大学入試

共通テスト 「話す」「考える」へ動き 保護者・教師、期待と注文

 

 2020年度に大学入試センター試験に代わって始まり、現在の中学3年から対象になる新共通テスト。「共通1次」がセンター試験に衣替えして以来、約30年ぶりの改革への関心は高い。文部科学省が実施方針案などを公表した16日、大きく変わる英語や国語について、保護者や高校の教諭は評価する一方、注文も付けた。

 

 「中学校の個人面談で、センター試験の仕組みが変わると聞いていた。年に複数回受験できる英検などを活用できると一発勝負でなくなり、子どもたちにとって良いと思う」。中2と中1の息子がいる東大阪市の主婦(47)は、英語の民間検定試験の活用を歓迎する。大阪市内の私立高英語科に通う高1の娘は、現行のセンター試験の最後の世代で、新テストをうらやましがっているという。

 

 文科省は試験をする民間業者に、低所得世帯の受験生の経済的負担を軽減する方針を示した。この主婦は「大学受験は受験料や入学金など費用がかさむ。経済的な理由で検定を受けられないことにならないよう、補助制度などを考えてほしい」と要望した。

 

 奈良県内の私立中高一貫校で英語を教える男性教諭(35)は4月に授業の方法をがらりと変えた。高校3年を担当した昨年度は、英文法を覚えさせ、英作文を指導した。今年度の受け持ちは5年後に新テストを受ける中学1年。議論などをして生徒に主体的に考えさせるアクティブラーニングを取り入れ、リスニングやスピーキングに力を入れて、黒板は使わない。

 

 男性教諭は「保護者はテストが変わると知っている。昔ながらの授業をしていたら、不安にさせてしまう」と打ち明ける。「英語の試験の概要がもう少し詳しく示されたら、授業の方向性も定まる。早く知りたい」と話した。

 

 国語は地域の課題や契約書を用いた問題例が示された。神奈川県の県立高校で国語を教える女性教諭(57)は「これまでの出題は文学的な作品に偏っていた。問題自体の難度は高くないが、日常生活に関わる出題には好感が持てる」と評価する。

 

 教育現場では「習得した知識をどれだけ活用できるか」を重視する傾向にある。女性教諭は公表された問題例を、「自分の意見を論述する問題にはなっていない。現代の高校生に求める国語力はその程度でよいのかとの疑問は残った」と語った。【水戸健一、金秀蓮、岡崎英遠】

 

「基礎学力」も民間活用

 文部科学省は16日、高校生の基礎学力の定着度を把握する目的で2019年度から実施する「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」について、民間試験を活用する方針を明らかにした。どの試験を採用するか判断するための基準の策定を進める。

 

 基礎診断は国語、数学、英語の3教科。英語は4技能(読む・聞く・話す・書く)を評価する。

 

 受検時期や回数を学校が選べる仕組みで、結果を指導の改善に生かす。従来の仮称は「高校基礎学力テスト」だったが、本来の趣旨に近い「基礎診断」に変更した。【伊澤拓也】

 

国語・記述式の例 広報資料や駐車場契約書 「実用」文書題材に

 文部科学省は16日、2020年に大学センター試験に代えて始める新共通テストの実施方針案と併せ、国語と数学で導入する記述式問題の例を公表した。国語は、自治体の広報資料や駐車場の契約書など実用的な題材の文章を読み、字数制限などの条件を満たして的確に表現できるかを問う内容で、センター試験にはない形式となる。

 

 対象科目は「国語総合」と「数学1」で、問題例は大問2問ずつの計4問。国語の1問目は、架空の自治体が作成した景観保護についての広報資料や、住んでいる場所が保護地区に指定された親子の会話から、住環境と観光政策のあり方を考えさせる。会話に出てくる「一石二鳥」の内容を説明させたり、登場人物の意見を書かせたりする。2問目は自動車の駐車場使用契約書を読ませたうえで、料金値上げに納得のいかない借り手が貸主にする質問の内容や、トラブルを避けるために契約書に盛り込むべき内容を答えさせる内容だ。

 

 小問は計7問。最も短いものは20字以内、長いものは120字以内で解答させ、全てに「2文でまとめ、1文目に……を簡潔に示すこと」「……という文末で終わるように」などの条件を付けた。

 

 各問いについて「正答の条件」も公表し、この条件をどれだけ満たしているかに基づいて段階的に評価する方法を示した。この問題例は今年2〜3月、大学1年600人を対象にした調査で実際に解かせ、条件を全て満たした正答の割合は全7問の平均で33.1%だった。数学の記述式は数式などで解答させるが、出題内容自体に大きな変更点はない。【伊澤拓也】

 

 

大学入試

新「センター試験」 英語「実践力測れる」 民間検定利用 経済格差に懸念

2020年度に大学入試センター試験に代わって始まり、現在の中学3年から対象になる新共通テスト。「共通1次」がセンター試験に衣替えして以来、約30年ぶりの改革への関心は高い。文部科学省が実施方針案などを公表した16日、大きく変わる英語や国語の試験について、保護者や高校の教諭は評価する一方、注文も付けた。【水戸健一、青木絵美、山下俊輔】

 

 「今後、社会では英語がさらに重要になる。これまで英語の試験で成績が良くても、話せるわけでなかった。社会人も受け、実践的な力を測る試験の活用は良いと思う」。中学2年の息子を持つ千葉県市川市の母親(43)は英検やTOEFLなどの民間検定試験の利用を歓迎する。

 

 ただし、例示された10種類の試験は、検定料が3000円台から約2万5000円かかり、試験会場数も十数カ所から約1万7000カ所と開きがある。

 

 中学生の長女ら4人を育てる一人親で、福岡県太宰府市の会社員、行正(ゆきまさ)奈央さん(38)は検定料割引など民間業者に配慮を求める文科省方針に「家計が厳しく、試験を受けさせたくてもできない親にとって割引は絶対に必要だ」と指摘する。検定前の学習機会も通塾などで経済力による格差が生じかねない。「親が試験を受けさせないと言えば格差はますます広がる。学校で統一して受けられるなど、平等性を意識してほしい」と注文を付けた。

 

 福岡県内の中高一貫校で進路指導を担当する50代の男性教諭は、英語の民間検定試験の受験時期が高校3年に限られることに疑問を感じる。「学校行事や模試がある中、民間試験と日程が合うかどうか。2年生の間に受けられれば(生徒も)安心だと思う」と話す。

 

 奈良県内の私立中高一貫校で英語を教える男性教諭(35)は4月に授業の方法をガラリと変えた。高校3年を担当した昨年度は、英文法を覚えさせ、英作文を指導した。今年度の受け持ちは5年後に新テストを受ける中学1年。議論などをして生徒に主体的に考えさせるアクティブラーニングを取り入れ、リスニングやスピーキングに力を入れる。「試験の概要がもう少し詳しく示されたら、授業の方向性も定まる。早く知りたい」と話した。

 

 国語は地域の課題や契約書を用いた問題例が示された。神奈川県の県立高校で国語を教える女性教諭(57)は「これまでの出題は文学的な作品に偏っていた。問題自体の難度は高くないが、日常生活に関わる出題には好感が持てる」と評価する。

 

 教育現場では「知識の習得」でなく「習得した知識をどれだけ活用できるか」を重視する傾向にある。女性教諭は公表された問題例を「文章を注意深く正確に読み取る点に重きを置いている」と分析しつつ、「自分の意見を論述する問題にはなっていない。現代の高校生に求める国語力は、その程度でよいのかとの疑問は残った」と語った。

 

大学入試

新共通テスト 英語、全都道府県で複数回 民間活用し実施 国語・数学、記述3問

 文部科学省は16日、大学入試センター試験に代えて2020年度に始める新共通テストの実施方針案を公表した。英語は民間検定試験を活用し、全都道府県で1年に複数回実施する。民間業者には低所得世帯の受験生の検定料を減免するよう求める。国語と数学で導入する記述式問題は、マークシート式と同じ時間内に実施して3問程度ずつ出題し、採点は全て民間に委託する。

 

 文科省は高校・大学関係者らから意見を聞き、ホームページで国民から意見を募った上で、6月に実施方針をまとめる。

 

 11月と来年12月ごろに現在の高校2年の5万〜10万人を対象に行うプレテストの結果も踏まえ、19年度初めに実施大綱を策定する方針だ。

 

 英語の民間試験は、英検やTOEFLなどのうち、学習指導要領に対応したものを大学入試センターが「認定試験」と定め、試験の素点と合わせて、国際基準規格「CEFR」(セファール)に基づき6段階で評価した成績を大学に提供する。高校3年の4〜12月に2回受験でき、良い方の成績を使えるようにする。浪人生は今後検討する。

 

 文科省が例示した10種類の中には、会場が十数カ所だったり、検定料が約2万5000円と高額だったりする試験もあり、全都道府県での複数回実施や、低所得世帯への配慮を民間業者に求める。実施方針案では、20年度に民間試験に切り替える案と、23年度まで現行方式の試験と民間試験を併用する2案を提示した。いずれにするかも6月までに決める。

 

 国語と数学は、記述式の解答に時間がかかることを踏まえ、国語は試験時間を80分から100分に、数学は60分から70分に延長する方向で検討している。

 

 記述式の採点は大学入試センターから委託された民間業者が設問ごとに3〜5段階で評価する。成績は同センターがマークシート式の得点とともに管理し、大学からの請求に基づいて提供する。

 

 これまで新テストの仮称を「大学入学希望者学力評価テスト」としてきたが、「大学入学共通テスト」に変更した。【伊澤拓也】

 

大学入試

新共通テスト 国語の記述式問題、行政資料や契約書

 文部科学省は16日、2020年度に大学センター試験に代えて始める新共通テストの実施方針案と併せ、国語と数学で導入する記述式問題の例を公表した。国語は、自治体の広報資料や駐車場の契約書など実用的な題材の文章を読み、字数制限などの条件を満たして的確に表現できるかを問う内容で、センター試験にはない形式となる。

 

 対象科目は「国語総合」と「数学1」で、問題例は大問2問ずつの計4問。国語の1問目は、架空の自治体が作成した景観保護についての広報資料や、住んでいる場所が保護地区に指定された親子の会話から、住環境と観光政策のあり方を考えさせる。

 

 2問目は自動車の駐車場使用契約書を読ませたうえで、料金値上げに納得のいかない借り手が貸主にする質問の内容や、トラブルを避けるために契約書に盛り込むべき内容を答えさせる内容だ。この問題例は今年2〜3月、大学1年600人を対象にした調査で実際に解かせ、正答の割合は小問全7問の平均で33・1%だった。【伊澤拓也】

 

大学入試

新共通テスト 英語、実践力わかる 検定料負担、格差も 民間利用、保護者ら関心

 2020年度に大学入試センター試験に代わって始まり、現在の中学3年から対象になる新共通テスト。「共通1次」がセンター試験に衣替えして以来、約30年ぶりの改革への関心は高い。文部科学省が実施方針案などを公表した16日、大きく変わる英語や国語の試験について、保護者や高校の教諭は評価する一方、注文も付けた。【水戸健一、金秀蓮】

 

 「今後、社会では英語がさらに重要になる。これまで英語の試験で成績がよくても、話せるわけではなかった。社会人も受け、実践的な力を測る試験の活用はよいと思う」。中学2年の息子を持つ千葉県市川市の母親(43)は英検やTOEFLなどの民間検定試験の利用を歓迎する。

 

 ただし、例示された10種類の試験は、検定料が3000円台から約2万5000円かかり、試験会場数も十数カ所〜約1万7000カ所と開きがある。母親は「高校3年は2度の受験が認められるが、検定料が負担で1度しか受けられない子も出てくると思う。会場が遠ければ、交通費もかさむ。国は補助制度を設けることも考えてほしい」と要望し、「学校の授業も検定試験対策に内容が変わっていくのかな」と話した。

 

 奈良県内の私立中高一貫校で英語を教える男性教諭(35)は4月に授業の方法をがらりと変えた。高校3年を担当した昨年度は、英文法を覚えさせ、英作文を指導した。今年度の受け持ちは5年後に新テストを受ける中学1年。議論などをして生徒に主体的に考えさせるアクティブラーニングを取り入れ、リスニングやスピーキングに力を入れて、黒板は使わない。

 

 男性教諭は「保護者はテストが変わると知っている。昔ながらの授業をしていたら、不安にさせてしまう」と打ち明ける。「英語の試験の概要がもう少し詳しく示されたら、授業の方向性も定まる。早く知りたい」と話した。

 

 国語は地域の課題や契約書を用いた問題例が示された。神奈川県の県立高校で国語を教える女性教諭(57)は「これまでの出題は文学的な作品に偏っていた。問題自体の難度は高くないが、日常生活に関わる出題には好感が持てる」と評価する。