教育行政学質問回答 2019.4.18

義務教育原理関連

Q 学校給食費など、補助のラインはどうなっているのか。クリーンなのか。(兄弟や親の収入で変わるのか)

A 就学補助は、すべて法律に基づいて行われ、基準は明確にされています。知らない人も多いので、教師になる人は、こうした基準を認識して、該当する家庭には、情報提供してあげる必要があると思います。(申請しなければ給付されない)法律はパワーポイントに載せてあり、具体的に基準は、施行規則、あるいは施行令にあります。ただし、額は改訂されるので、その都度参照する必要があるでしょう。

 

Q 教育義務にしない理由はなにか。

A 国家が作った教育システムを受けさせることで、国家目標を国民に浸透させるためと考えるのが、一般的でしょう。

 

Q 就学義務の形を基本にして、教育義務のよい面を取り入れることはできないのか。

A 就学義務は選択肢がありませんが、教育義務は、就学してもよいし、家庭等で教えてもよいので、それぞれのよい方を選択できるという意味では、教育義務は、そうなっています。

 

Q 教育義務の国は実際に学んだという証明をするものはあるのか。

A アメリカではありません。デンマークは、義務教育修了の学年で修了試験があるので、不十分な人は、エフタースコレという、10年生のための学校を通う場合が多いと思います。もっとも、エフタースコレは人気があるので、優秀な生徒も多いようです。高校に進むことを敢えて一年遅らせるわけです。

 イギリスには、義務教育段階、大学進学前の段階で、全国的な認定試験があり、前者が実質的な義務教育修了試験のようになっています。

 しかし、これらは、不合格だと、義務教育未修了とされ、義務教育年齢が延長されるという意味ではありません。ただし、上級学校に進学することが難しくなる、あるいは不可能になるという制度になっていることが多いでしょう。

 また、ヨーロッパでは、義務教育段階での落第があるので、それぞれの学年で修得すべき内容をこなしていないと、進級できないので、これが、学んだ証明にはなります。

 

Q 地元で小中一貫校が増えているが、全体的にそうなのか。

A 数年前に学校教育法が改訂されて、一条校に「義務教育学校」というのが加わりました。義務教育学校は、小学校と中学校と一体化させたもので、一貫校よりももっと強い一貫性をもった学校として構想されています。こういう学校の類型を新設するということは、小学校と中学校の一体化が好ましいという文部科学省の考えがあるのでしょう。それに応じた形になっている思います。北欧諸国では、1960年代に国民的な議論の結果、基本が小中一体の「国民学校」に再編成されています。日本の場合には、中高一貫の学校もあるし(中等教育学校)、別々の学校だけれども、接続された学校とされている学校もあり、統一感がありませんね。

 こうした義務教育学校は、まだ数があまりないので、明確ではありませんが、中等教育学校は、通学区指定がないので、学力以外の選抜があります。したがって、通常の小学校、中学校以外の類型をつくっていく政策は、選抜試験をより広範にしていこうという政策の現れであるとも考えられ、慎重な評価が必要でしょう。

 

院内学級関連

Q どのくらい入院していると、院内学級を受けられるのか。

A 以前は6カ月以上という条件があったようですが、今は期間の条件はないようです。

 

Q 院内学級はどんな人が教員として派遣されるのか。

A 院内学級は、法的に整備された学校ではなく、誰でも義務教育を受けられるように保障する必要から、長期入院している子どものために、教師を派遣するわけで、病院や子どもの状況によって、あり方は様々なです。大きな病院にあるのが普通で、小さな病院にはないといってよいでしょう。

 院内学級用の教師資格とかがあるわけではなく、随時必要に応じて、選抜された正規の教員が派遣されます。

 

Q 長期入院している子どもは、どの病院でも院内学級で教育を受けられるのか。それとも、そういう病院にはいる必要があるのか。

A 地域の基幹の大病院に置かれます。そもそも子どもが長期入院するのは、簡単な病気ではありませんから、難病が治療できる大病院だということです。

 

幼児教育関連

Q 幼児教育を義務化したときに、施設はあるのか。

A 今回の授業で説明したように、義務教育の義務とは、国家が背負う義務なのです。したがって、幼児教育が義務化されたら、国家が幼稚園を整備する義務が生じるのです。もちろん、現在の幼稚園は、多くが私立幼稚園ですから、それを無視して公立の幼稚園を作るのではなく、不足分を作ることになるでしょうが、それはこれまでの国家の学校設置義務の論理とは、かなり異なることになるので、議論にはなるでしょう。そこまで踏み込みたくないから、幼稚園の無償化ということで、ごまかしていると考えられなくもないのです。

 

Q 幼児教育が義務であるイギリス、オランダなどで、自由教育でどのようなことが行われているのか。

A イギリスもオランダも多様な教育を認めている国家なので、どのようなことが行われているかは、学校によって異なると思います。イギリスやオランダでは、このような幼児教育が行われていますといきってしまうと、逆に誤解するといえます。

 

Q 幼児教育を受けた子どもとそうでない子どもで、将来学力の差が生じるのか。

A 今は幼児教育を受けない子どもは、ほとんどいないので、その比較はできないでしょう。他方、保育園に通った子どもと、幼稚園に通った子ども、幼稚園の場合、自由保育の子どもと、教育的保育の子どもとの比較は可能だと思います。しかし、その比較研究調査は、あまりみたことがありません。

 

少年院関連

Q 中学時代に少年院に入り、出たあと高校の入学試験を受けることができるのか。

A 少年院法に次のような条文があります。

27

教科指導により学校教育法第一条に規定する学校(以下単に「学校」という。)のうち、いずれかの学校の教育課程に準ずる教育の全部又は一部を修了した在院者は、その修了に係る教育の範囲に応じて当該教育課程の全部又は一部を修了したものとみなす。

2

少年院の長は、学校の教育課程に準ずる教育について教科指導を行う場合には、当該教科指導については、文部科学大臣の勧告に従わなければならない。

 したがって、ここで修了認定を受けられれば、高校受験も大学受験も可能になるといえます。

 

ホームスクール関連

Q ホームスクールの人は誰に教育してもらうのか。

A ホームスクールの人(ホームスクーラーといいます)は、誰に教育してらもってもいいのです。親、親の知人、学習センター、インターネット、自習等々あります。授業でも説明したように、アメリカのホームスクーラーで学習をきちんとした人の割合は、20%程度といわれているので、やはり、学校にいった者のほうがしっかりと勉強していることになります。しかし、20%の人たちは、自律性が高いとして、高く評価されます。

 

Q アメリカでホームスクールでやっている人のコミュニケーション能力は、学校教育を受けている人と比較してどうなのか。

A 一概にはいえないでしょう。学校はかなり閉鎖的な社会ですから、人間関係もかなり単純です。しかし、ホームスクーラーは、多様な人と交わることができるので、高いコミュニケーション能力を育てる人もいるだろうし、親などの近い人としか交流しない人もいるでしょうから、その場合には、学校で学んだ人よりも貧困なコミュニケーション環境になってしまいます。

 

その他

Q 文教大学では、繰越金が多いのに、大学のために使われていないのではないか。

A 私の認識する限りでは、文教大学は、財政的に極めてクリーンな大学です。スポーツ推薦のような、不明朗な入学システムをとっていませんし。

 現在繰越金をかなり貯めていると思いますが、それは、足立キャンパスを設置するための費用が必要だからだと、教職員は考えています。ひとつの号館を作るのでも多額の費用がかかりますが、キャンパスそのものを作るわけですから、膨大な費用が必要です。