。私の住む自治体では、その校長が次に教育長になるというような伝統もあります。

 地方版学力テストが実施されているところで、成績がよいと特典をあたえるやり方が日本では一般的ですが、オランダでは、逆に、学力が低いとされた学校や、移民の多い教育上不利な学校には、特別予算を加算する方法をとっています。フランスでは、貧困家庭が多い地域で、同様の政策をとっています。

 どちらの考えかたが、教育全体のレベルをあげていくのに適切なのか、自分で考えていくことが必要でしょう。

 

Q 教師は、教育に関係ない副業はすべてだめなのか。(小説書くなど)

A 要は「許可を受けて」ということに集約されるでしょう。ただし、勤務時間以外に家で小説を書くという行為は、「業」と見なされるかどうかは、場合によるのではないでしょうか。小説が売れるようになるまでは、かなり時間が必要で、人によって、一生売れる小説を生みだせないわけですから、密かに書いている分には禁止の対象にもしようがありません。

 売れて印税収入を得られるようになり、その人が小説を書いていることがわかるようになれば、届けをだすように言われるかも知れませんが、常識的には、禁止されることはないように思います。授業に支障が出ていない限りは。

 

Q 担任を任されたら、断ることはできないのか。

A 担任を決定する権限が校長にあるということは、明確です。しかし、どのような過程をへて決定するか、また、決定に不服な者がいた場合、どのように処理するかは、校長の判断によります。柔軟な考えの人であれば、事前に希望を聞くでしょうから、よほどのことがない限り、嫌な形での担任となる可能性は低いでしょうし、また、決定後であっても、なんとか調整するでしょう。そういうことは、権限の運用にかかわることで、規則の問題ではありません。校長が、この決定が最終のものだと断言すれば、断ることはできないと考えるのが妥当です。

 

Q スクールカウンセラーは、自分だけで解決できないときには、「担任と相談していいか」と断るようにと学んだ。守秘義務は大事だが、教師との連携は重要だ。

A 守秘義務というのは、「本人の了解なしに個人情報を開示してはいけない」というものであって、本人の了解があれば、それは守秘義務ではなくなります。そういう意味で、「本人の了解」をえることが大事ということなのです。学校における子どもの問題は、個人で解決できることはあまりなく、学級の問題でもあるので、担任と相談する必要があることが普通です。従って、カウンセラーが子どもから相談を受けたら、どうやって解決したいか、誰と相談する必要があるか、等々について、きっとりと確認する必要があります。

 

Q 守秘義務は子どもの家族にも適用されるのか。家庭訪問も保護者面談はどういう扱いなのか。

A 単純な答はないと思います。一般的に、子どもは親の「親権」に服しており、保護下にあります。従って、子どもの問題を保護者に報告することは、必要なことであって、報告を怠ることのほうが問題でしょう。しかし、稀には、子どもが、親に秘密にしておきたいと考え、そのことに合理性がある場合があるかも知れません。その場合には、将来どう解決したらよいかを相談しつつ、当面は、親にも告げないことはありうると思います。しかし、親から、何故知らせてくれなかったのか、というクレームがある可能性もあります。そこらは、どのように、問題を解決していくのか、教師や学校の問題解決能力が試されるといえます。

 

Q スクールカウセンラーが、誰にも言わないというので相談したが、担任に話されているのは、信用を失うのではないか。

A 上に基本的なことは書きましたが、その通りの状況であるとしたら、信用を失うでしょうし、また、守秘義務違反にもなります。

 

Q 今後教員採用の数が増えることはないのか。

A 今の人口構成と、数年前までの大量採用から考えると、増えることはまず考えられません。

 

Q 塾講師は正社員扱いで、スポーツ指導員はそうではないという違いではないか。

A 授業で行ったのは、あくまでも、自分自身はどう考えるのかということです。禁止内容は自治体ごとに違っており、また、時期でも違っています。例えば、塾は、以前は普通に学校の教師がやっていました。禁止になるきっかけは、たいていは社会、地域、保護者からの批判です。だから、あまり論理的な理由ではないのです。

 

Q 新卒の離職率が高いというが、何か自治体として対策をしているのか。

A 離職率が高い理由は、長時間労働、子ども対応、保護者対応への苦労などが主な理由です。

 対策について、いろいろと調べてみましたが、メンタルヘルスに力をいれるというような対策はあるようです。しかし、学校現場というのは、自治体で政策をうち出しても、個々の学校現場に浸透しないことはいくらでもあります。

 体罰が法律で禁止されており、体罰をしたら、懲戒の対象となることは知られているのに、体罰をする教師はあとを絶たないことでもわかります。長時間労働をさせるなと、教育委員会が指示しても、遅くまで教師を残らせる学校はたくさんあります。

 逆に、教師が早くかえったりすると、地域の人から、「教師は楽ですね」とクレームがでることもあります。教師は、給食指導で昼休みがとれないので、その分、退職時間を30分早めていたのですが、住民のクレームでその措置が現在では、ほとんどなくなっています。つまり、昼休みがとれないことは、法律上の違反なのですが、その違反が状態化しています。

 つまり、社会の感覚が、教師の労働条件を悪化させていることが、いろいろとあるのです。その場合、行政として対策をとろうとしても、難しいことがあるわけです。

 

Q 「受験は団体戦」ということで、受験結果が貼りだされていたが、受験は団体戦なのか。貼り出しの意図は。

A 私立の学校(公立も多少は)は、「生き残り」がかかっているので、学校のアピールをしなければなりません。そのアピールポイントはいくつかありますが、進学実績はその最たるものです。だから、「高校」としての進学実績を示す必要があるので、団体戦という表現を使ったのでしょう。